「賛否両論」から拡散の環流が始まる
バーガーキングでは「最大のリスクは、リスクを取らないこと」という考えの元、「Be afraid. Be very afraid. But do it.(恐れろ。大いに恐れろ。それでも、実行しろ。)」をマーケティングのメンタリティとして持つ。
「100%賞賛の施策はつまらない。100%批判は炎上リスク。しかし、この間にあたる位置を狙い、『結果が楽しみ』と顧客に思ってもらえるようになれば、施策のインパクトは大きくなります」(麦氏)
同社は顧客の態度や姿勢を分析しながら、賛否両論を作り出していく。そのカギとなるのが、「文脈(CONTEXT)」だという。
ここでいう文脈(CONTEXT)とはブランドを取り巻く文脈を指しており、ビジネス・施策の効果に影響を与える様々な内外要因を3C(市場・競合・自社)の観点で整理していくのだ。
文脈(CONTEXT)が、アイデアのその先を生み出す
麦氏は、発想やアイデアといったものをビジネスにおける「0→1」とした場合、「1→10」を生み出すものが文脈だと強調した。そして、文脈の先にクリエイティブやPR、SNSなど様々な表現手法があり、これらが「10→100」を実現する。この0→1と10→100をつなぐ文脈こそが重要だという。
「バーガーキングでは、施策や商品のポイントを整理するコミュニケーションブリーフに、ビジネス上の目的やターゲット、ベネフィットなどを書いていきますが、その中でも特に季節性や文脈を大事にしています」(麦氏)
たとえば秋になると月見シーズンとして、卵ベースの商品がハンバーガー業界を席巻し、風物詩ともいえるほどになった。しかし、物価の優等生と呼ばれた卵も2022年末頃から値上がりが起きた。
市場としては、材料値上がりで厳しい状況に。競合は、それでも卵ベースの製品を出してくる。そんな中バーガーキングは次のような文脈を考えた。
「人々から卵を奪ってまででもカルチャー(とセールス)を守る必要はない。カルチャーでなく、味で選んでほしい。卵の価格高騰で苦しんでいる方々に向けてコミュニケーションすることで、共感を得てメッセージを拡散いただく」

そこで生まれたのが、卵をパイナップルに変えた月見バーガーだ。自社のSNSで「また卵買うの忘れちゃった。」と投稿し、商品に対しても賛否両論が渦巻いた。結果的には、広告換算額で2億1,000万を超えるPRとなった。