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エビデンスベーストマーケティングの基礎

差別化戦略は企業都合の希望的観測でしかない?カテゴリー理解の重要ツール「購買重複の法則:DoP」とは


ヘアケアカテゴリーに「サブカテゴリー」が生まれていた/DoPの例外に着目

 規則性には例外があります。そしてマーケティングが科学的であろうとするならば、そうした例外もまた重要な知見になります(Bass, 1995)。DoPも然りで、規則性を理解した上で例外に着目することは極めて有用です。

 先のDoPテーブルを再掲します。ボタニストの行に注目していただくと、パンテーンやメリットとの奪い合いも多いのですが、YOLUと最も多くの顧客を共有していることがわかります。逆にYOLUを主語にすると、8 THE THALASSO、アンドハニー、ボタニストとの重複が多いことが読み取れます。

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 浸透率で考えればYOLUもパンテーンやラックスと最も競争になるはずです。しかし実際はそうなっていません。8 THE THALASSOにも同様の傾向があり、スペースの都合上載せていませんが他の高価格帯シャンプーにも見受けられます。こうしたDoPの例外はサブカテゴリ―を表していることがあります。たとえばシャンプーなら、これらはプレミアムヘアケアカテゴリーを表しているわけです。

 こうしたサブカテゴリ―を見つけたら、そこにサブブランドを出しましょう。既存ラインでは獲得できなかった増分浸透率をもたらす可能性が高いからです。

 プレミアムヘアケアカテゴリーでは、花王がメルトを投入しましたね。当然、ボタニストやYOLUをけん制、追撃する意図もあるのでしょうが、シンプルに「メリットでボリュームを維持しつつ、メルトでマージンを高める」という見方をすれば、なるほど成熟ブランドを抱える王者らしい戦略に思えます。

 この動きに対して他プレミアムヘアケアブランドはどのように対応するのでしょうか。それによりシャンプーカテゴリーのDoPはどう変化する(あるいは変化しない)のでしょうか。引き続き実購買ベースでウォッチしていきたいと思います。

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引用文献

Bass, F. M. (1995). Empirical generalizations and marketing science: A personal view. Marketing Science, 14(3_supplement), G6-G19.

Dawes, J. G. (2016). Testing the robustness of brand partitions identified from purchase duplication analysis. Journal of Marketing Management, 32(7-8), 695-715.

Ehrenberg, A. S., Uncles, M. D., & Goodhardt, G. J. (2004). Understanding brand performance measures: using Dirichlet benchmarks. Journal of Business research, 57(12), 1307-1325.

Goodhardt, G. J., & Ehrenberg, A. S. (1969). Duplication of television viewing between and within channels. Journal of Marketing Research, 6(2), 169-178.

Goodhardt, G. J., Ehrenberg, A. S., & Chatfield, C. (1984). The Dirichlet: A comprehensive model of buying behaviour. Journal of the Royal Statistical Society. Series A (General), 621-655.

Sharp, B., Wright, M., & Goodhardt, G. (2002). Purchase loyalty is polarised into either repertoire or subscription patterns. Australasian Marketing Journal, 10(3), 7-20.

Uncles, M., Ehrenberg, A., & Hammond, K. (1995). Patterns of buyer behavior: Regularities, models, and extensions. Marketing Science, 14(3_supplement), G71-G78.

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この記事の著者

芹澤 連(セリザワ レン)

マーケティングサイエンティスト。数学/統計学などの理系アプローチと、 心理学/文化人類学などの文系アプローチに幅広く精通。 非購買層やノンユーザー理解の第一人者として、消費財を中心に、 化粧品、自動車、金融、メディア、エンターテインメント、インフラ、D2Cなどの戦略領域に従事。 エビデンスベースのコンサルティングで...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/08/22 19:07 https://markezine.jp/article/detail/46869

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