プライバシーに配慮した戦略を実現する「App AEM」
――Metaのソリューションによって、具体的にアプリマーケティングはどのような変化をしているのでしょうか?詳しく教えてください。
ヤン:まず合算イベント測定「AEM(Aggregated Event Measurement)」についてご紹介します。AEMはiOS 14以降のデバイス利用者からのイベントの測定を可能にするプロトコルです。
元々はWebのみに対応していましたが、これを拡張しアプリに適応させたソリューションが「App AEM」です。アプリのトラッキングをオプトアウトした人のアプリイベントの測定を可能にしました。
「App AEM」による処理には、広告を測定または配信する前に、識別情報の削除、差分プライバシーの追加、利用者全体でのデータの集計などのプライバシー保護措置が含まれます。ほぼリアルタイムでレポートが行われるため、広告戦略をより素早く展開できるようになります。
SKANの場合、基本的に1人のユーザーに対して1回しかポストバックを行わないという制限があり、複数回の課金や同じイベントが複数回発生する場合の正確な計測が困難でした。「App AEM」を使用することで、1人のユーザーに対して複数回のアプリ内イベントの計測が可能となる仕組みが整いつつあります。ユーザーの行動をより詳細に追跡し、分析できるようになるでしょう。
また、先ほどATTの影響でキャンペーン作成数が9つになったと説明しましたが、「App AEM」によりキャンペーンの作成数を18にまで増やすことが可能になりました。
――実運用をされる立場から見て、「App AEM の提供によって実際に具体的にここが変わった」という部分はありますか?
亀井:AEMによるアトリビューションを活用することで、リアルタイムでのデータ観測が可能となりました。クリエイティブ単位での精査やキャンペーンの比較検証などがより円滑に行えるようになり、PDCAサイクルのスピードが大幅に改善されたと実感しています。また、iOS環境においてアプリイベントの計測が欠損なく行えるようになったことも大きな変化でしょう。より精度の高い状態で最適化を行うことができています。それに伴い、広告主様への提案の幅も広がっていると感じています。
ROASやLTVの改善にも効く「ASC for App」
ヤン:続いて紹介したいのが「ASC for App」です。こちらは「ASC(Advantage+ショッピングキャンペーン)」をアプリに適用したソリューションです。
ASCは、主にECのWebサイトを運営する広告主様向けに開発した自動化ソリューションです。従来は個別に対応する必要があった広告配信設定を、AIの活用で自動化できます。先述のAEMがアプリにも対応可能になったことで、ASCはアプリマーケティングにおいても重要な役割を果たすようになりました。
「ASC for App」を活用すると、ATTの影響で難しくなったリターゲティングができるほか、ディープリンクなどの技術と組み合わせることで、既存ユーザーにも効果的に広告を配信することが可能になります。単にアプリのインストール数を増やすという表層的な目標だけでなく、より深くROASやLTVの計測・最適化にも取り組めるようになりました。
亀井:ASCをアプリ配信で活用する際にはMetaピクセルをMMP(モバイル計測パートナー)に設定し、コンバージョンAPIと組み合わせて利用することで、MMP上におけるコンバージョン計測も精度高く可能となりました。弊社では「ASC for APP」の活用により、約30%のCPAが改善が見られたなど、改善事例も複数生まれています。
さらに、アプリ配信以外の用途においても効果が見られています。特にゲーミング関連の広告主様においては、リリース前の事前登録のキャンペーンにASCを利用することで、事前登録単価が20%程度改善したという事例も生まれており、ASCの活用の幅の広さを実感しています。