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資生堂「クレ・ド・ポー ボーテ」グローバルECサイト構築の道のり──ブランドらしさと実運用の両立

共通の運用基盤とAI活用でスピーディーな調整が可能に

MZ:各マーケットへの展開と運用を進める中で、どのような取り組みをされましたか。

谷村:GMWを展開するにあたり、「困ったときはまずここを見てください」と示せるガイドラインの整備です。情報やリテラシーの違いによって理解度に差が出ないよう、プロジェクトに関わって日が浅いメンバーにもサイトを見てもらい、「どこがわかりにくいか」「どんな表現なら伝わるか」を何度も確認しながら改善しました。

井須:運用における重要な取り組みの一つは、情報共有の最適化です。各国でリニューアル時期が異なるため、どの国がいつ参画しても過去の運用情報をスムーズにキャッチアップできる仕組み作りが課題でした。そこで、これまでバラバラに管理されていた資料をナレッジ共有ツール「Confluence」に集約。ガイドライン、運用ルール、リリーススケジュール、各種リンクを一元管理し、誰が見てもどこに何があるかがわかるようにしています。

株式会社電通デジタル グローバルセンター ビジネスプロデュース第1事業部 井須弘恵氏GMWの通常運用フェーズから参画し、シーズン更新や新規コンテンツの提案、アクセシビリティ対応の実装支援まで、制作領域全体のプロジェクトマネジメントを担当している。
株式会社電通デジタル グローバルセンター ビジネスプロデュース第1事業部 井須弘恵氏
GMWの通常運用フェーズから参画し、シーズン更新や新規コンテンツの提案、アクセシビリティ対応の実装支援まで、制作領域全体のプロジェクトマネジメントを担当している。

MZ:AI活用についても取り組まれているそうですね。

井須:AI活用はアクセシビリティの領域からスタートし、現在は「altテキストの設定」と「動画のテキスト版提供」の検証を中心に進めています。また、動画の音声解説についても並行してテストを行っている段階です。

 altテキストについては、第一に付与対象を丁寧に整理し、あえてaltを空にするケースも含めて判断基準を明確化しました。商品パッケージの記載範囲などを基準として明文化し、ガイドラインとして整理・体系化しました。その上で、AIに下書きを生成させ、ブランドトーン・製品特徴・文保構造の観点から人の手で最終調整するフローを構築しました。

 動画については、まずAIに動画内容を理解させ、複数パターンのテキスト版の下書きを生成させています。動画の内容を一から人が文章化するのは負荷が高いため、AIに一定の文章を作成してもらい、その上で「どういう表現がブランドにふさわしいか」「どこまで補足すべきか」といったルールをこれから整えていく段階です。現状は、情報量・表現のトーン・ユーザーにとっての読みやすさなど、適切なバランスを探りながら検証を進めています。音声解説版についても、同様に必要性や価値を見極めながら並行してテストを行っています。

 AI導入で最も重視しているのは「AIを使うこと」ではなく、人の判断や感性をどう活かすかを前提にプロセスを再設計することです。ブランドの世界観を守りながらもスピーディーに改善を進められるようになり、チーム内に試行と改善を繰り返す文化が根付いてきました。

インクルーシブなWebサイト構築のために

MZ:一連の取り組みを通じて、どのような手応えを感じていますか。

ルモワーニュ:Confluenceにガイドラインが整備され、デザインシステムも構築されたことで、サイトリニューアルの速度が大幅に向上しています。各マーケットとのやり取りも効率化され、ブランドが表現したいことを損ねずにスムーズに展開できています。

 アクセシビリティの取り組みについては、引き続きコードの細かい部分まで幅広い対応が必要です。ただ、これを本社が率先して対応することで、マーケットの作業工数を削減できました。また、この取り組みを通じて得た知識を活かし、他のコンテンツ制作においてもアクセシビリティの観点から見られるようになった点も大きな成果です。

谷村:アクセシビリティ対応を進める中で、アクセシビリティチームと制作チームの間をつなぎ、情報と意図を整理する“ハブ”としての役割が不可欠だと実感しています。結果として、関係チーム全体で「アクセシビリティを運用にどう組み込むか」を共通言語として考える文化が育ってきました。

MZ:最後に、今後の展望をお聞かせください。

ルモワーニュ:現在は各国のWebサイトリニューアルは準備中でこれから順次公開される予定ですが、私たちはよりインクルーシブな社会の実現を目指し、すべてのユーザーが平等に情報やサービスにアクセスできる環境を提供し、私たちの製品をお届けできるよう、今後もユーザー体験の向上を続けます。また、モバイルデバイスや音声アシスタントなど、新しいデバイスや技術にも柔軟に対応したサイト構築を進めてまいります。

井須:グローバルブランドのサイト運用では、「共通化」と「柔軟性」の両立が常に課題になります。どの国のどの担当者でも同じ品質で更新できるよう標準化しながら、それぞれの文化や表現を尊重できる体制を整えることが目標です。各国がブランドをどう解釈し、いかに自分たちの文化に合わせて表現していくか、といったプロセスをグローバルで共有し、学び合える場を作っていきたいですね。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通デジタル

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/11/26 11:00 https://markezine.jp/article/detail/50011

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