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「長期的視野に立ち、ブランディングの領域へ」Turnが示す、日本に必要なプログラマティックの変革


プログラマティックにおける日本の課題

――日本でもプログラマティックな広告取引は徐々に一般化してきましたが、まだその定義は確立できていない状況でもあります。Cindyさんの考える「プログラマティック」の定義を教えていただけますか。

Cindy氏:人が違えばプログラマティックの定義も違うでしょう。ただ、私にとっての定義というのはターゲットユーザーに対して適切なメッセージを適切なタイミングで届けるために、手段としてテクノロジーを活用した広告キャンペーンのプランニングや、メディアバイイングを行うことだと考えています。

――その定義に基づくと、現状の日本の市場におけるプログラマティックの現状と課題をどう捉えていますか。

Cindy氏:数字的に見てもプログラマティックな広告取引の市場は日本でも拡大しています。しかし現段階ではROIを重視した短期的なパフォーマンスにフォーカスしたものにとどまっています。つまり今後の課題というのは、短期的なROIの追及だけでなく、もっと長期的なリターンを前提としたプログラマティックの活用戦略を企業が持つことでしょう。短期的なROIの追及にプログラマティックを活用することはもちろん重要です。その先のステップとして長期的な視野・戦略を持つというのは、顧客とのつながり、すなわちCRMを築く手段としてもプログラマティックを活用していくということです。ここを乗り越えていけば、プログラマティックが進む米英の市場と同じような拡大が見込めるのでは。

――つまりROIを上げるだけでなく、ブランディングを目的にプログラマティックを活用していくべきということでしょうか。

Cindy氏:もちろん、ROIの追及は必要ですが、両方追い求めていくべきだと思っています。ただ、日本での課題という意味で見ると、今はROIのみの追及に偏っているように思います。グローバルで成功しているブランド、例えばアップルやコカ・コーラといった企業は顧客がどんな人で何を好むのか、そしてどんなメッセージであれば受け入れてもらえるのか、テクノロジーを活用して理解しています。それがブランドと生活者の信頼関係の構築に繋がり、ブランドの価値を高めていくのです。やはりROIだけにフォーカスすると長期的なビジョンが欠け、企業にとって持続的に利益をもたらすようなブランドの構築からは遠ざかってしまいます。

――ではプログラマティックをブランディングに活用する際に、ROI以外のどのような指標をみればいいのでしょうか。

Cindy氏:先ほどプログラマティックの定義をお話ししましたが、その中にROIに関する言及はしなかったと思います。つまり質問の指標に関して答えるなら、パフォーマンスもブランディングもそれぞれ指標を置くことができます。

 例えばアメリカの大手食品メーカーの例では、CPRV(Cost Per Recipe View)という指標を設けています。これは自社サイトに掲載しているレシピのコンテンツが一回見られるのにかかるコストを指標にしています。この企業では、自社の食材を使ったレシピを掲載したオウンドメディアを運営しています。その上でレシピが閲覧されることがなぜ重要かというと、生活者がレシピを見ることがブランドとのエンゲージメントだと定義しているからです。実際に同社のサイトでレシピを見た人は、スーパーにいったときに、サイトで見たレシピに合わせて同社ブランドの商品を買う確率が高いということがわかっています。

 またこのオウンドメディアに蓄積されたオーディエンスデータは、オウンドメディア内のコンテンツを新たに考えたり、新たなマーケティングキャンペーンを実施したりする際に重要なデータとしても使うことができるのです。

――今の事例では、その会社が独自に設けた指標でエンゲージメントを図っていました。つまり今の事例のように、企業のマーケターは自社の事業に適したそれぞれのオリジナルの指標を設けるべきということでしょうか。

Cindy氏:そうですね。指標というのはブランドごとに違うと思います。先ほど例に挙げた企業にとっては、レシピを見るという行為がエンゲージメントに図るのに一番いい指標だったわけです。他にも、キャンペーンを行う前にブランドの調査を事前にしておいて、キャンペーン後にその人の意識がどう変わっているのかをチェックするといったこともできます。

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今後のプログラマティックの展望

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この記事の著者

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2015/07/29 17:39 https://markezine.jp/article/detail/22843

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