長期的成果と短期的成果のバランスを常に意識
──「未来への種まき」とも言える長期的な取り組みは、成果が出るまでに時間を要すると思います。即時的な効果が見えにくい活動を、社内でどのように評価・測定されているのでしょうか?
長期的なブランド価値向上の取り組みを多角的に評価する仕組みを構築しています。まず自社で設計したブランド調査を毎年実施し、効果を計測しています。また、各キャンペーンについては定期的にビフォーアフターの変化を調査しています。加えて、第三者評価も継続的にモニタリングしています。
お伝えしてきたとおり、クボタは2017年から「ブランド強化プロジェクト」を立ち上げて継続的な活動を展開、7年から8年という長期にわたる取り組みを続けた結果、ブランドに関する様々な評価項目が顕著に向上しています。地道な活動の積み重ねが、確かな成果として数字にも表れてきたのです。一方で、常に心がけているのは、短期的な成果も同時に出していくことです。相応の予算を投入している以上、経営陣はもちろん、株主や投資家の方々からの評価を得るためにも、短期的な効果も示していかなければなりません。長期的なブランド構築と短期的な成果創出、この両方のバランスを常に意識しながら評価を行っていくことが不可欠だと考えています。
「選ばれるブランド」の条件は変化している
──今回の特集テーマは「選ばれるブランドの作り方」です。ブランドを作るためにマーケターが意識すべきことや考えるべきことは何だとお考えですか?
ブランドコミュニケーションは経営戦略と一体でなければなりません。経営課題を解決するためのブランドコミュニケーションであることが重要です。グローバルに成長していくために、経営の核となる「ヒト・モノ・カネ」の基盤強化にブランドポジションの向上が必要だという認識が根底にあります。
加えて重要なのは、限られた予算の中で最大の効果を発揮することです。そのためには、各施策間の連携と一貫性が不可欠だと考えます。CM担当、企業Webサイト担当、SNS担当、ブランド管理担当など、それぞれの役割を持つメンバーが個別に活動していては相乗効果が生まれません。常に情報共有を行い、各メンバーが何を担当しているか相互に理解した上で、効果の最大化を目指す必要があります。たとえばクリエイティブの場合、テキストの細部に至るまで一貫性を保つことが重要であり、これを統括していくことが私の役割だと考えています。
そして、「サステナビリティ時代におけるブランディング」という視点で考えると、「選ばれるブランド」の条件は大きく変化しています。今日の生活者は、単なる経済的豊かさだけでなく、より広い社会的価値を企業に求めるようになっています。気候変動の深刻化や食料問題、高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化など、私たちの暮らしを取り巻く環境は大きな転換点を迎えていると言えるでしょう。
このような時代において「選ばれるブランド」となるためには、理念を掲げるだけでなく、事業活動を通じてそれらを実現していると生活者目線でわかりやすく伝えることが重要です。次世代社会に向けたソリューションの提供、またそれを支える研究開発力や人材育成への投資、次世代教育への取り組みなどを今後も伝えていきたいと思います。
