米国最新情報レポート「MAD MAN REPORT」を毎月発刊している榮枝洋文氏の視点を借り、国内外の企業の動きやグローバルの潮流を解説している本連載。今回は、近年高騰しているスポーツ放映権に関連する話題を取り上げる。事業収益の大部分をスポーツ放映権に投資する企業も出てきているが、ストリーミング市場の次なる競争軸はどこにあるのだろうか。
FOXがW杯放映権を手に「Roku」を買収、ストリーミング配信拡大へ
ご存知だっただろうか、FIFAワールドカップ(W杯)の開催中に、米国の大手テレビ局のFOXが、ストリーミング基盤を提供する「Roku」を約3.5兆円(約220億ドル、発表時の1ドル159円換算)で買収すると発表した(2026年6月15日)。
FOXはW杯の米国向け放映権を保有しており、自社のテレビ放映だけでなく、傘下の無料ストリーミングサービス「Tubi」でW杯を配信していた。その裏でさらにストリーミング業界大手のRokuを呑み込んだ形だ。約3.5兆円という大型買収を実行できるのは、巨大な資本力を持つ米国テレビ局ならではの構造である。
TVストリーミングの主戦場は「ライブコンテンツ」
ストリーミングが旧来のテレビ(電波)放送に優るのは、受像機(TV)・ケーブル回線・電波アンテナも不要で、海外からも視聴できる点にある。米国ではすでにストリーミングが放送・ケーブルTVを上回り、視聴時間シェアで最大勢力(47.6%)に達した(図1)。
そのストリーミングにおけるキラーコンテンツの第一の柱は「いま起きていることを伝える“ライブコンテンツ”」だ。音楽ライブやニュース、天気予報、政治報道など多数のジャンルがある中でも、プロスポーツ実況の価値とそれにかけるコストは群を抜いている(図2・3)。
スポーツ放映権は通常10年以上の契約に及び、単純に年換算すると各社が数千億円から1兆円超を投じている計算になる。超巨人のAmazon・Google・Netflixの伸びる企業資産力が相場価格を引き上げ、それに続いてコンテンツ事業者は巨額のコンテンツ調達コストを支出しており、その額は事業収益の大部分を占める。
さらに、ドラマシリーズなどの編集制作型コンテンツという第二の柱まで確保できる資金力・製作費・運営ノウハウが、一次コンテンツ事業の競争力を左右する。
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榮枝 洋文(サカエダ ヒロフミ)
株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)/ニューヨークオフィス代表
英WPPグループ傘下にて日本の広告会社の中国・香港、そして米国法人CFO兼副社長の後、株式会社デジタルインテリジェンス取締役を経て現職。海外経営マネジメントをベースにしたコンサルテーションを行う。日本広告業協会(JAAA)会報誌コラムニスト。著書に『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)。ニューヨーク最新動向を解説する『MAD MAN Report』を発刊。米国コロンビア大学経営大学院(MBA)修了。※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
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