膨大なデータがあるのに、なぜ顧客理解が進まないのか
マーケティング戦略の第一歩は、顧客理解から始まるといわれる。そのため多くの企業は、顧客理解のために顧客データを蓄積し、様々な角度から分析し、時にはアンケートなどの定量・定性調査も実施しながら、具体的な顧客像を形作ろうと努めている。
だが、どんなに顧客データや分析を繰り返しても、「どうも、実態とは違う……」と違和感を覚え、悩むマーケターは意外と多い。施策に対して思ったような反応が得られなかったり、ターゲット層にリーチできているのか実感がともなわなかったり、分析結果と実際の顧客との間にズレが生じていたり、違和感のきっかけは様々だ。ただひとつ、これらの悩みに共通しているのは「顧客を理解できていない」という感覚だけだ。
なぜ、データがあっても顧客理解が進まないのか。
この点に関し、エクスペリアンジャパン デシジョンアナリティクス アナリティクスグループ アナリティクスマネージャーの荒和志氏は「現在は、デジタル化やIoTにより様々なデータが取得しやすくなり、そうしたデータを活用して顧客理解を深めようという動きが活発です。しかしながら、実際は取得できるデータの範囲は限定的なため、顧客の意識や実像をつかみきれないのです」と説明する。
たとえばあるユーザーに対し、店舗やWebの来訪履歴や購入履歴を把握しても、そのユーザーの大まかな好みを分析できるだけで、「具体的にどういう人なのか」という人物像は見えてこない。そのため、「その人がどのような目的やきっかけで、その商品を購入したのか」という仮説も立てられない。こうしたことが積み重なり、「結局、どの層にリーチすれば良いのか」という根本がわからなくなっているケースが多いのだという。
データの「量」頼みでは顧客像は見えてこない
ただ、「データを一定量社内に保有している企業に関しては、顧客データに属性や行動履歴を紐付けて、顧客を理解するためのデータドリブンマーケティングを進める素地ができています」と荒氏はいう。
これに対し、直に顧客と取引をせずに、流通や代理店経由で販売を行うメーカーや保険業といった業種の場合、顧客理解はより難しくなる。こうした業種は、「ファーストパーティーデータ」と呼ばれる自社データだけでは、データの量も質も足りないため、販売代理店などのパートナー企業から、「セカンドパーティーデータ」の共有を受けるケースが多い。
だが、こうしたセカンドパーティーデータは、よくいえば整理されてはいるが、顧客一人ひとりの特徴や商談のやり取りといった“生”の姿は見えないため、顧客理解には物足りないのも確かだ。また荒氏によれば、「大企業になると、たとえファーストパーティーデータであっても、本社のマーケティング部門に上がってくる顧客データは整理されすぎていて、実際の姿を伝えるにはほど遠いという課題もあります」との指摘もあるという。
こうした状況に対し、エクスペリアンジャパンが提案するのが、サードパーティーデータの活用だ。
「ライフスタイル」という機軸を加えるサードパーティーデータ
サードパーティーデータとは、自社データでもパートナー企業のデータでもない「第三者(サードパーティー)」が提供するデータのことで、具体的には以下のようなものがある。
オープンデータの具体例は、国勢調査や経済センサスなどが挙げられる。クローズドデータは、民間の調査会社が提供する信用情報や市場調査などが相当する。そして当然ながら、サードパーティーデータは、ファーストパーティーやセカンドパーティーに比べて種類が豊富であり、データ量も膨大だ。
このサードパーティーデータをもとに、顧客理解に役立つ「ライフスタイル」という機軸でデータを集約することで、「ファーストパーティーやセカンドパーティーのデータだけでは得られない情報を補完し、顧客像やペルソナをより立体的に捉えられる」と荒氏は語る。
ライフスタイルデータとは、具体的には所得水準や家族構成、車や金融商品といった保有財産の傾向など、生活スタイルを推定できるようなデータのことだ。
こうしたライフスタイルデータがあれば、ある程度データドリブンマーケティングの素地がある企業は、より精緻な顧客ターゲティングや施策が可能になる。十分なデータがない企業の場合、サードパーティーのライフスタイルデータを自社データに加えることで、データ分析の基礎を作り、データドリブンマーケティング施策を進められる。
そもそも、ファーストパーティーやセカンドパーティーのデータは、既に「購買している人」および「ユーザー登録した人」のデータでしかない。
「人間の購買活動を、認知から検討、意向、購買までというプロセスで捉えた場合、ファーストパーティーやセカンドパーティーデータが効果的なのは、購買後の施策に対してです。その前段階である、商品やサービスの『認知』から『意向』に至るまでのプロセスは、やはりサードパーティーのようなデータが効果的です」(荒氏)
「類は友を呼ぶ」から生まれたMosaic
こうした課題解決のために誕生したのが、エクスペリアンジャパンの「Experian Mosaic Japan」(以下、Mosaic)だ。Mosaicは、一般的に取得できる属性データだけでは把握しきれない、顧客層のライフスタイルを見える化する第三者データサービスだ。
具体的に、どのようにライフスタイルを把握しているのか。エクスペリアンジャパン デシジョンアナリティクス セールスグループ アカウントマネージャー 武田彬氏は、次のように説明する。
「『類は友を呼ぶ』ということわざがあるように、人は自然と自分と似た生活様式やライフステージ、そして価値観の人たちと群れる傾向があり、特に居住地においてその傾向は強く表れます。
Mosaicではこの法則に着目し、ライフスタイルが似ている人が自然と周辺に住むという『ジオデモグラフィック理論』に基づいた手法で、国勢調査などのデータを分析しました。こうして、日本全国22万の町丁目別に住民の”ライフスタイル”を定義し、データ化して、ライフステージ・ライフスタイルの似た、14グループ52タイプ220セグメントに分けたものがMosaicです」(武田氏)
Mosaicは、様々なサードパーティーデータを集約して分析したビッグデータの集合体であり、それ自体が既に分析データとしてすぐ活用できるものになっている。そのため統計学など専門知識がなくても、Excelで簡単に使えることが特徴だ。
顧客の住所や郵便番号が把握できれば、Mosaicのデータと掛け合わせることで、生活や所得水準、平均的な家族構成や保有財産などの情報が付加され、より立体的に顧客像やペルソナを捉えられる。
「専門知識がなくてもビッグデータをExcelで容易に活用できることに加え、ペルソナの見える化が実現することで顧客の理解がさらに進み、すぐに新しいマーケティング施策が行えるようになります」(武田氏)
顧客像の明確化で、新規獲得を2倍に
そんなMosaicは国内外を含め1万社以上の導入実績があり、企業のマーケティング活動に寄与している。武田氏によると、国内ではグローバル展開を行う大手家電メーカーが、新規顧客獲得を目的とした折り込みチラシ施策にMosaicを活用しているそうだ。
この企業では、家電の消費が頭打ちになっているという環境要因の課題と共に、「そもそも、どのようなライフスタイルの顧客が利用しているのかわからない」という問題も抱えていた。
この企業のマーケターは、ペルソナとして「郊外在住のファミリー層」を想定していたが、そのペルソナに基づいた施策にあまり反応が見られないため、自社の顧客データとMosaicを掛け合わせて分析したところ、実はリピーターは「都会在住、独身の有職者」ということが判明したという。
「ターゲットとするペルソナが明らかになったことで、チラシの配布エリアの選定と、ペルソナに合わせたクリエイティブについて、大きな見直しが行えました。配布エリアを、優先度を付けて選定し、クリエイティブに関してはA/Bテストを行い、ターゲットに刺さるメッセージを実現しました。
これにより、従来の施策に比べ2倍の新規顧客の獲得とROI向上を達成しています。顧客情報や購買履歴に加えて、ライフスタイルに関わるデータを掛け合わせることでより明確な顧客に対し効果的な施策が打てたわけです」(武田氏)
デジタル広告配信支援の強化、さらなるデータの充実へ
Mosaicは基本的にマーケティングフェーズのどの段階でも効果的だが、サードパーティーデータの特性を生かして期待される活用フェーズは、やはり「実際のペルソナ」をもとにした新規顧客の獲得だ。
そのため、折り込みチラシやDMの戦略で利用されることが多いが、「昨今は、オンラインのターゲティング広告にMosaicを利用する例も増えてきました」と武田氏は説明する。位置情報や移動情報を組み合わせて、ターゲティング広告を配信することで、施策効果の向上を支援しているという。
こうした流れを踏まえ、エクスペリアンジャパンでは、DMP・DSP事業者などのパートナーシップをさらに強化していく構えだ。
さらに、2018年度中には、よりデータを充実させた次期バージョンのMosaicの提供を予定しているという。
「現在、ライフスタイルが大きく変化し、たとえば決済方法ひとつとっても、現金やクレジットカードにとどまらず、様々な電子マネーが普及しています。また消費構造においても、インバウンドが進んだことで、これまでとは違うペルソナが生まれる可能性もあります。こうした変化を踏まえながら、どのようなデータや指標を追加していくか、議論しているところです」(荒氏)
どんな進化になるにせよ、Mosaicが一貫して目指しているのは、サードパーティーデータの有効性とその効果を実証し続けることだという。顧客理解の限界突破のためにMosaicが有効な解決策の一つとなるのは間違いなさそうだ。真の顧客理解に悩む企業ならば、一度トライしてみる価値は十分にあるだろう。
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