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第108号(2024年12月号)
特集「2025年・広告の出し先」

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MarkeZine Day 2024 Autumn

年間で9万時間の業務削減を実現 丸紅のDX推進組織に聞く「生成AI社内普及」の鍵

 生成AIが登場して以来、多くの企業が業務への活用に取り組んでいるが、浸透に至っている企業はまだ少ないだろう。一方、総合商社を主軸として多様な事業に携わる「丸紅」では、グループ内で9,000人を超える従業員が生成AIを既に活用しているという。そこにはビジネスインパクトを重視した丸紅ならではのバックボーンがあった。MarkeZine Day 2024 Autumnでは、同社でDX推進を担い、その一環として生成AI活用のための開発、普及活動に取り組んだ、デジタル・イノベーション部 データアナリティクス課の上西広弥氏と伊延観司氏が登壇。これまでの経緯を語りながら、AI活用普及のコツについて解説した。

デジタル技術の導入は過程に過ぎない。ビジネスインパクトが重要

 上西氏、伊延氏が所属するデータアナリティクス課(以下、DA課)は丸紅におけるDX推進や各事業へのデジタル技術活用支援を担う専門組織だ。本部署ではAI・データサイエンス、デジタルマーケティング、ソフトウェアエンジニアリングに注力しており、これらに横断的に対応するため専門分野の異なる幅広い人材が集まっているという。同社のDX推進の根底にある考え方として、上西氏は「DXやデジタル技術の導入は過程でしかないビジネスインパクトを重視しています」と語る。

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丸紅株式会社 デジタル・イノベーション部 データアナリティクス課 上西 広弥氏

 そもそも丸紅は、多岐にわたる事業を展開する総合商社だ。それぞれの事業の根底には生き馬の目を抜く商人の文化がある。それはDXにおいても変わらない。DA課も「ビジネスをリードするためのデジタル専門組織であること」を日ごろから意識しているという。

 このようなビジネスへの意識が、丸紅の中で生成AIを普及させるにあたっても大きく影響していた。DA課のメンバーは、ChatGPTの登場時に興味を示したが、それ以上に、どう活用すればビジネスに影響を与えられるかを考えていた。新たなテクノロジーの活用支援を担うDA課のメンバーが、社内で活用すべき技術を判断する軸を持っていたことこそが、生成AIの活用が広がった一つ目の理由だ。

 では、実際にどのような活用が可能となり、どのようなインパクトがもたらされたのか。

年間約9万時間を削減 生成AI活用の成果

 丸紅が社内での生成AI活用に向けて開発したのは、セキュアなWebアプリケーションで構築したAIチャットボットの「Marubeni Chatbot(通称:まるちゃ)」だ。Marubeni ChatbotはChatGPTやClaudeなどの生成AI技術を内包しており、一つの入力画面から活用できるようになっている。テキスト入力に加えて、ファイルの読み込みや要約、翻訳といった機能も搭載しており、特に海外拠点との業務において作業時間が大幅に短縮するなどの効果が得られた。

 もちろん、社内で元々ニーズのあった機能に関しても開発されている。たとえば、会議ごとに発生する議事録の作成を効率化したいという声があり、動画ファイルの文字起こしやリアルタイムの会議の文字起こし機能を標準装備。また、就業規則や契約関連の規定を自然言語で検索できるようなシステムも機能の一つとなり、社内規定の参照が簡単に行えるようになっている。

 Marubeni ChatbotはGPT-4の登場直後の2023年4月にβ版が公開され、それから1年で7,000人以上が利用セッション時までには120万件のプロンプトを処理し、6万件のファイルを学習、ユーザー数1万が目前となった。

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 上西氏は「インパクトは非常に大きく、年間約9万時間の業務時間の削減に貢献しています」とその成果を誇る。今後はさらなる機能追加やユーザー拡大によって、このインパクトがさらに増大していくと見込んでいるという。

 こうしたインパクトが生まれた背景にはやはりユーザー数の伸びがある。両氏は素早い普及を実現した要因として開発体制、そして社内への段階的なアプローチなどを挙げた

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

 就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・翻訳ツールなど...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/06 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47051

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