定量分析だけでは見えてこない、適切な広報効果測定のあり方
━━続いて、アウトプットを評価する手法についてもお聞かせください。
西山:アウトプットの定量分析では、様々なツールを使って記事の露出件数を数えていく方法がまず挙げられます。また従来では、その露出の多寡を広告で得た場合の費用から評価する「広告換算(額)」を指標に使うケースも多くありました。ですが、昨今は広報の成果を広告コストで捉えることへの違和感から、あえて使わない広報組織も増えています。
当社の場合、広告換算に代わる指標を求めるクライアント企業に対しては、施策によって情報が届いた可能性がある延べ人数を把握する「リーチポイント分析」で定量的な振り返りを行うことを提案しています。
酒井:定性分析としては、実際の露出内容を読み込んで、目指すアウトカムにとって適した内容だったかどうかを判断します。たとえば報道では、企業が発信した内容と実際の露出で見せ方が変わることは前提になるため、アウトプットの内容確認は必須です。
アウトプットは定量分析だけで判断できないことが多々あります。たとえば、SNS上の発信で投稿の分母が少なかったとしても、ネガティブな内容が目立ったり、拡散されたりすれば炎上になってしまいますし、ポジティブな内容であればもちろん良い結果をもたらす確率は上がります。そうした質的な面もしっかりと確認するため、担当者によっては「企業が発信したかったメッセージが投稿の中に含まれていれば+1ポイント」といったように、重み付けをして振り返りを行うこともあります。
━━インプットの良し悪しを評価するにはどのような方法がありますか。
西山:インプットに関しては、リリースの配信本数や記者リストの獲得数など、広報組織の行動に関する指標なので比較的把握しやすいものです。ただし、普段に行っているインプットは実際に上手くいっているのか、良いインプットなのか悪いインプットなのかといった判断は、自社の活動だけを見ていてもわかりづらいことがあります。
そこで当社では「企業広報力調査」を実施しています。広報担当者にアンケートを実施し、自社の状況について、「情報収集力」「情報創造力」「関係構築力」「危機管理力」などの観点で自己評価していただくものです。当社は多くの企業様のデータを持っているため、それと比較することで、自社の中で長所と言える部分や、伸ばせる余地がある部分を見つけられます。
酒井:自社の活動については、他社と比べてできているのか、できていないのかがわかりにくいものです。そのため、「企業広報力調査」を通信簿のように活用いただき、自社の状況を把握していただけるようにしています。
PR会社だからこそ価値提供できる「広報効果測定の“その先”」
━━広報活動支援を行う上で今後どのような価値を届けていきたいか、展望をお教えください。
西山:広報担当者の業務は多岐にわたる一方で、人員が少なく非常に忙しいというケースが多々あります。そのため、当社ではパブリシティデータの整理や、アウトカムにつながる記事かどうかの判断、データの蓄積といった作業を効率化できるよう支援していきたいと考えています。これらを効率的に行える「PR Matrix Dashboard(ピーアール・マトリックス・ダッシュボード)」という独自BIツールも提供しています。
川田:PR Matrix Dashboardは、当社独自の測定指標「リーチポイント」を使い、メディアごと・PR活動ごとに広報効果を解析するツールです。「目標値に向けた到達度合いを手軽にトレースできる」「PRリリースごとの露出の大小が一目でわかる」といった点をご評価いただいています。
西山:ダッシュボードへの露出データ蓄積・管理に加え、今後の広報活動に向けた課題や改善策を「コンサルティングレポート」として提供しています。露出結果を測ることはあくまで手段であり、大事なのはそれを踏まえて次に向けた戦略をどう描くかです。効果測定を効率化することで、広報担当者の皆様がより本来的な業務に多くの時間を割けるよう、今後もサポートしていきます。
酒井:データ分析やリサーチだけではなく、一連の広報戦略の立案から発信のお手伝いまで、一連の流れの中で効果測定を支援できる点は、まさに「調査部門を持つPR会社」ならではの強みです。企業がデータ収集にかけられる予算には限りがありますから、コスト効率化を図りながら、必要なところに予算を振り分けられるようなアドバイスができることも、PR会社としての価値だと考えています。
━━上流の戦略策定から下流の作業効率化まで、広報担当者の悩みに応じて幅広く相談できそうですね。本日はありがとうございました。