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有園が訊く!

「人が欲するものの、根本は変わらない 」“使ってもらえる広告”は時代を超える

拡散は「ありがてー」か「おもしれー」の2つ

有園:ちなみにその使用価値とは、ブランデッドユーティリティーとは違うんでしょうか?

須田:ちょっと違うと認識しています。たとえばUNIQLOCKは時計の機能はありますが、どちらかというと自分の部屋にきれいな絵を飾る感覚に近い。時計の価値よりも、素敵なモノの価値。カフカの場合は、赤ちゃんが泣いているというリアルで切実な困りごとに応えられれば、激しく使用価値を感じてもらえて、熱心に友達にお薦めしてもらえるだろう、と思いました。

 そもそもは、クライアントのマーケティング課題を解決するために、今の情報過多の時代にどうやったら生活者に接触できるか? そう考えた時に、生活者のお役に立てば接触機会がそれだけ増えるだろうと気づいた。

 その時、その「お役立ち」は、もちろん広告目的を達成するための「戦術」なんだけど、であればこそ「本当に生活者の普通の暮らしのお役に立つもの」でありたい。僕はできれば、そういう広告を志向していきたいと思っているんです。

有園:2010年当時から比べると、SNSを中心にネット上での拡散力も爆発的に大きくなっていますよね。使ってもらえる以外に、感動系の動画などもよく拡散していますが、それらはどういう位置づけでしょうか?

須田:確かに、そういう動画もバズりますよね。極言すると、拡散には使用価値がある「役に立つ系」と、おもしろいとか感動したなどの「共感系」の2通りしかないと思っています。「激しく感動した!」も「感動的にくだらない!」も、共感という意味では一緒。だからまとめると、役立って「ありがてー」から拡散するか、激しく共感して「おもしれー」から拡散する、のどちらかしかないんじゃないかな。

水に飛び込んだから泳がざるを得なかった

有園:出版当時からメディア環境も変わり、使ってもらえる意味合いも変化してきたわけですね。

須田:何のために「使ってもらえる」ようにする必要があるのか? その目的に「拡散」が加わりました。その点でも、「使ってもらえる」という身近でやさしい日本語タイトルにしたおかげで、多様な解釈が可能になって、本の賞味期限が長くなりました(笑)。

 今は、さらに道具に近い感じですね。スマホが一般化した次はIoTが広がって、腕時計や歯ブラシまでがネットにつながってメディア化しています。そのオンラインの道具やサービスが何によって安価や無償で提供されるのかといえば、企業がお金を出している、つまり「広告」です。

有園:よくわかります。さらにそこに、たとえばテレビがネットにつながったりして、マス広告もオンラインに取り込まれていく流れもありますよね。そこでもう少しマス広告との対比や共存についてうかがいたいのですが、須田さんは2005年からデジタルの仕事をされているんですよね。

須田:はい。当時新設された「インタラクティブクリエイティブ室」が、メンバーを公募していたので手を挙げて、2005年の1月1日に異動になりました。フタを開けてみれば、なんと応募者は僕しかいなかった。

 同僚にも「そんなトコに行ってどうするの? 辞めるの?」と真剣に心配されました。僕自身も、何ができるのかは、まったくわかっていませんでした。ただただ水に飛び込んでしまったから、泳がざるを得なかったという(笑)。本当に手探りで必死でした。

有園:なぜ、移ろうと思ったのですか?

須田:理由は二つあって。一つはその直前一年間くらい、CMプランナーの仕事がすごく苦しかったんです。何度プレゼンしても企画が決まらない。ようやく決まった企画も、できあがったら面白くもなんともないCMになってしまう……。こんな風に生きていて、この先どうするんだろう。そう真剣に悩みました。

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テレビCMとデジタルは思考のベクトルが逆

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/04/11 08:00 https://markezine.jp/article/detail/26190

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