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西口さん!難しいことはわかりませんが、マーケティングで一番大事なことを教えてください

【マーケティング入門第15回】どういう仕組みでリピート購入が起こるんですか?


プロダクトは「価値の再評価」にさらされ続ける

西口:吉永さんも、自分が顧客の立場で、買って使った時は満足でもそのうち忘れてしまったり、化粧品などを1本使い切らなかったり、ということはないですか?

MZ:確かに、ありますね。

西口:皆さん、そうした経験があると思います。それはまったくめずらしいことではありません。顧客はプロダクトを購入してからも、その価値を常に再評価し続けているのです。再評価し続けてもらえれば、プロダクトには「継続性の価値」があるといえますが、再評価されなければ「一過性の価値」にしかなりません。

MZ:一過性とは、言い換えると「一度しか買って/利用してもらえない」「リピートされない」ということですね。

西口:そうです。もしも一過性でいいなら、便益や独自性が弱いプロダクトでも、広告や訴求方法の工夫で売ることはできます。ごく普通のジュースでも、人気のタレントがとてもおいしそうに味わうテレビCMを流せば、顧客に「価値がある」「買ってみたい」と思わせることはできるでしょう。でも、飲んでみて「普通だ」と思ったら次はありません。

 ビジネスによっては、一過性の売り上げを立てることを目的に活動することはあり得ます。要するに、新規顧客だけをどんどん獲得していくような状態です。しかし、多くのビジネスで「最初に買ってもらう」には相当のコストがかかるので、この構造で継続的な利益を得るにはかなり無理が生じると思います。

 事業の維持・発展は、継続的に購入してくださる顧客によって支えられています。だからこそ、一過性ではなく継続的に評価される価値を常に提案し続けることが大事なのです。

全顧客数=既存顧客数-離反顧客数+新規顧客数

MZ:そうすると、初回購入後や2回目購入後の人を「WHO」として、引き続き買い続けてもらえる「WHAT」は何か……を考えていくということですか?

西口:はい。ですが、新規顧客への提案をおろそかにしていいわけではありません。どんなに多くのリピーター(継続顧客・ロイヤル顧客)が付いているビジネスでも、必ず一定数は離反していくので、それを上回る新規顧客に流入してもらえないと、全体の顧客数は減っていってしまいます。

 リピーターが100%残り続けるビジネスは存在しません。当たり前のことですが、意外に、この一定の離反を意識せずにビジネスを行っている場合は多いのです。

 売り上げ構造の回(第13回)で、「売り上げ=顧客数×購入単価×購入頻度」という式を提示しました。この「顧客数」には、実は多様な種類の顧客が混在しているので、分解して考える必要があります。

『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』p184より
『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』p153図より改変

 まず、売り上げを構成する式を半年や1年間などの一定期間で区切ります。仮に半年とすると、「顧客数」には半年ずっと継続してくれている顧客もいれば、半年のうちに離反していく顧客もいます。また、半年の間に新たに買ってくれる顧客もいます。

 ですので、顧客数は一般的に「継続している既存の顧客の数」から「離反した既存の顧客の数」を引いた数に「新規の顧客の数」を足したものといえます。

全顧客数=継続している既存顧客数-離反する既存顧客数+新規顧客数

MZ:言われてみればその通りですが、あまり分解して考えたことがなかったです。仮に全顧客数が増えていても、内訳がどう動いているかによって、打ち手が変わりますね?

西口:そうなんです。ポイントは、それぞれの顧客が見出している価値はそれぞれ違うことです。離反した顧客は今のプロダクトを評価しなかったから離れていったので、これまでと同じ便益と独自性を提案しても無駄かもしれません。

 ある便益と独自性に価値を感じて購入した顧客の中に、早々に離反する人が多いのであれば、その便益と独自性を見直す必要があります。

次のページ
最もよく買うリピーターの心理をつかむ

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/09/18 17:36 https://markezine.jp/article/detail/46077

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