「炎上」から「称賛」へ、風向きを大きく変えた事例
では、ここから実際に炎上から柔軟な対応で高い回復力を見せた事例を3つ紹介します。
事例1:無印良品 「ごはんにかける ふかひれスープ」販売中止運動
1つ目は、2013年の無印良品の「ごはんにかける ふかひれスープ」販売中止運動に対する企業側の対応です。この事例では、「準絶滅危惧種であるヨシキリザメをふかひれ目的で乱獲している」との指摘から、販売中止運動が展開される事態が起こりました。
当初企業は静観していたものの、その後に対応を変えて「準絶滅危惧種とは、国際自然保護連合(IUCN)でも低リスクと位置づけられており、ヨシキリザメはさらにその下位に位置する」「主にマグロ延縄漁で水揚げされたものを使っている」「身は練り物や健康食品、工芸品など様々なものへ利用されているためFinning(ヒレだけを取るためのサメの殺りく方法)ではない」などといった説明を丁寧に行ったうえで、「気仙沼の伝統的地場産業の一助になることから販売を継続する」と発表しました。
単なる誤解であれば静観することも1つの方法です。しかし、この場合は企業側からの丁寧な説明により、逆に「徹底した素材管理体制」や企業としての「三方良し」の姿勢が生活者に伝わることとなり、称賛の声が上がるまでに状況が回復しました。
本件では、炎上開始から鎮火まで約1万のエンゲージメント数(※)が発生しましたが、筆者が確認する限りその約半分が好意的なコメントでした。
(※)エンゲージメント数とは
いいねやシェア、コメント、リツイートなどFacebookとTwitterでの総アクション数に加え、対象コンテンツについて取り上げた記事に対するSNS上における口コミなどの総数。スパイスボックスの独自ツールにて計測。
事例2:チロルチョコ 「商品への芋虫混入疑惑」
2つ目は、これも2013年に起きたチロルチョコの芋虫混入疑惑に対する企業対応です。あるTwitterユーザーが、「チロルチョコに芋虫が入っていた」とインパクトのある画像を投稿し即座に炎上しました。しかし、その際の企業対応は極めて冷静かつ迅速なものでした。
ユーザー投稿の3時間後には、「お騒がせしており申し訳御座いません」とのコメントとともに、該当商品の最終出荷が半年前であり、画像の芋虫が推定生後30日から40日であることから商品購入後に混入されたことを示唆するツイートを行いました。
本件では、問題発生から3時間という極めて迅速な対応と的確な説明が、炎上の拡大を未然に防ぐことにつながりました。
事例3:龍角散 「ドーピング騒動」
3つ目は、昨年起きた、龍角散の「ドーピング騒動」における企業対応です。リオデジャネイロ五輪に日本代表として出場したある選手が、自身の勘違いから世界反ドーピング機関(WADA)が定める禁止薬物リストに新たに加わった物質が「龍角散ののどすっきり飴」に含まれている、とツイートしました。
本人はすぐに誤りに気づきツイートを削除しましたが、情報は瞬く間に広がりました。この時、企業は情報が広がってすぐにサイトで情報を訂正。さらに、“龍角散ののど飴を子どもの頃から愛用している”という選手に対して、「有望な選手。これからも応援していく」と寛容な対応と気遣いを見せたことで逆に“企業の神対応”として知られる事例となりました。
