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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

テレビのビッグデータを知る(前編)

視聴データとは?

――回答協力:スイッチ・メディア・ラボ サービスプランニング部 加藤 隆志氏

テレビ×デジタル補完と最適化の二大活用

――御社は2014年、テレビ視聴データ分析サービス「SMART」の提供を開始されました。現行のテレビの活用に、デジタルの概念を取り入れた背景をうかがえますか?

 2018年2月に電通が発表した「2017年(平成29年)日本の広告費」では、2017年の総広告費6兆3,907億円のうち「テレビメディア広告費」は1兆9,478億円を占めており、依然としてテレビ広告費は巨大です。

 一方「インターネット広告費」は1兆5,094億円(前年比115.2%)と大きく伸長しました。ネット広告の特徴のひとつは、データに基づいてユーザーをターゲティングして配信し、反応を見ながら施策をチューニングしていくことです。

 テレビの視聴データは「テレビCMのプランニング最適化と出稿実績の把握」が本来の使い方ですが、デジタルも並行して使うとなると、比較に使える情報や指標が必要です。ネット広告の常識をテレビCMの施策に応用したいと考える企業も増えています。現在、テレビとデジタルを組み合わせた活用の二大トレンドとして「テレビCMの補完に動画広告を使う」方法と、「テレビとデジタルを俯瞰してメディア配分を最適化する」方法が主流です(図表2)。

図表2 テレビとデジタルを組み合わせた活用の二大トレンド
図表2 テレビとデジタルを組み合わせた活用の二大トレンド

――SMARTについて、詳細を教えてください。

 SMARTは、独自に開発した計測機器を関東1都6県の2,000世帯に設置し、約5,000人の個人を対象に、秒単位で測定したテレビ視聴データを分析します。サンプル数の多さや豊富な分析属性、ほぼリアルタイムにネット上で分析できることなどが特徴です。2018年度内には、タイムシフト視聴データやビューアビリティを示す視聴質データの提供も開始する予定です。

 以前はF1層、M2層といった大まかな分析属性を元に行われていたテレビCMのプランニングを、「利用沿線」「世帯年収」「自家用車の所有の有無」「6才以下の子どもの有無」といった詳細なデータを抽出し、自社のターゲットの視聴が多い時間帯や番組、いわゆるターゲット含有率などを分析して、施策に活かすことができます。

ターゲット含有率をデジタルでの補完に活用

――「ターゲット含有率」という指標は、ここ数年で聞かれるようになりました。注目されている背景と、その活用について教えてください。

 背景には、単身や共働きの増加など、世帯人口構成の変化があります。かつてのようにテレビCMが幅広い世代に届くものとは限らず、10〜30代など若年層にはリーチしにくくなっているため、詳細なリーチを把握するために、ターゲット含有率は有効です。

 たとえば図表3-1/図表3-2は、ある飲料のテレビCMが各セグメントに何回リーチしたかを示したものですが、1回もテレビCMが届いていないF1層と、F2層より上の世代の差は顕著です。こういった実態をデータで可視化し、テレビではリーチしにくい層を認識して、その補完策としてデジタル広告を活用するといった判断を下すことができるようになるのです。

図表3-1 属性別のフリークエンシー構成比
図表3-1 属性別のフリークエンシー構成比
図表3-2 セグメント別のテレビCM視聴回数シェア
図表3-2 セグメント別のテレビCM視聴回数シェア

 他に、SMARTで提供している競合分析も、企業に有効に活用されています。広告主・商品ごとに、出稿の量や時期、出稿している局などを把握することで、競合他社の出稿トレンドや商品のターゲット、出稿戦略を読み解くことができます。

――こういった詳細なテレビデータを活用することで、どのような展望が描けますか?

 ご存じのとおり、2018年4月より、テレビのスポットCM取引の指標が世帯視聴率から個人視聴率とタイムシフト視聴を加味した指標に移行しました。これはテレビ放送の広告取引が始まって以来の大きな変更で、テレビデータの活用はまさに過渡期です。米国では既に、プログラマティックTVの時代が始まりつつあります。日本で一般化するには一定の時間を要するでしょうが、将来的にはテレビCMのターゲティングだけでなく、Webのデータ、リアル店舗の来店データ、購買データまでがテレビのデータと連携し、より統合的なデータマーケティングが可能になるのではないでしょうか。

――御社が提供するデータは、どのような観点で捉えれば、テレビとデジタルの施策をつなぐマーケティングデータになり得るのでしょうか?

 テレビ番組やテレビCMが、商品ターゲットにどのくらい見られ、どのような態度変容が起きたのか。企業が知りたいこうした項目に対して、視聴率だけで答えるのは難しいですが、今後はリーチしたターゲットのプロフィール、広告への反応、実際の行動などのデータをもっと精緻に取得して、従来のデジタルマーケティング指標と同様に「インプレッション、ユニークユーザー(推定リーチ人数)、離脱、コンバージョン」などをわかりやすく整備することで、ネットやその他メディアと共通で広告プランニングに使えるデータとして指標化していけると考えています。さらにそのデータを、ネットの検索数やSNSの反応数はもちろん、売上や店頭情報など他の各種データと併せて、企業が導入しているBIツールに連携して表示することでリアルタイムに分析できる。そんな日は、そう遠くないと感じています。

百分率表示は四捨五入の丸め計算を行っており、合計が100%とならない場合がある。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/07 11:21 https://markezine.jp/article/detail/28415

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