自分の「好き」へのこだわりに集中 推し活は“爆発的エネルギー”
まず、コロナ禍の2021年では「利便性消費」が下がり、その分「プレミアム消費」と「徹底探索消費」が伸びた。
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外出自粛やテレワークの影響により、時間的余裕が増えたことによって自身の趣味の時間などが増え、こだわる時間を持てたことなどが背景と考えられるようだ。2024年もこの傾向は定着しているのだという。自分の「好き」へのこだわりを背景に、気に入った付加価値には対価を払う「プレミアム消費」スタイルや、お気に入りをなるべく安く買う「徹底探索消費」が増加した。これに関連するのが、近年キーワードとなっている「推し活」だ。
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「推し活にはやはり爆発的なエネルギーがある。他の消費を少し絞ってでも自分の好きなものにはお金も時間も労力もかけるという点が特徴であり、10代~20代の女性を中心として強い傾向があります」(林氏)
購入の情報源は評価サイトが強い傾向 お店でのスマートフォン利用も増える
消費者とのコミュニケーション設計に関わる情報利用動向についても変化が解説された。シニア層、60代以上のスマートフォン普及がさらに進み、保有率は全体9割にも及んでいる。こうした中、テレビの視聴時間は特に若年層を中心に大きく減少。2024年ではこれまで維持していた高年齢層でも視聴時間が減っていた。
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コロナ禍に大きく伸びたインターネット利用時間は引き続き伸長している。スマートフォンで行うアクティビティは2021年よりもさらに増加しており、特に「インターネットバンキング」が大幅に増加。商品やサービスの購入時の情報源として、テレビのコマーシャルなどのマス広告の利用は減少し、インターネットによる情報収集意向はさらに強まった。たとえば、ネット上の売れ筋情報、評価サイトの利用がさらに増えている。
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実際の購買行動としては「定期的に購入する商品はいつも同じお店で購入することが多い」の傾向は強まった。加えて、店舗にいながら、その場でスマートフォンを使って情報収集を行う傾向も上昇。店舗でのセレンディピティ(偶然の出会い)を求めつつ、情報収集をしたいとの背景を林氏は分析した。気に入った商品の情報発信については極めて限定的との状況がわかった。
個人情報の登録ハードルは低下 生成AI利用はまだまだこれから
インターネット利用に対する考えとしてポジティブ面とネガティブ面を分析すると、ネガティブ面において「個人情報の漏洩、新たな犯罪を生む」「匿名での情報発信により、差別や偏見いじめを助長する」「話題性の高い、虚偽の情報で作られたフェイクニュースや投稿が広まる」「休息を取ることも必要」といった考えが強いことがわかった。一方で、利便性が高まるなどのメリットがあれば、個人情報を登録しても良いと考える人は増加しており、2024年では過半数を占める。その要因として40代~60代の中高年層で高まっていたことがわかった。今後シニア層にも伸びが期待できるという。
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最後に述べられたのはAIに関する調査結果だ。生成AIの認知は61%だったのに対して、実際に利用したことがあると答えたのが9%程度だった。年代が上がるほど減少する傾向にある。さらに生成AIへのイメージを年代別に整理すると、「人間の仕事を奪う」といったイメージは10代を中心に高く、一方で、ポジティブな「業務効率・生産性を高める」イメージは30代を中心に高い傾向となった。
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「AIと会話しながら買い物すること」には、抵抗がない人が2割ほどに留まり、年代が上がるほど抵抗感が増すことがわかった。
「新しいサービスはやはり若年層から叙情に浸透していく傾向があります。生成AIのサービス利用意向も同様です。まだまだ発展途上である中、伸びしろのある分野だと考えています」(林氏)
本調査からは「現状への満足」「必要以上に頑張らない」というリソースを現実的に捉え、省力化を考える価値観の広がり、そして「好きにこだわる」という消費形態の強まりが見えてきた。ブランドは、想定顧客層が自身のために行う“選択と集中”を前提に、あるべきポジションを考える必要がありそうだ。