CMO不在でも総力戦を実現できるのが「GTM」
ただ、マーケティングの権限が集中していればドラッカーが提唱する広義のマーケティングが実現するわけではありません。広義のマーケティングを実現するにはGTMという考え方、仕組み自体が非常に重要となります。実際にCMOを設置していることが多い外国企業の多くにはGTM戦略の立案、各国市場のへのローカライズを行うGTMスペシャリストや、GTMを実行するために4Pの機能を主管する複数部門をコーディネートするGTMエネーブルメントスペシャリストといった専門職が存在します。
つまり、権限をマーケティング部門、CMOに集中する事だけが広義のマーケティングを実現する方法ではなく、マーケティング部門が中心になって各部門に点在するマーケティング機能をオーケストレーションする事で広義のマーケティングを実現する方法も可能なのです。そして、そのためのツールがGTMです。
「GTM DMI モデル ver1.0」は、「Market & Account レイヤー」「Buyer & Value レイヤー」「Channel & Engagement レイヤー」という3つのレイヤーと10の項目で、必要な情報を収集・整理し、様々な議論の土台となる共通言語化を行うものです。

このモデルを活用することで、企業は、経営陣・事業部門・マーケティング部門といった組織において共有されるべき必要な情報、つまり「戦略の共通言語」をもって市場開拓・投入計画を策定し、組織間におけるゴールの共有を通して、効率的な戦略立案と施策の実行が可能となります。
次回は、この「GTM DMIモデル」の全体像と一つめのレイヤーである「Market & Account レイヤー」について詳しく解説します。
【参考資料】
注1:『ドラッカー5つの質問』単行本 – 2017/12/16山下 淳一郎 (著) あさ出版 2017/12/16
注2: Boyd D. Eric, Rajesh K. Cunha, and Marcus Cunha Jr. (2010). When do chief marketing officers affect firm value? A customer power explanation. Journal of Marketing Research, 47, 1162–1176.
注3:中計、新規事業開拓、R&D、M&Aも「マーケティング」とする横河電機の狙い 嵐のような市場変化を乗り切るには「マーケティング×DX」が不可欠
注4:日本型CMOの現状と展望 ― CMOは業績にどの程度貢献しているか ―田中 洋, 安藤 元博, 髙宮 治, 江森 正文, 石田 実, 三浦 ふみ マーケティングジャーナル 2019 年 39 巻 1 号 p. 24-42