言語化や施策アイデア出しで生成AIを使い倒す
生成AIの活用は、ブランド戦略やマーケティング実務において欠かせない前提条件になっています。仮説の整理、施策アイデア、ネーミングやコピーやメールタイトル表現のたたき台づくりまで、使いどころは多岐にわたります。
生成AIの品質は日進月歩ですが、基本的にアウトプットが期待通りではない、意図とずれていると感じる場合、その原因をAIの性能に求めすぎるのは適切ではありません。多くの場合、入力している指示、つまり要件定義の情報が不足しています。
ターゲット顧客とインサイト・ブランド知覚価値を定義し、施策の実施背景となる課題を定義し、施策の目的と前提・制約条件、期待する成果を詳細に指示すればするほど、生成AIは期待に沿ったアウトプットを出してきます(図21)。部下や外注パートナーの活用がうまい人は、AIの活用もうまい傾向があると感じます。
出力精度を上げる過去データの学習
戦略の骨格と要件をきちんと整理し言語化したうえで指示を与えれば、生成AIは非常に優秀な実務パートナーになります。ただし、そのすべての成果物内容が有用ではないので、取捨選択も必要ですし、自らの手作業で改善も必要です。でも、それは部下も外注パートナーも同じはずです。
生成AIは、ブランド戦略を人間の代わりにゼロベースで考えるのは現在のところあまりうまくありません。しかし、ブランド戦略の情報をインプットし、AIに理解させたうえで使えば、施策の思考と生産のスピードと試行回数を飛躍的に高めてくれます。
また、過去のメールニュースとその反応のデータを学習させてから、メールコンテンツのポートフォリオを組み、タイトルや内容の素案のたたき台をつくるというような思考と作業は、大きな成果を出した実例もあります。
私は本書の一部について、生成AIで原稿のたたき台を作成していますが、過去の自分の文章を読み込ませると、まるで自分が書いたの?と思わせる自分らしい原稿を出してきます。少なくとも自分以外の人にインプットして書いてもらうより、スピードが速く、クオリティは高く、コストは安いのは明白で、すでにテキストレベルは生産性を激的に高めています。
COLUMN SNSでの存在感はリアルな存在感へと昇華する
SNSというのは不思議な装置で、SNSをメインの情報ソースにしている生活者にとっては、SNS上の存在感が、リアルな市場での存在感として誤認を引き起こす作用を持っています。
たとえば、「会社の売上が1億円で、フォロワーが3万人いる企業関連アカウント」と、「会社の売上が10億円あるが、フォロワーが100人しかいない企業関連アカウント」があった場合、業界の実情をよく知らないSNSユーザーからしたら、前者の企業のほうがはるかに大きな存在感を持ち、マインドシェアが高いということは珍しくはありません。
何かその業界のサービスを検討するとき、前者の会社がリサーチ対象や問い合わせ先の1社になる可能性は高いでしょう。つまり、SNS上の存在感が、リアルなビジネスに大きな恩恵を与え、好循環を生むこともあります。
逆にいえば、SNSやネット空間上で存在感がなければ、その業界を詳しく知らない潜在的な顧客層にとっては、存在しないも同然です。存在感が薄い大手企業は、そのまま放置すると長期的には負のインパクトがある可能性を真剣に捉えたほうがよいでしょう。顧客の頭の中で存在しないブランドは選ばれようがない。この事実から目を背けてはいけません。
私の会社のクライアントである大手食品企業は、テレビCMでは常に話題になりながらもネット上での存在感の薄さに危機感を持ち、SNSやネット上での存在感を強化する施策にトップ自らがコミットしました。その結果、見事にネットでの露出は大幅に増加しました。大手でもトップが危機感を持って、リスクを許容してリソース投下すれば改善は可能なのです。

