OOHはアルゴリズム時代にどう存在感を示すのか
電通グループが2025年12月に公表した「世界の広告費成長率予測」では、2026年の世界広告費が初の1兆米ドルを突破し、成長率は5.1%に達する見通しと示されています。2025年も5.5%増の9,891億米ドルと堅調で、特にデジタル広告費は全体の6割以上を占める想定です。配信の高度化やAI活用が一層進むことで、アルゴリズム主導の広告出稿がグローバルの主軸となると見込まれます。
こうしたテクノロジーがけん引する時代でも、OOHは成長市場として存在感を保っています。2026年のOOH成長率は+4.1%と予測されており、アナログ媒体の新聞・雑誌が-3.0%と縮小する中でも確かな伸長を続けています。
また私自身、毎週のように都内複数のエリア・駅の広告を巡礼していますが、ここ数年で最も空き枠がない印象で、かつ新しい広告枠も多数登場しています。数字には現れにくいのかもしれませんが、デジタル偏重で分断された消費者との接点をつなぐタッチポイントとして、OOHが再評価されている印象を受けます。
本稿では、2025年下半期(2025年7月〜12月)に私が撮影した広告の中から、特に注目すべき事例をピックアップ。実体験を基に考察していきます。
「広告が見られる瞬間」の解像度を高めて話題化
SNSが生活インフラの1つとなり、どんなOOHでも全国区へ広がる可能性を持つ今でも、OOHには「その場所にいる人が、その瞬間に見る」という確固たる特性があります。話題化を意識する場合、その場所が持つ文脈をきちんと汲み取り、広告が見られる瞬間の解像度を高めることが重要です。
たとえば、8月に展開されたBilloneの広告。今の「渋谷の街」を上手く汲み取った事例で、再開発が続く渋谷駅で「ビルの建て替え」から「経費の立て替え」というビジネスの悩みへ意識を誘導する広告となっていました。

広告が展開されたのが「仮囲い」という、まさに「建て替え」現場である点も見逃せません。渋谷に実際にいる(いた)自分だからこそ、このメッセージがより自分ごととして捉えられました。
同じく8月に実施された、ChargeSPOTの広告は「電車内」という場所を上手く活かした事例です。
電車乗車中にスマホを操作している人が多いことを逆手に取り、中吊り広告を見ている=スマホの充電がなくて暇潰しをしている、と解釈したコピーを展開。ふと上を見上げて「ハッ!」とした方も多かったかもしれません。
一方的に説明するのではなく、消費者が置かれているであろうシチュエーションをコピーで可視化し、解決策としてChargeSPOTを訴求していました。
今年の猛烈な「暑さ」を反映していたUber Eatsの広告も特徴的です。
壁面で展開された広告は、猛暑によって溶けたようなビジュアルで展開。立地的に、広告を見ている人は、「今まさに屋外にいる」ことを反映し、その暑さを視覚的に表現。

この溶け具合が決して大袈裟ではないくらい暑かった……と筆者自身も記憶しており、結果的に「暑さ」に紐づいてUber Eatsというサービスが記憶に残っています。
いずれの事例も、場所や行動パターン、その日のコンディションといった要素をすくい上げ、消費者が今置かれている状況とメッセージをピタッと重ねている点が特徴的です。
