AIが生成した広告では「記憶の活性化」が弱い
参加者たちの脳波検査の測定結果によると、AIが生成した広告のほとんどにおいて、たとえ「高品質」と認識されるものでさえ、従来の動画広告と比較すると、消費者の記憶を活性化する力が弱いこともわかった。
そもそも記憶とは、消費者が見ているものが既に知っているものや経験したものと合致するかどうか、つまり「今見ているものと一致させることができる既存のテンプレートが脳内にあるか」どうかに影響を受ける。
つまり、AIが生成した広告は、たとえ消費者自身がそのように明確に意識していなくても、「何かがおかしい」と認識させる可能性があるということだ。企業とブランドは、 その違和感が消費者の最終的な行動(製品購入など)に影響を与えうることを認識しなくてはならない。
AIが生成した広告は「ブランド連想」を活性化
AIが生成した広告には、「効率的に制作できる」以上の利点ももちろんある。それは、たとえ最低品質の広告であっても、意図したブランド・アイデンティティをうまく伝えることができる点だ。
AIは、視覚的なクリエイティブを生成する際、学習トレーニング用のデータセットから、該当するブランドの既存の表現を抽出し、そのブランドの「視覚的なステレオタイプ」を利用する。このプロセスは、人間の脳が認識する「一貫性」や脳で起こる「反復」に近いため、AIが生成した広告を目にした消費者はそのブランドを連想しやすい、というわけだ。
つまり、広告主企業やブランドは、広告を制作するためだけでなく、広告やマーケティングで活用すべき「最も強力なブランディング資産は何か」を特定するうえで、AIを活用できる可能性がある。
それでも、先述したネガティブなブランドハロー効果などによって、研究に参加した消費者たちは、AIが生成したすべての広告に対してあまり好意的でないと指摘したことには留意すべきだろう。
