IMMによるキャンペーン管理とオペレーションの連携
まずはCRMシステムやERP、Webログやソーシャルメディア、キャンペーン情報など、顧客に関するデータを収集・統合し、活用・分析できるように準備する。こうして集めたデータを用いて顧客を正しく理解するためには、分析が必要不可欠だ。
分析により、顧客当たりの収益性やキャンペーン反応率の把握はもちろん、顧客が次に必要とする製品は何か、どういった提案を行えばロイヤリティを高められるかを予測していくことが可能になる。
次に、自社の戦略と照らし合わせながら分析結果に基づきマーケティング・プランニングに着手する。この際、業績やリソース、プロセス、スケジュールなど複雑な要素を考慮し、連携を取りながら組み立てることが重要だ。
「まずプランがあり、一人ひとりのお客様に対する戦術があり、それを使う道具がある。限られたお金・リソースの中でどういう手段をとり、どう最適化していくのか。この考え方がIMMの基本的な考え方であり、必要だと言われるプロセスだ」と、高橋氏はIMMの考え方を紹介した。そして、IMMの実現のために不可欠な最適化のために重要となるのが、「分析」だと指摘する。
「R」と「I」の関係を見直す
ここで、高橋氏は「そもそもなぜ分析をする必要があるのでしょうか?」と会場に問いかけた。
「マーケティングの投資を増やしていくとリターンも増えます。投資もリターンも色々なバリエーションがあると思いますが、どこかで限界が来ます。これはROIの構造です。しかし、分析に基づいた優れたセグメンテーションやターゲティングを行えば、ROIの構造を変えることができます」
「分析の価値はこの曲線をどれだけ上に引っ張り上げられるかという点にあります。上に行けばいくほど効率的なマーケティングを行っているという意味であり、構造が見えることでどこまで投資すればよいのかという基準も分かるようになります」
テレビ、雑誌といったマス広告、バナー、リスティングといったネット広告に出稿しつつ、チラシを配り、ダイレクトメールを送る。このように、同時並行でいくつもの施策を展開するケースも多いが、どこにどれだけの予算を投資すれば、トータルのROIが最も高くなるのか知ることが重要だ。
では、SAS Customer Intelligenceの導入企業はどのようにマーケティングに取り組んでいるのだろうか。講演の後半ではIMMに取り組む企業が得られた成果について紹介された。
事例:優良顧客の流出を自動的に防ぐ仕組みを構築
高橋氏が最初に紹介した事例は、Staplesという小売企業。店舗・カタログ・ECサイトでオフィス製品や文房具を販売している。
「お客様一人ひとりに向けて、パーソナライズしたメッセージや価格を提示することで、最優良顧客のロイヤリティを高めたい。優良顧客が他社に流れるのを事前に予測して防ぎたい。こういった悩みを抱えておられました」。Staplesは導入したSASを使い、過去のデータを分析。顧客が他社に流出する前には購入履歴に特定の兆しが現れることを見つけ出し、兆しが現れた顧客に対しては自動的に特別なオファーを提示するように設定した。
事例:イベント・ベースド・マーケティングを実現し最適な提案を実施
2つ目の事例は、横浜銀行だ。一人ひとりの顧客口座の動きをパターンとして認識することで、通常とは異なる残高の急激な変化や退職・結婚などのライフイベントの発生をタイムリーに把握し、最適なタイミングでの提案を行うイベント・ベースド・マーケティング(EBM)を実現した。
「『この人には、もしかしたらローンのニーズがあるのでは』『運用のニーズがあるのでは』といった傾向を分析して見つけ出します。当てはまる顧客が見つかったら、担当営業や窓口にその情報が届く仕組みを作っておられます」
EBMは劇的な成果を生み、投資信託と保険商品の成約率が10%に向上。当初は「この人は~では」という仮説が4種類のみだったが、導入から2年で25種類にまで増加している。