CVR約2倍。Copilot広告で見え始めた新たな可能性
━━貴社では先述のマーケティング×AIの実現に向けに、早くから取り組んでいる印象です。具体的なパーソナライズ施策について、お話しできる範囲で教えてください。
個別アカウントの事例はお話しできませんが、現在トライアルを実施しています。日本でも検索広告に出稿していただいているお客様が多数いらっしゃいますが、Copilotで質問された際に適切と判断される広告が、Copilot上に試験的に表示されています。
━━Copilotの会話の中で、広告はどのように表示されるのでしょうか。
大手検索エンジンで言うところの広告リンクとオーガニックリンクのように、Copilot上でも広告リンクに相当するものが試験的に表示される形になっています。

注目すべきは、そのコンバージョンレート(CVR)の高さです。Bingでの通常検索広告と比較して、Copilotを使用した場合の広告ではCVRがその約2倍と非常に高くなっています。
━━なぜコンバージョンレートが高くなるのでしょうか。
たとえば「箱根の温泉に行きたい」「タイ式マッサージも受けたい」「今日使える割引クーポンはあるか」といった複合的な質問を、従来の検索エンジンでパッと解決するのは難しいでしょう。
従来の検索エンジンでは、検索結果としてリンク集が表示されるだけでした。ユーザーは複数のリンクをクリックして情報を収集する必要があり、その過程でCVRが下がってしまうのです。
しかしCopilotでは会話形式でやり取りが続くため、ユーザーのニーズにより近い回答を提供できます。より個人に特化した情報を聞き出し、会話を通じて情報がカスタマイズされていった結果、CVRが向上するのです。
業界トップ人材の獲得で広告ソリューション開発も加速
━━組織面での強化についてもお聞かせください。

MicrosoftのAI部門で、大きな変化が起きています。2024年3月、ムスタファ・スレイマン氏がMicrosoft AIのトップとして入社しました。同氏はAI系企業の創業者で、大手IT企業のAI領域を牽引してきた業界のブレーン的存在です。彼の加入により、様々な改革が始まっています。現状のクオリティに満足せず、米国でもトライアルアンドエラーを重ねながら、大幅な改修を進めているところです。
さらに2025年4月には、ティム・フランク氏が入社しました。同氏はAIを活用した新たな広告キャンペーンタイプを生み出した人物として知られています。MicrosoftのAI部門では、プロダクトとAIを活用した売上向上を担当しており、Microsoftの広告商品にはさらなる改修が必要であると述べています。Copilotという生成AIを活用して広告パフォーマンスを最大化するためには、既存のMicrosoft広告のアルゴリズムを根本的に改修する必要があると考え、これも既に動き始めています。