「アフィリエイトはやってはいけない」と思い込んでいた
四家
ブログで文章を書いて収入を得るということについては、アフィリエイトだけでなく、バズマーケティングのような手法も出てきています。らむねさんは、書くことと、収入を得ることについて、どんなバランスをとっていますか?
村山
私は、自分のサイトで書く記事については、企業やお店からはお金はもらわない主義なんです。ごく一部の例外を除いて。なにしろアフィリエイトも、最初はものすごく抵抗があって、「私は絶対にやってはいけない」と思いこんでいました。
四家
自分がやってきた情報発信のポリシーに反すると?
村山
はい。でも飲み会で、楽天の社員の方から勉強のためにアフィリエイトをやっているということを聞いて、ああ、そうなんだ、と。そんなにこだわらなくてもいいんだと。そもそもアフィリエイトって、おまけっぽいじゃないですか。いい情報を書いたときにもらえるおまけ。
四家
一部のプロを除いたら、まあそうですよね。金額の多寡より「あ、こんなものが売れるんだー」と、ちょっとだけマーケットとつながる感じがうれしい。
村山
それがわかってきたので、2004年に独立してサイトをブログ化するときに、「らむね的通販生活」も完全に禁欲的にやっているよりは、結果的にお金がついてきたというふうな運営にしてもいいかなと思えるようになったんです。それまで相当の私財をつぎ込んでいましたから。
四家
通販もそうですけど、らむねさんは「これだ!」と思ったら、まずやってみる、つぎ込んでみるんですね。
村山
楽天さんからいただいていたライターとしてのお仕事も、ちょうど終わりかけていたというのも大きいですね。なんというか私にとって自分のWebサイトからの情報発信って「道楽」なんですよ。だから、文章を他の媒体に売ることはする。でも、自分のサイトの文章は売らない。そんな分け方をしています。
文章で、自分が楽しむこと、人に楽しみを与えること
四家
ライターとしてさまざまなメディアでらむねさんの名前を見かけるんですが、楽天での仕事がプロとしての始まりですか?
村山
実はすでに96年頃から、「日経ウーマン」とか「日経Webカンパニー」という雑誌などに連載を持っていました。日経流通新聞(現在の「日経MJ」)で三石玲子さんと交代でコラムを書いていたこともあります。そういえば最近、連載のお仕事はないですね。どなたかください(笑)。
楽天では、公式メルマガに「村山らむねの超楽天主義」っていうコラムを書いていました。その後、楽天さんのサイトのランキングコーナーにもコラムを書いていました。
四家
声がかかったきっかけは、やはりホームページからですか?
村山
セミナーで講師を務めたのがきっかけでしょうか。なんとなく声がかかったので、私もよくわからなかったりして。
「ぼんやり営業」ってよんでいるんですが、ぼんやりしているうちに仕事をいただいているというのが多いんです。あと、杉浦日向子さんが書かれてましたが、「能楽者」っていう言葉があるんですね。能の演奏者って言う意味ではなくて、「能く(よく)楽しむ者」という意味です。私、能楽者でいたい。
四家
おお、知りませんでしたその言葉は。ご自身のことを「ぼんやり」とか「視野狭窄」とかおっしゃってますけど「自分が楽しむ」という目的のために、貪欲に、かつ着実に歩みを進められたと思います。自分のサイトで半端にお金をもらわないのも、楽しくないからでしょう?
村山
ですね。お金もらうと、すごく負担になるんです。根っからの貧乏性で。
四家
というか、自分の楽しさを大事にしているんですよ。それが表現衝動の源泉だから。それにファンである読者の信頼も失うし。
村山
ファンのことはあまり考えない。考えすぎると踏み出せない。だけど、文章を書くときにはすごく考えますよ、読み手の楽しさを。ショートケーキを説明するのに、イチゴのことは書かないようにするのが私のポリシー。一番のいいところは、その人に発見してほしいから。すごく詳細に書くのって、相手へのサービス精神が足りないと思う。
四家
なんかいま、ズバッと凄いことを言われた気がします。一瞬でものすごく勉強になりました。
村山
余白を残して伝えるのがスキです。なぜなら、いいと思ったものは、その人自身に体験・体感してみてほしいですから。
四家
うーん、このあたりが「発信する消費者」の先駆者としての、村山らむねの凄さなんだと思いますね。
村山
先駆者といわれるとこそばゆいです。たった10年くらい早くても、鼻差なので。