インサイトや独自性だけではうまくいかない
――今回はサプリメントブランド「Lepeel Oraganics」のCRM戦略についてうかがいたいと思います。当社のサービスもご利用いただいているのですが、CRMへの向き合い方が特徴的だと感じていて、今回の対談をお願いしました。Lepeel Oraganicsは「できる限り食事に近く、食事よりも安全なサプリメントを」という考えのもと、オーガニックなサプリメントをD2Cで提供していますね。まずこの事業を始めた背景から教えてください。
村山:自社商品の開発を検討する中で、添加物のない商品を求めている敏感体質の方がいることを知りました。このインサイトに着目したことが始まりでした。それが2015年頃のことです。
最初に注目したのは葉酸でした。オーガニック愛好家やビーガン、健康意識の高い層には好評だったものの、市場のシェア獲得には至りませんでした。この経験から、商品の独自性やインサイトだけでなく、ユーザーのリテラシーや競合状況なども考慮すべきだと気づきました。
次に注目したのが鉄分です。鉄分サプリメントは既に市場に存在していましたが、主にドラッグストア品か、一部の美容目的の商品に限られており、供給が不足している状況でした。そこで、オーガニックにこだわった商品を開発。添加物を最小限に抑え、サプリメントの形状維持に必要な成分もすべてオーガニックにするという商品を開発しました。
一貫して自社主体の情報提供に重きを置く
――マーケティングの戦略や手法で変化させてきたことはありますか?
村山:EC、特に単品通販やD2Cの業界においてマーケティングの手法自体は過去10年で大きく変わっていませんが、細かなコミュニケーション方法は変化してきたと感じます。
たとえば、近年は「総合格闘技」的なアプローチが必要となっていると感じます。単一の施策ではなく、複数の施策を組み合わせたうえで総合的にCPAを見る必要が出てきました。
一方で、当社が変えていないことは、アフィリエイト広告の位置づけです。一貫してあくまでアフィリエイトをサブとして位置づけ、自社運用や代理店を通じた運用型広告をメインとしていました。ブランドイメージの保護や、お客様との直接的なコミュニケーションを重視してきたためです。参入者が増えCPA高騰が見られる今、アフィリエイト広告に限界を感じる他社もこの流れに変わりつつあると感じます。
また、以前は決まったCPA以下での獲得とLTVを確保する(解約しにくくする)仕組みを作って回す手法が主流でしたが、現在はそのような固定的な方法では対応が難しくなっていると思います。当社はお客様との関係性を重視するCRMが必要不可欠だと考え実行して来ましたが、業界全体を見ても、数値や仕組みを重視する手法から、お客様との長期的な関係構築を重視する方向へシフトしていると感じます。
CRMとは顧客の目標達成にどうコミットするかを考えること
――では具体的にLepeel OrganicsはどのようなCRM施策を実施しているんですか?
村山:前提として、お客様の目標達成に向け、私たちのサービスでどうコミットできるかを提案するコミュニケーションを行っています。
施策は大別すると主に2つ。「顧客接点をどのチャネルで持つか」そして「それぞれのチャネルでどうコミュニケーションするか」です。主なチャネルには、商品そのもの、同梱物、ステップメール、電話、イベントなどがあります。
特に初回の商品提供は非常に重視しています。Lepeel Organicsの商品は高いこだわりを以て作っており、平均単価と比べるとかなり高価です。だからこそ購入される方の期待値は高く、もっと商品について知りたいと思われていると推察します。
そこでモチベーションが最も高いであろう初回購入時に、Lepeel Organicsの商品を求める方が知りたいであろう、すべての情報を網羅した冊子をお送りしています。この冊子は他のチラシ類とは違い、恐らく捨てられずに保管され、時折、読み返したりしていただけるのではないかと思います。
この冊子は情報量の豊富さもさることながら、社員が制作に深く関わりました。単なるマーケティング施策としての役割を超えて、会社の強みを活かし、お客様との深い関係を築くための重要な存在となっています。
その後は、顧客継続率を定点観測、特に「F1(初回購入)からF2(2回目購入)への継続率」そして「F2からF3(3回目購入)への継続率」を見ています。F2からF3への移行時に大きな落ち込みが見られることがあるため、この時点で商品の価値を顧客に十分理解してもらうことも重要です。
当社の場合は、F3転換のタイミングまでに商品の価値や魅力を伝えながら、どうすれば継続して使っていただけるかを考えています。