定住人口を増やすための取り組み
――最近の市の目標は?
井崎:10年以上前から始めた「子育てに優しいまちが、発展するまち」への取り組みと並行し、今は「子供のそばで働けるまちづくり」に注力しています。
具体的には、都心まで通勤できない方のために、流山市内にあるサテライトオフィスやリモートオフィスで働いてキャリアを積めるようにするという市民の取り組みを支援しています。また、今年5月に常磐自動車道の流山ICの近くに巨大物流センターができるのですが、ここに企業内託児所を設置してもらい、子供を預けながら働ける環境作りも進めています。
――その他、定住人口増加に向けて取り組んでいることを教えてください。
井崎:子育て環境の充実に加え、教育環境と住環境の向上に力を入れています。教育の質の向上、特に英語教育については注力しており、実際英語力調査でも、全国平均と比べて流山市の児童の能力はかなり高いという結果が出ています。
住環境の向上は、不動産価値を下げないためにも重要です。「良質な環境があることでずっと住み続けたいという気持ちが芽生えます。結果として、不動産価値が下がらない。こうして子育て環境、教育環境、住環境の向上に努めることで、住民の満足度も上がりますし、実際に居住者の永住意向率が80%以上という結果が出ています。
マーケティング課では「選択市民」という指標を作り、転入者の中で「流山市への転入を第一希望にしている人」を調査しているのですが、この選択市民の割合も上昇しています。十数年前には、考えられなかったことですね。
流山市のブランド確立フェーズへ
――マーケティング課の具体的な業務内容について教えてください。

藤原:今流山市は、認知度やイメージ向上というマーケティングフェーズから、市のブランド価値向上とあわせて流山市の都市ブランドの確立を目指すブランディングフェーズへと移りつつあり、そのための施策を市長の下で企画立案し実行しています。
河尻:たとえばポスター作りもマーケティング課の業務の1つです。制作は外部に発注していますが、その中から良いものを選びディレクションしていくのは、市長以下私たちの仕事です。
2010年から首都圏向けのPR広告として「母になるなら、流山市。」というコピーを入れたポスターを作っています。普通自治体の標語と言えば、「子育て世代に優しいまち」など、自治体自身が主語になるものが多いのです。そこで私たちは、より共感を得るため「(私が)母になるなら、流山市。」というように、市民を主語にしたコピーを選びました。
もう1つ特徴的な点は、この広告は市外向けだけでなく、市内の熱量を上げる効果もあることです。広告を始めた当初は、参加してくれるモデルの方を探すのに一苦労でしたが、今はこのモデルが注目されるようになったため、自ら応募してくる方もいます。人に見られることで、モデルの方に流山市のアンバサダーとしての意識が芽生え、知名度も上がり、中には起業する方もいるほどです。
