社内開発のAIツールで類似度をチェック
MarkeZine:オプトは、クリエイティブの「類似度」の問題をどのようにクリアしているのですか?
西森:オプトでは、制作した広告クリエイティブが過去に制作したものと「どの程度似ているか」をチェックするAIツールを開発し、活用しています。
デザイナーの立場からすると、自分が制作したクリエイティブがどのように配信され、どんな効果を上げているのかを客観的に把握することは難しいものです。もし広告効果が芳しくない場合、それがデザインに起因するものなのか、運用面の問題なのかの判断も難しいでしょう。
その点、AIを活用することで、社内のKPIマネジメントが大幅に効率化されました。AIが客観的に類似度をチェックしてくれるので、「質」の評価が自動化されたのです。したがって、単純に「量」(類似度チェックをパスしたクリエイティブの本数)をKPIとして設定すればよくなりました。たとえば「AIの類似度チェックをクリアしたクリエイティブを100本制作する」といった明確な目標設定が可能になっています。
さらに言えば、AIによって類似度が担保されるようになったからこそ、単純な色違いやコピーの差し替えだけではない、本当の意味でバリエーション豊かなクリエイティブを用意することができるようになったのだと考えます。
今のクリエイティブ運用には、動的なPDCAの仕組みが必要
MarkeZine:クリエイティブ運用でも、前編で紹介いただいた独自のクリエイティブフォーマットを活用されているのですか?
西森:はい。前編でお伝えしたクリエイティブフォーマットを用いるならば、フォーマットに忠実に進めるというよりも、効果が確認されたマスに対してリソースを集中的に投下する戦略を取ります。
たとえば、商品単体の訴求が効果的だと判明した場合、そのマスの中でスタンダード、タイポグラフィ、模倣……とバリエーションを展開していきます。デザイナーも、マスという枠組みが決まっていることで、効率的にバリエーションを作成することができます。
一方、効果が見られない場合は、別のマスへと柔軟に移行する判断も必要です。先述した類似度の影響により、「狙いすました1作品を制作する」「良いバナーの要素を変える」といった従来のクリエイティブ制作の考え方は通用しなくなっているからです。

MarkeZine:なるほど、クリエイティブPDCAの考え方から変える必要がありそうですね。
西森:そうですね。最近改めて感じているのは、一直線のPDCAサイクルでは対応できなくなってきているということです。これまでの「3ヵ月間のロードマップに従って進める」というような固定的な計画立案は、もう通用しないでしょう。
代わりに求められているのは、より柔軟なアプローチです。日々変化するユーザーの行動パターンや競合他社の動きに応じて、素早く方向性を修正できるような動的なPDCAの仕組みが必要です。従来の直線的な進め方とは異なる、状況に応じて軌道修正を繰り返しながら最適解を見出していく手法が求められていると言えるでしょう。
