膨大な自社データを、どう「利益」につなげるか
──AIの急速な進化を受けて、マーケティングリサーチおよび顧客データ活用の現場は、どのようなフェーズを迎えているのでしょうか。
AIの進化により、マーケティングリサーチは大きな転換点を迎えています。
1990年代後半にインターネット調査が登場して以降、データ収集の速度とコストは大きく改善しました。しかしその裏側では、アンケート画面の作成や配信、集計、レポート作成といったオペレーションの多くが、人の手により行われていたのです。現在はそれらの一部がAIに置き換えられつつあり、事業会社がより速く、より安価にデータを手に入れられるようになりました。
また、AIは顧客データ活用にも大きな影響を与えています。ここ数年はスマートフォンアプリの普及などにより、デジタル上の顧客接点が格段に増えました。これに応じて、企業が自社で保有する購買履歴や行動ログといったデータが爆発的に増加しています。AIは大量のログデータを高速で分析することを得意としますから、事業会社にとって、膨大なファーストパーティデータを収集・分析する環境が整いつつあると言えます。
これらの変化により、現在のマーケティングリサーチや顧客データ活用の現場は、データ基盤を整える「整備」のフェーズから、大量のデータを活用して顧客と自社双方の利益を生み出す実践的なフェーズに突入していると言えるでしょう。
「行動と動機」の理解から始まる、最適な顧客体験
──膨大なデータを利益に還元するためには、何が鍵となりますか。
前提として、私たちが考える「利益」とは、売上増や増収だけを指すものではありません。適切なタイミングで欲しい情報が届く体験や、手厚いサポートによる満足度など、「顧客が享受する価値(=顧客利益)」も含まれます。
行動ログデータ単体でも、需要予測やUI改善といった多様な施策を展開できます。しかし行動ログデータが示すのは「何が起きたか」という結果でしかありません。そこで、事実を示す行動ログデータに、アンケートなどで収集する「意識データ」を掛け合わせることで「なぜ顧客はその商品を選んだのか」「なぜアプリを開かなくなったのか」という「動機」を把握できれば、顧客解像度は格段に向上します。
そのうえで最適な顧客体験を設計し、顧客の利益を生み出すことができれば、継続的な取引につながり、結果として自社の事業成長につながる。こうした「利益創出のスパイラル」を実現できるのです。
データ基盤を整えるも……。顧客の声から見出した本質的な課題
──顧客理解を利益へと結びつける支援を行うため、今回モニタスでは、サービス内容を大きくリニューアルされました。その背景や具体的な変更点を教えてください。
以前よりモニタスでは、行動ログデータと意識データを用いて顧客理解を深め、「利益」創出を実現するための支援に取り組んできました。その具体策として、自社会員の行動ログに基づき、セルフアンケートを通じて意識データを収集するプラットフォーム「supercolo(スパコロ)」を提供してきたのです。
しかし実際にツールを提供する中で、「行動ログデータや意識データを、自社の施策や利益にどう変換すればいいかわからない」と悩む声が多く寄せられました。データ基盤が整えられ、調査を実施できるツールがあったとしても、利益につながる可能性の高い施策へと落とし込むには適切なデータから示唆を見つけて仮説検証を行う必要があり、そこに難しさがあるからです。
たとえば、初期段階としてどの顧客層にアプローチすればインパクトが生まれそうか行動ログから判断することもできるでしょうが、その重要性に気づき、実行できるか否かはマーケターに委ねられています。顧客の解像度を高められる手段も重要とはいえ、何をどのような優先順位で特定していくべきか、その全体設計が構築できていなければ成果は得られない。当社のお客様が抱える、本質的な課題にアプローチできていませんでした。
こうした背景から、ツールの機能提供にとどまらず、顧客理解の設計から分析、インタビューの実施、経営戦略や施策への落とし込みまでをオールインワンのパッケージでサポートする「伴走型支援プログラム」へと刷新しました。

顧客構造を特徴で分解。有用な調査に狙いを定める
──新たな伴走型支援プログラムでは、具体的にどのようなアプローチで顧客理解と利益創出を支援していくのでしょうか。
大きく分けて、「自社データの分析」「顧客リサーチ」「インタビュー」の3つのステップがあります。顧客像を「構造・市場・意味」の順で立体的に把握し、利益創出につながる戦略・施策の設計構築を支援するのです。
最初のステップである「自社データの分析」では、たとえば購買単価と利用頻度をそれぞれ分解します。まず行動ログデータという客観的事実を用いて、自社の顧客を「コア顧客」「ライト層」「休眠層」とマッピングするのです。
従来の自己申告制アンケートによるセグメントでは、「先週は何回サービスを利用しましたか」といった設問に対して記憶違いや誤認が生じがちですが、行動ログデータという客観的事実に基づいてマッピングすることで、正確性が担保できます。
これにより、CMOや事業責任者は「現状では購買単価5,000円の層が全体の20%を占めている。そのうち5%を単価1万円のコア層へシフトさせることができれば、売上や営業利益はこれだけ伸びる」という構造が見えてきます。今後のビジネス成長に向けて特に大きなインパクトが期待できる顧客層を特定し、その行動を変化させるための顧客理解、施策設計に狙いを定めることができるのです。
4日間で200人分を収集・分析する「AIインタビュー」
続く「顧客リサーチ」では、2つの層にアンケートを行います。
1つは自社データ分析に用いた自社会員を対象としたアンケートです。最初のステップで分析した行動ログの裏側にある「何を価値に感じたのか」を把握します。
もう1つは、弊社が保有する3,200万人の生活者モニターを活用し、比較対象データを収集して「自社データの分析から見出したターゲット層が市場にどれだけ存在するか」などを分析します。
さらに、CEPs(Category Entry Points、カテゴリーエントリーポイント)分析を用いて取りこぼしている想起ポイントがないかも検証し、顧客理解の客観性を高めていくのです。
──最後の「インタビュー」のステップでは、AIを活用した新たな手法を用いているそうですね。
はい。「自社データの分析」「顧客リサーチ」によって立てた仮説が正しいか検証する際に「AIインタビュー」を実施しています。
従来の対人によるインタビューでは、日程調整や発話の文字起こし、分析に膨大な時間を要し、少ないサンプル数しか得られませんでした。
一方、AIインタビューは事前に設計した質問ロジックに基づき、指定URLにアクセスした対象者に対してAIがリアルタイムに質問を展開します。そして対象者が回答した発話内容をAIが自動でテキスト化・集計・分析することで、人の手を介さずに大規模な定性調査を実行できます。ある飲料メーカー様の事例では、4日間で200人分のインタビューを実施できました。従来なら数ヵ月はかかるサンプル数ですから、大幅な増加と言えます。
さらに、AIインタビューでは、200人の発話データから特定の単語が出現した回数をカウントしたり、特定のテーマについて話している動画パートだけを抽出して要約動画を生成したりすることも可能です。これにより、仮説検証の質とスピードを格段に向上させることができるのです。
行動ログデータで調査の狙いを定め、定量調査で全体像の分布を把握したうえで、特定セグメントに対してはAIインタビューを重ねる。この3つのステップに当社が伴走し、当社のお客様が保有する自社データを、顧客理解と利益創出につなげる道筋を整えていきます。
「連続性」のある意識データが利益創出の鍵に
──こうした調査の結果を最大限に活かすために、どのような視点が求められますか?
重要なのは、キャンペーンやUI変更などの施策の前後で意識データをトラッキングし続けることです。連続性のあるデータを見て初めて、顧客の意識がどう変わったかが確認でき、成果が出た理由・出なかった理由を検証できるからです。これにより意思決定の精度が上がることで、施策の最適化や顧客体験の向上、最終的な利益創出が可能になります。
──最後に、CRMや顧客LTVの向上を目指して日々試行錯誤されているマーケティング責任者へ、メッセージをお願いします。
AIの進化により、データの収集や分析のハードルは劇的に下がりました。しかし、その分析結果を、企業の利益につながる確かな意思決定に変えることは、決して容易ではありません。自社のデータをどう活用すべきかお悩みの際は、顧客理解を利益に変える伴走パートナーとして進化した当社へ、ぜひ気軽にご相談ください。


