求めていたのは、ユーザー行動の見える化
MZ:今回サービスを導入されたお2人は、どういった背景のもと新サービスを導入されたのですか。
河村:私たちは、ネットワーク広告、タイアップ広告以外のマネタイズ手法としてアフィリエイトによる広告収入に注目しており、それをスケールさせたいと考えていました。
加えて、コンテンツの質が重視される流れがある中で、伝統的な出版社である小学館としては「質の高いコンテンツ」と雑誌に紐づいた「メディアのブランド」を強みにしてきましたが、今回の取り組みでそれがどのようにWebサイトのエンゲージメントやコンバージョンに結びついているのか見える化したいと考えました。
木村:我々は、リスティング広告やアドネットワークの運用を支援しており、分析ツールも見ていますが、まだ見えていないことが多いと考えています。
物を買う行為1つ取っても、人によって様々な感情がともなうと思います。たとえば、あるコンテンツの読了率が100%でも必ず購入するとは限らない。反対に読了率30%でも、同じ商品について違う切り口の記事をいくつか読むことで購買につながったというケースもあるはずです。そういったユーザーの動きの意味をもっと知りたいと思い、導入しました。
データでこれまでの仮説を実証
MZ:では小学館とディーエムソリューションズの取り組み状況について教えてください。
塚田:ディーエムソリューションズ様が5月末から、小学館様は6月中旬からデータを蓄積していて、現在分析を進めているところです。
MZ:導入されてみて、現段階での印象はいかがですか?
木村:これまで培ってきた様々な感覚、たとえば「滞在時間が長いユーザーを増やせば良い」といったようなものが、本当に購入やサービス申込みにつながってるとわかったのが大きいですね。
これまでに、広告ですぐにLPに飛ばす、コンテンツで理解を深めてから送客する、など様々な取り組みをしてきました。ただ、これをCTRや滞在時間などだけではどの施策が本当に良いのか判断がしづらい。
しかし、今回の取り組みで読了率なども把握できるようになったため、コンテンツで理解を深めてから送客したほうがCVRは高いことを証明できました。当たり前の話かもしれませんが、それを事実に基づいて証明できたのはとても嬉しかったです。
河村:これまでのGoogleアナリティクスでも様々なデータを見ることはできましたが、今回の取り組みによって、どのくらいエンゲージメントがコンテンツによって深まったか可視化されてわかりやすくなりました。それをどう収益化につなげるかは、試行錯誤している段階です。
データ活用でコンテンツを金のなる木に
MZ:塚田さんと足立さんとしては、今後どういった支援を行いたいですか。
塚田:両社共に今後、もっとデータがたまってくるはずなので、様々なご提案をしたいですね。今回の協業による分析結果では、良くコンテンツが読まれていたり、1ユーザーあたりの閲覧数が多いエンゲージメントが高いとされているユーザーほど、広告をクリックしたり、その後の購入などのアクション、つまり収益可に貢献する傾向があることがわかっています。
あるメディア様では、サイト内のコンテンツをエンゲージメントの高さとマネタイズの貢献度の2軸で検証した結果、ユーザーのエンゲージメントは高いが、収益可できていないコンテンツが多く存在することがわかりました。
これは、広告クリックや購入アクションを生み出す可能性のあるコンテンツともいえるので、アフィリエイトやアドネットワークなどの収益可につなげる動線を加えるといった施策を打つことができます。つまり、これまで培ってきた資産の有効活用ができるので、両社にもそういった提案ができると良いですね。
足立:導入メディアが自分たちの持っているデータを開示することで、広告主のタイアップ出稿につなげるといったこともでき始めています。
昨年のキュレーションメディアの騒動以降、広告主企業の中にはリスクを考えてオウンドメディアを持たず、代わりにメディアのタイアップ広告でマーケティングに取り組むというケースが増えています。その際にメディアがデータを開示することで、広告主もより最適なメディアを活用し、ターゲット層の認知獲得状況を定量的に把握できるようになります。
MZ:確かに印象論ではなく、データで自社に合ったメディアを選べたら良いですね。小学館さんではそういったデータの開示は進めていますか。
河村:営業にセールストークで活用してもらうことはありますね。“この記事は読了率がすごく高い”といったことをフックに、広告主に合った提案ができていると思います。我々としても、今後もデータは活用していきたいですね。