データドリブン文化の醸成、成功のポイントはスモールサクセスの積み重ね
MarkeZine:R&Aセンターの立ち上げから4年間で、社内にデータドリブンの文化が強く根付いたと伺いました。文化醸成を軌道に乗せるため、どのようなことを心掛けましたか?
寺島:早いうちから、小さくても目に見える成果を出す点を意識しました。
新しいプロジェクトに人材や予算を投資していくときには、経営層も現場も「本当に成果が上がるのか」と不安を感じます。初期段階でいかに成果や意義を示せるかが、取り組みを持続させるためのカギになると考えました。
MarkeZine:スモールスタートで成果を示したのですね。その当時、どのような成果をあげられたのか教えてください。
寺島:2021年当時は大きく2つのプロジェクトで、成果を示すことができました。
1つ目は経営ダッシュボードの構築です。先にお話しした通り、以前は問題が発覚してから原因を分析していたため対応が後手に回っていました。そこで、経営層がリアルタイムで定量的に状況を把握できる仕組みを整え、課題が顕在化する前から経営判断を下せる状態を実現しました。
2つ目は、通信ARPU収入(Average Revenue Per User:1ユーザーあたりの平均収益)を向上するための施策実施です。政府からの携帯電話料金の値下げ要請によって通信ARPU収入が全体的に落ち込む中、新たな価値の提供を通じていかにして収益を回復させていくかは、KDDIにとって重要な経営課題でした。
そのために、お客様のライフスタイルや趣味嗜好を分析し、野球が好きな人には高校野球(甲子園)の試合動画を、ミュージカルが好きな人には人気公演に関する動画をといった具合に、お客様ごとに最適なコンテンツを用意し、ご提案(レコメンドの高度化)することで通信利用を増やすことができました。
一方、一度に複数の施策が実施される場合、どの施策がどれだけ収益につながったのかを特定するのは難易度の高い作業となります。しかし、ARISE analyticsと共に分析のフローを確立したことで、費用対効果を見極めて、効果の出た施策に絞ってスケールさせることができ、売上も右肩上がりに推移させることができました。
KDDIグループ全体でデータ活用を推進、さらなるマーケ力向上へ
MarkeZine:最後に今後の展望をお聞かせください。R&Aセンターは、現在どのような目標を掲げていますか?
寺島:今後も、データ分析の高度化と内製化をさらに推進していきます。
センター立ち上げから4年経ち、メンバーが100人超と組織規模が膨らんできたこともあり、2025年に組織を分割し、もう一方を「Analytics & AIセンター」として再編しました。Analytics & AIセンターは、名前の通りデータ分析とAIに特化した組織です。AI活用のポテンシャルを研究し、大規模な分析に基づく未来予測や、より精度の高いパーソナライズされた施策につなげることなどを考えています。

さらに長期的な視点では、KDDIグループ全体にデータドリブンの文化を根付かせ、グループ横断でのデータ活用を推進すると共に、KDDIのマーケティング力を国内外でリードできるレベルまで引き上げることを目指していきます。
