徹底した「顧客育成」と「共創」による市場浸透戦略
技術力だけでなく、保守的な建設業界を攻略するためのマーケティング戦略も秀逸だ。
同社は、新市場参入にあたり主要プレーヤー35社への価値検証を実施。VPC(バリュー・プロポジション・キャンバス)を用いて、「住宅用よりも厳しい品質管理基準」や「大規模現場での管理機能」といった産業用特有の必須要件を特定し、論理的な裏付けを得た上で製品化を進めた。
また、顧客獲得においては「リードナーチャリング(見込み客育成)」の4ステップを構築 。
- システム説明:映像などによる認知
- 実機デモ:オフィスでの体験による理解
- 現場課題確認:顧客現場でのフロー確認
- PoC(実証実験):実際の現場での効果検証
このように段階的にニーズを掘り起こし、顧客自身に価値を実感させることで、受注確度を高める戦略をとった。
さらに、単独での展開ではなく、エコシステム全体の巻き込みを図っている点も見逃せない。工具メーカー、金具メーカー、保険会社、リース会社など、建設に関わる多様なプレーヤーと共創。特に、金具シェアNo.1のサカタ製作所から「お墨付き」を獲得し、販売協業を開始したことは、業界標準(デファクトスタンダード)化へ向けた大きな布石となっている。
工数76%削減の実証と、広がるDXの可能性
この戦略の成果は、定量的な数値として明確に表れている。ある現場でのPoC(実証実験)では、システム導入前後で締結作業・管理工数の合計が約76%削減されることを確認した。また、量産販売前にもかかわらず、既に大手EPC10社の見込み顧客を獲得している。
定性面では、その革新性が高く評価され、日本DX大賞2025において「審査員特別賞」を受賞。自社技術を社会ニーズの高い市場へ展開した事業化の視点が評価され、「今後のインフラ業界の標準となりうるポテンシャルを持つ」とのコメントを得ている。
旭化成エンジニアリングが見据えるのは、単なるツールの販売ではない。「ボルト締結の自動化」を入り口とし、工場や住宅建設など多様な現場へデジタル活用を広げ、人依存を最小化したサステナブルな建設現場を実現することだ。社内のニッチな技術課題から始まったこの変革は、日本の建設産業全体の生産性を底上げする大きなうねりとなろうとしている。
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