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Interest Economyの時代へ/「DUAL AISASモデル―バズ連動」の経済効果

 アタラ合同会社が運営するメディア「Unyoo.jp」から、コラムやキーパーソンへのインタビュー記事をピックアップして紹介する本連載。今回は、「Attention」を軸とした「マス連動」の時代が終わり、「Interest」を軸とした「バズ連動」の時代になっていくという業界展望を述べるコラムの要約版です。

マス連動の経済効果とは?

 「有園さん、マス連動でいくら稼いだんですか?」と、会食の席などで、このような質問をされることが、たまにある。この「マス連動」とは、テレビCMやラジオ、新聞・雑誌、交通などの広告に、検索キーワード、あるいは、検索ボックスを挿入することを指している。具体的に最近の例をあげると、たとえば、JR西日本の「あしたセレンディピティ 素敵な偶然篇」などだ。

 こちらのサイト『検索キーワード大辞典』に事例がたくさん載っているので、テレビを見ない人は参考にしてもらいたい。マス連動を考えついたのは2004年だが、そのときはオーバーチュア(現在、Yahoo! Japan)で普通に社員として働いていたので、個人的な評価が上がったことはあったかもしれないが、通常の給与や賞与以外に特別な収入を得てはいないのだ。なので、「個人的には、とくに儲かってないですよ」と回答すると、「でも、GoogleやYahoo!は結構、儲かったのではないか?」と聞いてくる人もいる。

 Google JapanやYahoo! Japanがマス連動でどのくらい売り上げてきたか定かではないが、おそらく、せいぜい年間数億円程度だろうと思う。マス連動のキャンペーンで1回あたり平均100万円の予算が、それぞれGoogle JapanとYahoo! Japanに割り振られたとして、1キャンペーンあたり200万円。マス連動キャンペーンが年間100件あるとして、200万円×100件=2億円。2004年からなので約10年とすると、これまでで20億円程度だ。

 年間数億円、10年間でも20億円ぐらいじゃないか?という趣旨の話をすると、「いやいや、テレビCMであれだけ毎日のように検索キーワードを見せられるんですよ。ウェブサイト検索自体の普及を促進してきたと思います。その経済効果も考えると、10年間で1,000億円とかあってもおかしくない」という人もいる。たしかに、そのような間接的な経済効果もあるとは思うが、それよりも、自分としては、インターネットやウェブサイト検索の普及に役立っているといわれることが、何よりも嬉しいし、ありがたいと思うのだ。

マス連動は検索だけじゃない、主な4つの施策

 ここで簡単に、マス連動の復習をしておきたい。マス連動というと、ついつい、検索連動型広告の話ばかりしがちだ。それは私自身がGoogleやオーバーチュア(現Yahoo! Japan)で働いてきたので、検索を中心に考えているからだ。ただ、ここ5年ほど前からアトリビューションの仕事をするようになって他のメディアにも目を向けるようになった。そしていま、マス連動という言葉で意識しているのは、検索だけではなく他のソリューションもいくつか加わった、以下の4つの施策だ。

マス連動の主な4つの施策

1、流通対策

コンビニエンスストアや大手量販店などの店頭の棚を取る。テレビCMの投下量(GRP)が多ければ多いほど、その該当商品を店舗の棚に並べてもらいやすくなると聞いている。テレビで宣伝している商品の方が売れる可能性が高いので、店舗側にとってもメリットがある。テレビCMと連動して店舗の棚の陳列を変えることで売上増加につながる可能性がある。

2、検索連動型広告対策

これは、十分に話してきたので説明は割愛する。

3、アフィリエイト対策

アトリビューション分析をおこなうとすぐに分かるが、テレビCM投下量に比例してアフィリエイト経由のコンバージョンが増減するケースがある。そのため、テレビCMを投下する前に、アフィリエイターに広告の貼り替えを依頼するなどの施策を実施する。アフィリエイターからみても、テレビCMで紹介される商品は売れる可能性があがるので、テレビCMと連動するメリットがある。

4、バナー広告対策

テレビCMのクリエイティブと連動したバナー広告を掲載することで、そのクリック率やコンバージョン率が通常よりも高くなる。また、たとえば、テレビCM投下期間終了後に、そのテレビCMを想起させるような内容のバナー広告を展開することで、テレビCMの残存効果を延命することが通常は可能だ。いずれにしても、テレビCMとバナー広告を上手に連動することで相乗効果をあげるようにプランニングすることができる。

「AISAS」モデルと共に普及したマス連動の概念

 ただ、ここでカミングアウトしておきたいが、10年経過した今では、直接的・間接的な経済効果があると評価してくれる人もいるんだが、最初は本当にぜんぜん売れなかったし、一部の人たちを除いて理解を示してくれる人は少なかった。理解されず売れない状況が続いているころ、予期せぬ援軍が現れた。それは「AISAS」モデルだった。AISASは、電通の秋山隆平氏が提唱したといわれている。最初の「A」は「Attention」(注意喚起)で、この部分を主にテレビCMなどのマス広告が担っている。そして、その「Attention」の刺激によって「Interest」(興味・関心)を持った人たちが、「Search」(検索)するという流れが一般化したというモデルになっており、マス連動企画とピッタリあっていたのだ。

 しかも、電通が提唱しているというのが効いたと思う。私が初めてAISASモデルのことを知ったのは、たしか2005年だったような気がするが、その頃から、マス連動提案をする際の補強材料としてAISASモデルを使うようになった。すると、企画が通り始めたのだ。しかも、自分のあずかり知らないところでも、同じようなマス連動案件が実施されるようになっていった。つまり、その普及の大きな原動力はAISASモデルだったのだ。少なくとも、私の知る限りはそうだった。マス連動が加速度的に普及していったのは、私の力はほとんど関係ない。AISASモデルのおかげなのだ。

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マス連動が弱くなって、バズ連動が強くなってきている

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/06/15 08:00 https://markezine.jp/article/detail/22486

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