テレビCMで大切な「周辺ターゲット」と「総量評価」
テレビの本当の価値を考える上で、テレビCMとデジタル広告のそもそもの違いを次のように整理しました(図表4)。これはテレビCMとデジタル広告に優劣をつけたり、どちらが効率的かを比較したりするためのものではありません。テレビCMの特徴をきちんと理解するための整理です。
テレビCMは、広告キャンペーンでメインターゲットとする層以外にも広告が到達します(これを「周辺ターゲット」と呼ぶこととする)。逆にいうと、それらを除外することはできません。メインターゲット以外はターゲットでない、という場合は当てはまりませんが、サブとなる周辺ターゲットが全く存在しないということも少ないのではないでしょうか。
テレビCMを評価する際は、この周辺ターゲットへの広告効果も考慮した「総量評価」を行う必要があります。そして、総量評価は必ず実数を基にしなくてはなりません。
図表5は、筆者が過去に行ってきた「総量評価」を簡素化したものです(事例元は戸建住宅メーカー)。本来はキャンペーン全体でもCM単位でも構いませんが、ここでは1本のCMを例にしています。
まず、セグメント毎の個人視聴率をインプレッション数の実数に換算します。
次にメインターゲットを評価係数1として、周辺ターゲットを1未満で評価します。係数0はターゲット外です。極論するなら、完全に男性向け商品なら、女性群は係数0ということになりますが、通常は限りなく0に近くても、なんらかの係数を与えることをお勧めしています(※2)。そして、インプレッション数と評価係数で総量評価が計算できます。単位はありません。
(※2)図表4は簡素化するためにターゲット外であるC/T層(男女4~19歳)を例外的に係数0としている
この戸建住宅メーカーでは、元々はメインターゲットであるM2(男性35〜49歳)のターゲット含有率のみをテレビCMプランニングとアクチャルの評価に使用していました。ところが、お話をよく伺ってみるとターゲットはM2層だけではなく、そのパートナーであったり(意思決定への影響が大きい)、若くても初めから新築戸建を検討する方もいたり、また高齢層の建替え需要への期待も当然あることがわかりました。ただ、テレビCMをバイイングするためにメインターゲットのM2だけに絞り込む必要があったのです。
総量評価を使ってサブとなる周辺ターゲットにF2(女性35〜49歳)、さらに男女共に上下年齢層もそれぞれ設定することで、スポット発注時の時間帯ゾーンなどを修正していきました。総量評価で見た場合、これまではM2には非効率だと考えて時間帯ゾーンを狭く発注し過ぎていたからです。メインターゲットおよび周辺ターゲットへのCM量を明瞭にし、結果、ターゲット効率もアップしました。
また総量評価は、スポット中心の広告キャンペーン以外でも、改編時にいくつかのタイム(番組提供)候補を比較検討する際にも使用可能です。しかしこれらは、あくまでスポットが%コストでGRP取引される、タイムが個別の取引単価(※3)を持っていることを前提とした中での、これまでの評価方法でした。
(※3)同じタイム(番組提供)でも広告主ごとに番組料金が異なることがある
この総量評価という考え方は「インプレッション取引」を導入することで、さらに進化させられます。
次回はインプレッション指標で見たテレビCMの価値、総量評価のインプレッション取引で増収できるテレビ局収入などについてご紹介していきます。
