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MarkeZine Day 2024 Autumn

年間で9万時間の業務削減を実現 丸紅のDX推進組織に聞く「生成AI社内普及」の鍵

「MassとO2O」「活用レベルの底上げ・高度化」で分ける

 同組織ではMarubeni Chatbotを通じて生成AIの活用普及を推進していくために、MassとOne to Oneの両方でアプローチ。また、生成AIの活用レベルでもアプローチを分ける必要があると考え、活用の高度化だけでなく、底上げも進めていった

 伊延氏は各アプローチの具体例も示した。まず、Massへのアプローチとしては、「全社員が日々の業務で当たり前に生成AIを活用できる」ことを目指し、Marubeni Chatbotの認知度向上のため、社内ポータルサイトのトップページに情報を掲載したほか、全社員向けメールマガジンでMarubeni Chatbotの新機能やユーザーの声を定期的に発信した。これにより、「Marubeni Chatbotを使ったことがなくても、少なくとも目にはしたことがある」という普及の土台が整えられた。さらに、全社員向けの講習会もMassアプローチとして実施。基本的な活用シーンを紹介するとともに、生成AI自体に対する向き合い方や注意点なども伝えた。

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 では、One to Oneのアプローチとはどのようなものだろうか。伊延氏は「One to One×底上げ」の実践例の一つを説明する。活用の底上げを目的とするため、対象にはAI活用のハードルを高く感じていて、全社員向け講習会には参加できなかった社員を設定参加者一人ひとりの心理的なハードルを下げるため、業務時間後の社内コミュニケーションスペースを使うなどカジュアルさを意識し、リラックスした雰囲気で質問できる場を企画・提供した。このようにして、気軽に生成AIに触れる機会を増やしていったという。

 また、社員の使用状況は、ダッシュボードでモニタリング利用率が低い部署や事業会社に対しては個別のヒアリングも行った。ヒアリングを通してその部署に適したユースケースを紹介したり、個別に講習会を開催したりし、生成AIの導入を促した。一方、生成AIを積極的に活用しているユーザーからは、さらなる業務効率化・高度化を目指した要望も上がってくる。これについても、利用率の低いユーザーと同様に個別の支援を実施した。

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 伊延氏は「個別の要望やユースケースを常にヒアリングすることで、全社に求められている機能は何なのかがわかってきます」と語る。社内でのOne to Oneのコミュニケーションで収集された要望は、全社的な業務効率化や高度化に貢献する機能のヒントにもなり、開発・追加されているという。

生成AIはあくまで技術の一つ 新たな波にも備えられる組織に

 こうした普及活動の結果、先述のようにユーザー数は大きく増加した。もちろん、単なる数字の変化にはとどまらない。伊延氏が活動の成果を強く実感した出来事として挙げたのは、「それ、Chatbotに任せれば良いんじゃないの?」という言葉が社内で自然に交わされるようになったことだ。この言葉は、生成AIが日常業務に浸透し、社員にとって当たり前の選択肢になったことを象徴している。そのほかにも、グループ内の事業者がイベントの集客を目的としたメールの作成にMarubeni Chatbotの画像生成を活用している様子を目にするなど、普及が感じられるシーンはいくつもあると伊延氏は述べる。

 丸紅と資本業務提携を行った企業でも、提携から2週間後にはメールをMarubeni Chatbotで作成している姿があった。これは、新たな組織であってもすぐに環境を配備できるスピード感があり、つい最近まで生成AIを使わなかった人でも、活用へと積極的に踏み込めるようなサポート体制になっていることの表れだろう。

 社内教育の現場ではどうだろうか。伊延氏によると、データ分析に取り組む研修では分析のステップとして生成AIを自主的に採り入れる様子を発見。新入社員が上司や先輩に相談する前に生成AIでフィードバックを受けるという使われ方があり、浸透具合がうかがえる。

 また「毎年働き方に関する全社アンケートを行っている部署からは、"創造力や発想力が求められる作業ができている"という項目が、他項目に比べ顕著に高く上昇したという共有を受けた」と伊延氏は話す。これは他の項目と比較しても驚異的な増加率で、生成AIの普及がより創造的な業務に注力することを助け、結果的に業務全体での質を高めていることがわかる。

 生成AI活用の普及に役立ったことを振り返ると、それはやはり「生成AIは…」と技術を起点に発信するのではなく、ビジネスインパクトを与える一つのデジタル技術として向き合ったことだったという。伊延氏は「今回の普及のフローを経て、生成AIに限らず、今後新しい技術が登場したときにも素早く対応できる環境・組織だと自信を持っています」と締めくくった。

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この記事の著者

森 英信(モリ ヒデノブ)

 就職情報誌やMac雑誌の編集業務、モバイルコンテンツ制作会社勤務を経て、2005年に編集プロダクション業務やWebシステム開発事業を展開する会社・アンジーを創業。編集プロダクション業務においては、IT・HR関連の事例取材に加え、英語での海外スタートアップ取材などを手がける。独自開発のAI文字起こし・翻訳ツールなど...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/06 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47051

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