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「NewDays」と「異世界」、話題のコラボはなぜ実現したのか? その真相に迫る!

 2017年12月から2018年3月まで、JR東日本リテールネットはNewDays・KIOSKの壁面や屋根上に設定されたデジタルサイネージ「NewDaysビジョン」で4コマの漫画「異世界コンビニNewDays」を放映した。スクウェア・エニックスの漫画アプリ「マンガUP!」とコラボレーションしたこの企画では、“完全新作”の漫画を制作・放映し、作者のファンや広告業界の間で話題となった。本稿では、 プロジェクトを主導したJR東日本リテールネットの綱島慎彦氏と、スクウェア・エニックスの鮫島正太氏、三神孟彦氏へのインタビューを基に、話題のコラボ企画の詳細をお届けする。

活発化するデジタルサイネージ広告の活用

 昨今、拡大している広告市場の一つに、デジタルサイネージ市場がある。現にここ数年で、電車の中や駅、屋外、店頭など、日常生活の至るところでデジタルサイネージを見かけるようになった。設置場所だけでなくコンテンツも多様化しており、メディアによるコンテンツの掲載や天候情報など、広告に限らず活用の幅を広げている。

デジタルサイネージ国内市場規模推移と予測(参照:矢野経済研究所)
デジタルサイネージ国内市場規模推移と予測(参照:矢野経済研究所)

 数字からデジタルサイネージ市場を見てみると、2016年度のデジタルサイネージ広告の市場規模は600億8,100万円で、前年度比121.9%の成長を記録場所によっては、キャンセル待ちが発生するなど、デジタルサイネージへの広告出稿は活発化している。

 またその裏では、デジタルサイネージ活用への需要に二極化の傾向が見られるという。片方は、手軽かつ安価にデジタルサイネージを導入したい層。もう一つは、スマートフォンなどとの連携やマーケティングデータの取得など高付加価値な導入を望む層だ(参照:矢野経済研究所)。

 スマートフォン連携、IoT活用などコミュニケーションツールとしての需要拡大も進む中、次世代デジタルサイネージとして「NewDaysビジョン」に興味を示し、いち早くコラボレーション企画を実施したのが、かのスクウェア・エニックスだった

「NewDaysと異世界」謎のコラボはどのように企画されたのか

(右)JR東日本リテールネット 営業本部 営業戦略部 ニューデイズビジョン課 課員 綱島慎彦氏(中央)スクウェア・エニックス 出版ビジネス・ディビジョン マネージャー 中川健氏(左)スクウェア・エニックス 出版ビジネス・ディビジョン コミック編集部 三神孟彦氏
(左)JR東日本リテールネット 営業本部 営業戦略部 ニューデイズビジョン課 綱島慎彦氏
(中央)スクウェア・エニックス 出版ビジネス・ディビジョン 出版営業部 マネージャー 鮫島正太氏
(右)スクウェア・エニックス 出版ビジネス・ディビジョン コミック編集部マンガUP!編集部 三神孟彦氏

――JR東日本リテールネットが運営するJR首都圏各駅のNewDaysとKIOSKに設定され、一般広告や店舗の取扱い商品の広告を放映しているデジタルサイネージ「NewDaysビジョン」で、2017年12月、「異世界コンビニNewDays」というオリジナルの4コマ漫画が放映されました。これは、広告媒体である「NewDaysビジョン」と、スクウェア・エニックスの漫画アプリ「マンガUP!」のコラボレーション企画だと聞いています。

 また、「なぜ完全新作のオリジナル漫画を『NewDaysビジョン』で放映することができたのか?」と広告業界では驚きの反応があったとも聞きました。今日はこのコラボ企画について、取り組みの詳細を伺っていきます。初めに、皆さんの自己紹介をお願いします。

綱島:JR東日本リテールネットの綱島と申します。主に「NewDaysビジョン」の販促を担当しております。具体的には、お客様が興味を引く情報コンテンツの開発、Web・Twitterなどとの連携、企業様とのコラボレーションなどを通して「NewDaysビジョン」を魅力的な広告媒体にすることが私のミッションです。

鮫島:鮫島と申します。私は、弊社スクウェア・エニックスから提供している出版物の広告宣伝マネージャーを務めており、WebやSNSを使ったプロモーション、書店でのコミック本の販促などを担当しています。

三神:スクウェア・エニックスで「マンガUP!」の編集を担当しております、三神です。私は、アプリの運営を中心に掲載作品の企画、担当作品の編集を行っています。今回の「異世界コンビニNewDays」の編集も私が担当しております。

――コラボレーションの具体的な内容に入る前に、改めて「NewDaysビジョン」の概要について教えてください。

綱島:弊社が運営するコンビニNewDaysと駅売店のKIOSKの壁面や屋根上に設置されている「NewDaysビジョン」は、JR東日本各駅に現在900台以上あり、全てネットワークで繋がっています。その中で標準70インチの大型サイネージ202台を広告媒体として販売しており、2016年10月の販売開始から既に140社以上の企業様にご利用いただいております。

 エキナカは縦型のサイネージが多い中、希少な横型のワイドタイプでかつ音声でも表現できるため、広告主様がお持ちのテレビCMやWeb動画をそのまま活用したり、テレビ番組の宣伝やイベントの告知など音を強調したい広告などでも、ご利用いただいております。

 そして「NewDaysビジョン」の最も大きな特徴は、やはり広告接触人数の多さです。2018年4月からは12台増設して、首都圏JR駅の113駅に214台が設置されることとなり、1日当たり約1,400万人になると計算しております。商品は1枠15秒220万円のネットワーク(週売り)、駅毎に設けている単駅の放映枠(月売り)、 1社貸切のスペシャルビジョン(週売り)の3種類があります。

完全新作かつ知名度の高い作家で企画を進める難しさ

――広告媒体で既存のコンテンツではなく“新作の”漫画を発信するというのは、あまりない取り組みだと思います。そもそも、今回のコラボレーションはどういった経緯で始まったのですか?

綱島:弊社とスクウェア・エニックス様との初めての取り組みは、2013年12月に開催されたコミックマーケット85に合わせたキャンペーン展開でした。会場アクセスの途中にある主要駅の店舗で限定イラストを使用したノベルティを配布し、限定グッズも販売しました。

鮫島:それ以来取り組みを続けている中で、綱島さんから「『NewDaysビジョン』で、漫画を使って何か新しくて楽しいことをやりたい」とのお話がありました。そこで「マンガUP!」の編集部にこの話をしたところ「おもしろいからやりましょう!」と快諾してもらえたので、実現へと進んだ形です。

――約4年前から、NewDays店舗とのコラボレーションを手がけていたことがきっかけで今回の施策が実現したということですが、プロジェクトはどのように進んだのでしょうか?

鮫島:「NewDaysビジョン」で、スクウェア・エニックスの作品を使ったプロモーションを実施するというところまでは話がとんとん拍子に進みました。しかし、放送するコンテンツを既存作品から持ってくるのか、完全新作でコンテンツの作成から取り組むのかを検討するのに、1ヵ月ほどかかりましたね。

三神:「マンガUP!」では、既存と新作を含めて、常時100タイトル超の作品を公開しています。当たり前ですが完全新作となると、作者を見つけて企画するところから始まります。既存のゲーム・小説などの原案があるものをコミカライズするより、ハードルは高くなります。

 今回の取り組みは、大きなプロジェクトであることと話題性も狙えることから、完全新作かつ知名度のある作家様に依頼し「異世界コンビニNewDays」をなんとか企画・実現できました

綱島:かなり頑張っていただいて、完全新作を使った新しいコラボレーションを実現できた時には、スクウェア・エニックス様のコンテンツメーカーとしての心意気を感じました。

鮫島:当社はゲームのタイトル開発や漫画、攻略本などを制作して世に送り出すことをビジネスにしています。ですから、常に新しくおもしろいものを作りだしたいと考えているスタッフばかりなんですね。

――思いが強かったとはいえ、完全新作で企画を進めるとなると、相当の時間がかかるのではないですか?

三神:今回の企画が始まったのは、2017年の2~3月頃でした。通常、完全新作を制作するとなると、実際にコンテンツを掲載できるまでに1年以上の期間を要します

鮫島:「マンガUP!」は2017年1月にリリースしました。実は、コンテンツも拡充してくる11月頃のタイミングで、テレビCMを含めた大規模なプロモーションを行う計画がありました。そこで、そのプロモーションの一環として、社内で話をまとめて実現にこぎつけました。これが単なるコラボレーション企画だったら、実現は難しかったと思います。

反響はいかに? UUやDL数などの施策結果

――2017年12月に、「NewDaysビジョン」と「マンガUP!」で完全新作の4コマ漫画の掲載を開始されました。反響はいかがでしたか?

コラボレーションによりオリジナルで制作されたマンガ「異世界コンビニNewDays」
コラボレーションによりオリジナルで制作されたマンガ「異世界コンビニNewDays」

綱島:やはりこういったプロモーションで完全新作の漫画やアニメを扱えるケースは滅多にないので、我々がお取引している広告代理店の方からよく聞かれましたよ。「どうして、あんなことができたの?」って(笑)。それから社内でも、漫画やアニメ世代の若手に好評でした。

鮫島:現在「異世界コンビニNewDays」の総ユニークユーザー数は6万4,000人以上で、約1万1,000人の方にブックマークに入れていただいています。他の4コマ漫画に比べても、倍近い数字です

 12月は、平行して他のプロモーションも行っていたので正確な数字は掴めませんが、放映のタイミングでアプリのダウンロード数も伸びました。ユーザーからは“異世界”と“NewDays”の組み合わせが新鮮という声が数多く寄せられたことから、反響の大きさは感じました。

綱島:プレスリリース後の掲載実績は、ネットニュースを中心に8媒体でした。Twitter上のツイート数は360件(2017年12月8日~2018年2月6日)、表示件数は114万件以上で、通常の3~4倍です。

 また、スクウェア・エニックス様によると「異世界コンビニNewDays」の公開初日の閲覧者数は18,790人、現在では11万人を超えているそうです。他の4コマ漫画では、公開初日の閲覧者数は50~5,000人程度であることから「NewDaysビジョン」の首都圏JR105駅192台のサイネージネットワークで放映したことが効果的であったのだろうと自負しております。

 そして今回の企画では、「NewDaysビジョン」の魅力度を十分に引き上げることができたと思います。スクウェア・エニックス様にとっても「マンガUP!」の認知拡大、新規ユーザーの獲得に加えて、ブランディング施策としての効果も発揮できたのではないでしょうか

どうしたって目に入ってしまう存在感だけじゃない、+αの強み

――鮫島さんは「NewDaysビジョン」の強みや魅力について、どのように感じられていましたか?

鮫島:どうしたって目に付いてしまう存在感は、一つ大きな魅力でしょう。見ようとしなくても目に入ってしまうというか(笑)

 また、広告媒体と売り場が連動していることも強みだと思います。広告で目にした商品を目の前の店舗ですぐに手にすることができるという点は、プロモーションとして強力な武器になると考えます。

 弊社もその魅力を活用するため、12月の4コマ漫画放映に合わせて「マンガUP!」のテレビCMで使用した動画を「NewDaysビジョン」でも放映しました。新宿・池袋・秋葉原・横浜という主要駅で流すことで、想定されるアプリユーザーが多い駅を選び、合わせて最も媒体前の通行客が見込める新宿駅東口のスペシャルビジョンで貸し切り放映することで、非常に印象に残るPRができました。

綱島:確かに、広告で目にしたものを実際に店舗で購入できるというのは、お客様の立場からしても嬉しいですよね。気になった商品をその場ですぐに購入することができるわけですから。取り扱い商品の広告主様のご利用ももちろんですが、店舗で販売されていない商品やサービスの広告も放映しています。

 テレビ局、不動産、金融、ホテル、スポーツクラブなど、様々な企業様に「NewDaysビジョン」をご活用いただいております。

明治の「ザ・チョコレート」のPRでは記録的な売り上げ増も!

新宿駅東口の「NewDaysビジョン」にて
新宿駅東口の「NewDaysビジョン」にて

――今後は、「NewDaysビジョン」のどのような活用を考えていますか?

三神:新しい作品を発信するプラットフォームとしての「NewDaysビジョン」には、大きな魅力を感じます。「NewDaysビジョン」では、テレビCMと同じく15秒または30秒の映像を流すことができるのですが、通学や通勤で同じ「NewDaysビジョン」を毎日定期的に目にするユーザーが多くいるはずです。なので、訴求効果やすり込みの効果も高くなるではないかと考えています。

 限られた期間で、強烈に印象付けたいタイトルや作品のプロモーションには、最適な広告媒体です。

綱島:ありがとうございます。最近では、JR駅の近くに本社を構える企業様がテレビで放映したCMや自社PR動画などを「NewDaysビジョン」で放映することで、従業員の士気を上げるなどといったご活用の事例も増えてきました。おっしゃる通り、毎日通るエキナカで「繰り返し伝えたい」というニーズには様々な形で応えることができると思います。

 広告媒体と売り場が近いという特徴は、多くのメーカー様に認識いただいています。売り場で効果検証できる点に魅力と効率性を感じ、繰り返し出稿いただいている広告主様もいらっしゃいます。

 特に、昨年10月に行った明治様の「ザ・チョコレート」をPRした際には、NewDays全店でネットワーク放映前の約3.5倍、スペシャルビジョンで貸し切り放映した東京駅のNewDaysでは放映前の約30倍の売上を記録しました

 今後もこういった「NewDaysビジョン」の特長を最大限活かし、多くの広告主様のご要望に応えながら事例をよく研究して、有効な活用方法を提案してまいります。

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この記事の著者

浦野 孝嗣(ウラノ コウジ)

 2002年からフリーランス。得意分野は経済全般のほかIT、金融、企業の経営戦略、CSRなど。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/03/28 11:00 https://markezine.jp/article/detail/28035