メディア取材と「トレンド大賞2024」受賞で売上が急伸
――売上への手ごたえを感じたのはいつ頃でしょうか。
2回あります。1回目はテレビ取材などがあった2024年秋です。それまではPR活動をして掲載していただく形でしたが、この頃から魚肉ソーセージにスポットが当てられ、注目されるようになったと感じます。
2回目は2024年末に、クックパッドの「食トレンド大賞2024」に魚肉ソーセージがランクインしたことです。この賞はクックパッドが保有するデータを元に、その年を象徴する料理や食材のトレンドを選出するというものです。魚肉ソーセージの良さに共感する人や、魚肉ソーセージを使って新しい調理を試してみようと思う人が増えた結果だと思います。

「イメージの刷新」の次は「商品の進化」が戦略
――今回のプロモーションにおいて、想定外だったことはありますか?
多くのメディア取材の依頼があったり、売上が大きく上向いたりと、想定以上に反響があったことが嬉しい誤算でした。「おさかなを使った食品は素晴らしいものだから、もっと食べていただきたい」という想いが、そのままメディアなどを通じて顧客に伝わって、SNSでも口コミが広がったと思っています。
――今後の展望もお聞かせください。
2025年3月には、お肌へアプローチできる新商品「おはだのごちそう D-HADA(ディーハダ)」の販売を開始しました。「DHA」と「肌」を掛け合わせたネーミングです。「魚の栄養素で健康になっていただく」ことが弊社としての一つのミッションなので、その部分をさらに加速させる商品です。
これまでは「昭和の食品のイメージが強い魚肉ソーセージが、実は現代にマッチしている」という切り口で、プロモーション活動に力を入れました。次は商品自体を進化させることに重点を置き、顧客の健康に寄与できるような新商品を継続して出したいと思っています。同時に、「魚肉ソーセージは体に良い効果がある食品」であることを、多くの方に知ってもらうための取り組みも続けます。
ここに注目!マルハニチロ流SNS活用のポイント
今回ご紹介したマルハニチロさんの取り組みは、企業からの情報発信がSNS上での自然なクチコミにつながり、生活者の購買行動にも波及した、広報起点の話題化事例です。
特に印象的だったのは、プロモーション全体の戦略設計の中にSNSでの言及を組み込んでいた点です。誰に、どんな文脈で届けるかを丁寧に整理し、「話題にされるには、どんな要素が必要か」から逆算して広報施策が設計されていたことが、SNSでのクチコミを自然に促した要因だと考えられます。たとえば「昭和のスター」等の言葉は、共感やツッコミを呼びやすく、SNS上で語られやすい“きっかけ”として機能していました。
プロモーションを設計するうえでは、「自社商品の強みは何か」「それを誰に伝えるか」だけでなく、「そのチャネルにはどんなユーザーがいて、どのような文脈であれば語られやすいか」といった視点も重要です。今回のように、「こう話題にしてもらいたい」というゴールから逆算してプロモーションを設計するアプローチは、多くの企業にとって参考になるのではないでしょうか。