「ポイント」から「感情的なつながり」へ──ロイヤルティの真価とテクノロジーの進化
続いて、MarigoldのLoyalty Center of Excellence(当時)であるRoger Williams氏と、Chief Product Officer(当時)のIain Short氏が登壇。ロイヤルティプログラムの世界的潮流と、それを支えるプラットフォームの進化について語られた。
同社 CPO(当時) Iain Short氏
Williams氏は、世界的なトレンドとして「即時割引」が拡大している現状に触れつつ、その持続可能性に疑問を呈した。「顧客の68%が、自分に合った価値や利便性のためならプレミアム価格を支払う意思を持っています。安易な値引きではなく、ブランドとの関係性を深める設計が必要です」(Williams氏)
そこで提示されたのが、「ロイヤルティの方程式」だ。Williams氏は、ポイントを貯めて特典と交換する瞬間を「ゴールデン・モーメント」と呼ぶ。
「顧客がポイントを使って何かを得た時、彼らにはプログラムへの満足と『もっとポイントが欲しい』という欲求が生まれます。この『交換』という体験こそが、収益を牽引する『増分』を生み出すのです」(Williams氏)(参考:ゴールデン・モーメントとロイヤルティプログラムのROIについての解説)
続いてShort氏が、この戦略を具現化するテクノロジーについて解説した。Marigoldのプラットフォームは、クロスチャネルメッセージング機能「Engage+(現Cheetah Digital)」とロイヤルティプログラム管理機能「Loyalty」が連携し、あらゆるチャネルでパーソナライズされた体験を提供する。特に注目を集めたのが、新機能「AI主導のオファー(AI Offers)」だ。
「買う準備ができている人と、あと少しの後押しが必要な人をAIが見極めます。これにより、不必要なバラマキによる値引きを防ぎ、利益率を確保しながらコンバージョンを最大化できるのです」(Short氏)
さらに、投資対効果を可視化する分析機能「Marketer Insights」の強化も発表された。データとAIを駆使して顧客との「感情的なつながり」を築くための、同社のビジョンとプロダクトの進化が示された。
プーマ×ラコステに学ぶ、ファンを熱狂させる「独自のブランド体験」
Keynote2では「ブランドらしい顧客体験を、どのように設計するか」をテーマに、プーマ ジャパン社長の井上緑斎氏と、ラコステ ジャパン Sr. Director of Omni Channelの相城浩志氏が登壇。モデレーターはチーターデジタル 副社長 COOの齋藤修氏が務めた。
株式会社ラコステ ジャパン Sr. Director of Omni Channel/店舗・Digital事業統括 相城 浩志氏
チーターデジタル株式会社 副社長 COO 齋藤 修氏
プーマの井上氏は、ブランドの核となるのは「アスリート」であると断言。世界陸上に合わせて開催されたイベントでは、ウサイン・ボルト選手らを招き、ファンと交流する場を設けた。「『商品を買ってください』というメッセージは一切出さず、選手への憧れやスポーツをする喜びといった『感情』の共有を目指しました」と語る。ランニングイベントの応募フォームには、参加者から熱いコメントが殺到。購買を直接の目的とせず、顧客の人生に寄り添う姿勢が深いエンゲージメントを生んでいる。
一方、ラコステの相城氏は、創業者のルネ・ラコステが生んだ伝統を守りつつ、「遊び心」を取り入れたローカライズ戦略を展開。また、店舗を「体験の場」と定義し、ポロシャツのカスタマイズサービス「MY LACOSTE」や、VIP顧客向けのアップサイクルワークショップなど、リアルな場での特別な体験価値を提供している。
デジタル領域においても、ラコステはスクラッチ付きのバースデーメールや、オンラインミニゲーム、診断コンテンツなどのエンターテインメントを提供。齋藤氏の「日本はポイントプログラムが割引に偏りがちだが、両社は『体験』を通じて愛着を育てている」という総括の通り、機能的価値を超えた「楽しさ」や「熱量」の共有こそが、ファンを熱狂させる鍵であることが示された。

