※本記事は、2018年4月25日刊行の定期誌『MarkeZine』28号に掲載したものです。
前ピークの100万台を軽々超えて750万台へ
富士フイルム株式会社イメージング事業部
インスタント事業グループマネージャー 高井 隆一郎(たかい・りゅういちろう)氏
2001年に富士フイルムに入社。店頭フォトセルフキヨスクの立上げ事業に関わり、2004年にイメージング海外営業部に異動。2009年から2017年までの8年間はドイツに駐在し、欧州販社の本部としてイメージング製品全般のマーケティング・プロダクトマネジメント実務を統括。2017年4月よりイメージング事業部にてインスタント商品全般の企画・マーケティングを統括する。
――この20年ほどで、カメラや写真のあり方は大きく変わりました。そんな中、チェキは最初のブームが去ってから見事にV字回復を遂げています。まず、その間の販売状況の変遷をうかがえますか?
チェキを最初に発売したのは1998年、まだカメラ付き携帯電話が登場する前のことでした。若年女性層を中心に受け入れられ、ピーク時は100万台を超えています。それが2000年代前半にカメラ付き携帯電話が一気に広がり、そのトレンドと反比例するようにチェキのブームも下火になってしまいます。
それが、2007年あたりから少しずつ販売台数が伸び始めて、2011年に以前のピークだった100万台を突破しました。以降、順調に売上を伸ばし、2017年度は目標にしていた合計750万台をほぼ達成できる見込みです。
――再び伸びてきたという2000年代後半は、むしろスマートフォンの拡大期と重なりますが、生活者にとっての写真やカメラのあり方はどう変わってきたとお考えですか?
我々は元々カラーフィルムのビジネスをメインとしていましたが、かつて写真はフィルムカメラで撮り、現像してプリントにし、それを整理して保管するという流れが一般的でした。それがデジタルカメラやカメラ付き携帯電話の普及によって、撮ったその場で見られ、データを保存できるようになり、現像する必要性が薄れました。スマホがその流れをより一層加速しました。
一方で、デジタルデバイスが普及するにつれて、チェキのようなプリントの質感や、パッとデータを送って終わりにするのではなく、モノに触れ、形で手渡すといった、アナログ的な価値が見直され始めたのも事実だと考えています。スマホの拡大によってさらに落ち込むのではなく、むしろ少しずつ伸びてきたのだと考えています。