顧客の声から見えてきた、キットカットのストーリーを施策に活かす
ソーシャルメディア上の投稿からは、さまざまな示唆を得られるものの、膨大な量の扱いに困る企業が少なくない。一つひとつに目を配る労力をかけるのは不可能なため、ネスレ日本ではソーシャルリスニングに取り組むと同時にSaaS型テキストマイニングツール「見える化エンジン」を導入し、意義がある投稿を見つけやすくしている。
すでに同社では、ソーシャルリスニングを通して具体的な商品の改善に取り組んでいる。例えば「キットカット」では九州の方言『きっと勝つとぉ(きっと勝つよ!) 』に似ていることが受験生の間に口コミで広まり、今ではお守りとして定着。受験シーズンに売上が伸びるが、「お守りのような存在であるキットカットのエモーショナルな価値を、受験以外にも活かしたいという課題があった」と田代氏は語る。
そこで、商品パッケージに設けているメッセージ欄が、受験関係以外にどのような使われ方をされているのかを探ったところ、「宿題をしたら食べてね」といった留守番時の親子のコミュニケーションや、「お疲れさま」といったオフィスでのちょっとしたねぎらいなどに活用されていることが新たに分かった。
「他には、子供がメッセージを書いてお父さんのお弁当に添えているなど……。お守りにしているというコメントには、パッケージがそこまでの価値を持つのかと涙が出ました」と田代氏は話す。その後、小売店店頭でこれらの使い方を提案するキャンペーンを実施したところ、受験シーズン後の月間売上が前年対比1.5倍近くにも上った。
顧客の声からストーリーを発見するプロセス
こうした発見は、当然ながら投稿の傾向や多く使われているワードを把握するだけでは分からず、投稿の原文を読んで初めて知ることができるものだ。VOC推進室の小町尚子さんは、「ツイッターの画面でも検索はできますが、キットカットなどだとビッグワードすぎて、なかなか実際の改善につなげるのは難しいと感じています。「見える化エンジン」は、ワードの傾向がツリー構造で見えたり、属性・セグメントの特徴がすぐ分かったりと大局をつかんでから、象徴的な原文をピックアップして確認するという流れが使いやすいです」と話す。
VOC推進室では他部署にツールの活用を促すことも進めている。もちろん、ただ「見られますからどうぞ」というだけでは浸透していかない。
「地道な活動ですが、事例をつくってそれを発信していくことで、徐々に他部署からの問い合わせも増えてきています」と田代氏は語る。
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