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第106号(2024年10月号)
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田中洋が紐解く、ビジネス成功のキーファクター

注目のEV市場で日本の自動車メーカーは戦っていけるのか 「これからの自動車ブランドの在り方」後編

 ブランド戦略論の第一人者であり、中央大学名誉教授でもある田中洋氏による本連載。第10回は、「これからの自動車ブランドの在り方」をテーマに鼎談を実施しました。ゲストにお招きしたのは、ブランドに精通しながら、日本自動車ジャーナリスト協会でジャーナリストとして活躍している山崎明氏と、トヨタ自動車で宣伝部やレクサス ブランドマネジメント部長を歴任してきた高田敦史氏です。自動車業界のこれまでを振り返りつつ、考えられる今後のシナリオにも言及しています。

初期戦略が大成功した「テスラ」

田中:山崎さんが、ブランド戦略が優れている例として挙げられていたもう一つのブランド、テスラについてもぜひお話をお聞きできればと思います。2024年6月現在、値下げや売上高急減など、これまで快進撃だったテスラに少し逆風が吹いているようです。しかし、一時的には非常に成功したブランドであることは間違いないと思います。お二人から見て、テスラはどのようなブランドですか?

中央大学 名誉教授 田中洋氏
中央大学 名誉教授 田中洋氏

山崎:テスラは、世界で初めて出た「EVの超高性能なスポーツカー」です。発売当時は値段も高かったですし、リチウムイオンバッテリーが大量に搭載されているから、加速力もすごい。その新鮮さ・面白さで、発売当時多くのセレブリティ(超富裕層)がみんなこぞってテスラを買いました

日本自動車ジャーナリスト教会 会員 山崎明氏
日本自動車ジャーナリスト教会 会員 山崎明氏

 結果、テスラはいきなりステータスシンボルに上りつめることができたわけです。そこからすべてが始まっており、その後、下のモデルが出た時に、最初のモデルには手が出せなかった人たちがワーッと入ってきたんですね。そこでテスラというブランドが市場に一気に浸透しました。総じて、テスラは最初の戦略が非常に秀逸だったと言えます。

価格帯を下げ始めたテスラ、この先のシナリオ

田中:そういう意味で言うと、テスラはかなりレアな成功例なんでしょうか。

山崎:そうですね。ここまで一気に成功したブランドは他に例がありません。

高田:面白いのが、イーロン・マスク氏は、元々「車なんかコモディティでよい」と思っているような人ですよね。高級車ブランドを作りたいという思いはそこまで強くなかったと思われます。ですが、彼の場合「(地球が滅びないように)EVを普及させたい」という思いが強くあります。EVは生産コストがどうしても高くなるので、高級車から市場に入ってくるしかなかったのでしょう。山崎さんと同意見で、テスラは極めて戦略的なブランドだと思います。

 ただ、僕が考えている「ラグジュアリーな高級車の要件」がいくつかあるのですが、そのうちテスラが満たしている要件はほとんどないんですよ。高性能ではありますが品質は決して良くない。高価格ですが需要に応じて値下げもする。地理的文化の背景もありませんし、顧客を選ぶような排他性の演出もない。とにかく売れる価格で売ろうというのがテスラの戦略であり、これは他の高級車とは全く違います。

A.T. Marketing Solution 代表 VISOLAB株式会社 CMO マーケティング、ブランディング 高田敦史氏
A.T. Marketing Solution 代表 VISOLAB株式会社 CMO マーケティング、ブランディング 高田敦史氏

 ですから、テスラは、メルセデス・ベンツやBMW、アウディ、レクサスなどと同列に論じることができない“新種”のブランドです。色んな意味で別次元なんです。

山崎:僕は、増えすぎた瞬間、テスラはダメになるだろうと予想しています。品質が悪いですし、アフターサービスも良くない。普通の人が普通に買って乗る車ではありませんから。また、EVにこだわり、現状技術のEVで商売していくためには、上の価格帯に留まっていないと厳しくなっていくと思われます。下の価格帯にいった先には、中国車との戦いに巻き込まれ、レッドオーシャン・大赤字に突入するというシナリオがあり得ます。

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この記事の著者

田中 洋(タナカ ヒロシ)

中央大学名誉教授。京都大学博士(経済学)。マーケティング論専攻。電通で21年実務を経験したのち、法政大学経営学部教授、コロンビア大学客員研究員、中央大学大学院ビジネススクール教授などを経て現職。日本マーケティング学会会長、日本消費者行動研究学会会長を歴任。『ブランド戦略論』(2017年、有斐閣)など20冊の著書と9...

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2024/09/04 09:30 https://markezine.jp/article/detail/46291

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