リアルタイムで可能になったユーザーとのキャッチボール
友澤:海外ではデータ分析もターゲティングもいろいろなトライアルをやりきって、今まさにクリエイティブにフォーカスという感じですが、日本はまだターゲティングさえやりきれていない。
広告効果を上げる3つの変数は、媒体とターゲティングとクリエイティブです。日本はまだデジタル分野でのクリエイティブ人材が少ない印象で、結果的にアドテクで解決できる“どの面”と“誰に”という点に議論が終始している感があります。世界のトップランナーたちは、“何を”提供するかというクリエイティブにまで踏み込んだデジタルマーケティングを推進しています。
高田:私もよく、海外の提携パートナーと話をしていると「今まではサイエンス、これからはサイエンスとアートの掛け算だ」という言葉を耳にします。クリエイティブ次第でより豊かなメッセージを伝えられるのはもちろん、それに対するユーザーの反応を細かくデータとして得られることで、従来に比べより深いマーケティングが可能になりました。ただ、できることが広がったといっても、押し売りの広告では当然効果は薄いので、よりユーザーが求める情報やエンターテインメントに近づけることが必要です。
それに、データは1秒ごとに価値がなくなっていく。“データは腐る”なんて言いますが、スピーディに使いこなすリアルタイム性が重要です。その点でも、ユーザーが送ってくれた情報に対して一つひとつ答えるキャッチボールが今ならできると思います。
宣伝とデジタルコミュニケーションを横断的に捉えられる人が必要
MZ:広告主サイドに取材をしていると、アドテクやデバイス以外に、組織体制に悩まれている話も多く聞きます。そのあたりはいかがですか?
友澤:確かに、デジタル領域を扱う部門と宣伝部門との垣根に課題を感じている広告主は多いと思います。私もよく、宣伝部向けに勉強会を行ってほしいと要望を受けますが、でもそれは単なるデジタル領域の解説ではなく、宣伝部に分かりやすい説明や、広告主の立場でデジタルを活用するとどんな表現ができるのかといった内容が求められているんです。
プランニングも予算の上でも、今ちょうど宣伝とデジタルコミュニケーションが一体化してきましたが、元々デジタル領域が専門部署で推進されてきたため、指標も言葉の意味も運用の仕方も違う。その全体像を捉えられる、要はプロデューサー的な役割に立てる人の育成が急務になっています。今そういう立場で活躍している人は割と個人的な資質で伸びた人が多いので、組織としてどう発展させるかと考えている企業は多いですね。
高田:これはテクノロジーの功罪かもしれませんが、テクノロジーは単なる手段であり、それを使ったマーケティングを考えなければいけない。でも、つい設計や実装に時間もコストもかけてしまい、本来のマーケティングに使う時間が少なくなっているのではないかと感じます。設計や実装を解決するのはサプライヤーの仕事なので、僕らとしては広告主にはそうした労力をできるだけゼロにしたいと思っています。