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有園が訊く!

テレビ業界のビジネスは変われるか 奥律哉氏に聞く、地上波の“その先”のサービス

 テレビ業界を取り巻く環境は激変が続いている。ストリーミングサービスの台頭や視聴率などの効果測定手法の多様化、さらにテレビ局の経営体制への注目度の高まりなど、今後のビジネスがどうなっていくか、不透明な状況だ。今回は、Microsoft Advertisingの事業責任者を務める有園雄一氏が、メディアビジョンラボ代表の奥律哉氏と対談。長年にわたってテレビ業界を注視してきた奥氏に、昨今のビジネスにおける変化や今後の展望について聞いた。

英国では「地上波の廃止」も選択肢の一つに

有園:奥さんは、2024年に電通を定年退職するまで、長年にわたって「電通メディアイノベーションラボ」の統括責任者などを歴任してきました。調査レポート「日本の広告費」を毎年発表したり、『情報メディア白書』(ダイヤモンド社)を発行したりしている組織ですね。

奥:電通メディアイノベーションラボでは、主にテレビやインターネットなどのメディアのビジネス構造を分析してきました。「時代感を紡ぐ」というユニークなポジションだったと思います。情報メディア白書では14年間、巻頭言を書きました。そのタイトルを並べると、当時のことがよくわかります。

有園:今回は、そのようなバックグラウンドがある奥さんに、テレビ業界の今後について、考えをお聞きしたいと思います。2018年、私が電通総研と仕事をしたとき、奥さんと「英BBCが電波返上するのではないか」という話について議論しました。その後、2024年に英国の放送・通信関連の規制機関Ofcom(情報通信庁)が公開した報告書では、今後の放送サービスについて3つの選択肢を示しており、その一つに「DTT(地上デジタル放送)の廃止」も含まれています。

奥:報告書で示された選択肢の1つ目が、このままDTTを続けていくという道。2つ目が、最低限のコアチャンネル(たとえばBBCなど主要パブリックサービスチャンネル)を残して、他はインターネットに移行。そして3つ目が、完全にDTTを廃止してインターネットサービスに移行する――でしたね。

 私は、エビデンスに基づいて柔軟に政策を決定する国として、英国をリスペクトしています。過去の例では、録画再生された分を加算するタイムシフト視聴率を、VTR(ビデオテープレコーダー)デッキの頃からいち早く計測していました。また、番組を1時間遅れで放送する「+1」というチャンネルがあります。午後7時開始の番組が8時からでも見られるのです。「時空間を泳ぐ国民性」みたいなものを感じますね。

 そんな国で、この3つの選択肢が出てきたのです。「このままだと地上波放送で映像を見る人が減っていく」と提示されているのです。また、インターネットなら今までにない新しい映像サービスを提供できる、という考えもあるのだと思います。

メディアビジョンラボ 代表 奥律哉氏
メディアビジョンラボ 代表 奥律哉氏

地上波の先の「新しいサービス」を

有園:日本でも、総務省を中心に放送の在り方を議論したり、民間で新しい取り組みが出てきたりしていますが、地上波が存続する前提で話が進んでいるように思います。地上波の廃止についても議論していくべきだと思いますか。

奥:少なくとも英国は、現状の変化と今後の見込みを分析した上で、地上波の先を見据えた新しいサービスを展開するんだ、という心意気があるように思います。直ちに地上波放送がなくなるわけではありませんが、若い世代の視聴行動を考慮すると、先を見据えてサービスを提供していくことが重要です。後追いではなく、待ち伏せするくらいの心意気が必要ではないでしょうか。

有園:奥さんは、総務省の「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」などにも参加しています。日本の取り組みについて、どのように感じていますか。

奥:やはり制度設計が最も重要です。先進的な取り組みも、民間だけで実施していくのは難しい。また、インターネットにおけるテレビ番組配信については、著作隣接権も難しい問題です。加えて、ローカル局をどう考えるのか。必ず考えなければならない日本独自の制度です。

 一方、「2024年 日本の広告費」によると、テレビの広告費は1兆7,605億円にとどまり、インターネット広告費は3兆6,517億円に膨らんでいます。広告主企業のマーケティング戦術やプロモーションの在り方がどんどん変わる中で、全体を見て対応していかなければ、テレビ業界の成長は見込めないだろうと思います。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2025/03/19 08:00 https://markezine.jp/article/detail/47944

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