企業間の枠を超えた”ワンチーム体制” 効果最大化・持続的に支える仕組みに
梅ヶ谷:効果を一過性のものにしないため、隔週での定例会議で、各施策の目的や役割の違いを踏まえながら、現状のSNSでの発話状況やアクションを確認し、『エッセンシャル』として必要な対応を常にアップデートしてきました。この継続的な取り組みが、結果につながったのではないかと感じています。

安藤:定性的な変化としては、「おすすめシャンプーまとめ」のようなSNSの定番コンテンツでの扱われ方が大きく変化したことが印象深いです。ここでも以前の「実家にあるシャンプー」というイメージから、「定番アイテム」「私たち(若者)向けの製品」という文脈で紹介される機会が、実感としても、定量的な計測でも確認できています。このようなインフルエンサーによるPR以外のSNSでの自然な口コミや評価に作用し、量と質の両面での向上が達成できたと考えています。
━━今回の施策を振り返り、成功の要因と考えることをお教えください。
矢野:今回のプロジェクトで最大の特徴は、これまでは花王とA社、花王とB社という個別の関係だったものが、共通のゴールを持った“ワンチーム”として動けた点です。各社がプロフェッショナルとして持ち場を全うしながら、企業の枠を超えて連携できました。花王が介在しないところでも、各社間で直接の情報交換を行い、それを踏まえた提案がいただけることもありました。これは、今までになかった体制でした。
安藤:花王さんとの直接のコミュニケーションに加え、他社とも密に情報交換を行うことで、相互の施策を有機的に連携させることができました。このような環境にしていただけたので、私たちもプロアクティブに動きやすかったです。

社内への知見の蓄積と共有、安定したPDCAサイクルの確立へ
━━主力ヘアケアブランドとして、UGC領域への取り組みの展望や理想とするコミュニケーションについてお聞かせください。
矢野:週次での情報共有を通じて、社内メンバーの施策に関する知識やプランニングのスキルも向上しました。今後は、『エッセンシャル』での成功事例や知見を、花王の他のヘアケアブランドにも展開していきたいと考えています。具体的には、2024年発売のハイプレミアム商品でも、ウィングリットさんに入っていただいて取り組んでいます。
部門を超えた展開には、社内体制やインフラの整備などの課題も当然あります。まずは『エッセンシャル』の事例をヘアケア領域の成功パターンとしてバイブル化し、社内での知見共有を進めていきたいと考えています。
━━スパイスボックス、ウィングリットとしては、エッセンシャルブランドチームの展望に対して、今後どんな価値提供をできるとお考えでしょうか。
梅ヶ谷:スキルや知見が属人化している企業では、担当者の異動などで築き上げた基盤が揺らいでしまうことがあります。私としては、花王の部署内に情報の蓄積を確実に行い、この土台を基にPDCAを回し続けられる仕組み作りに貢献していきたいと考えています。
安藤:現在、ヘアケア領域のUGC施策を横断的に担当している我々に期待されていることは、各ブランドの特徴や差別化ポイントをより明確にし、インフルエンサーとのコミュニケーションを通じて効果的に発信していくことだと思います。UGC領域は変化が激しい一方で、本質的な部分は存在します。そのため、バイブルとして残せる要素を皆様と連携しながら事業部内に確立していけるよう、力を発揮していきたいです。