消費者の行動データを分析する
濱口氏は次に、個別の消費者行動を意識した戦略立案について語った。売り上げというのは、何人がどれだけ買ったか、どれだけ利用したかの掛け算である。しかし、購入客数の中には新規の顧客もいれば、既存の顧客もいる。客単価についても1回あたりの単価や回数など、各要素をブレイクダウンしていく必要がある。
かつてのマス消費の時代とは変わって、統合されたソリューションを使いながら、意識だけではなく行動までも動かしていかなければ、消費者の購買意欲の増加につながらない。そのため、意識調査(アスキング)の結果だけでマーケティング施策を作るのではなく、行動データも確実に捉えていく必要があるのだ。
濱口氏にクライアントから寄せられる相談を見てみても、「商品が思ったより売れないので、どうやったらシェアを広げられるのかを知りたい」、「売れ行きは好調なのだが、逆に好調の理由がよくわからない」といったものが珍しくないという。これらの疑問を解消するためにも、市場行動を把握したうえで、ROIを取れるマーケティングを行っていき、意識データだけではなく、行動データも活用するのがベストなのだ。
ただし、行動データだけでは判別しにくいケースも多くあり、そこに意識データを付随させながら、意識を変化させて動かしたい人を動かすといった考え方が必要になってくる。これが正確なROI算出につながる、と濱口氏は語った。
戦略を立ててROI向上を図る
今回の講演を総括すると、一つ目のトピックはROIを意識したプランニングの話。「売り上げは施策の積み上げによって成り立っている」という考え方と、「売り上げを最終目標としてマーケティング管理をしていく」といった考え方。これを考えることによって、どんな施策がどのくらいの売り上げに対して必要なのかが解明するのである。そして、もう一つのトピックは売り上げを人の行動で分解した場合、初めの戦略を立てる時にはROIを意識してプランニングを行い、ROI向上を図っていくことが大切ということだ。
講演の最後に濱口氏が強調したのが、「できることから始めてみることの大切さ」だ。ROIは複雑であり、そもそもデータだけで100%やりきるのは不可能である。最初は不完全でも、始めてみることが大切だ。これまでの売り上げの変動やマーケティング費用などをあわせるだけでも、マーケティング費用が売り上げに対して効いているのかがわかってくる。データが不足しているのなら、販売金額と広告費用の合計を見るだけでも十分。単純なものを見ていくだけでも、マーケティングの確実性やROIについて考えることができるのだ。