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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

広告は世の中を進歩させる そこにメディアと広告の信頼性は不可欠

広告を“嫌われ者”にしないために

――では、生活者の変化を踏まえてどのような懸念を抱かれているか、うかがえますか?

 情報があふれる中、またスマートフォンの小さい画面の中で、広告が以前よりも“嫌われ者”になっているともいわれています。

 JAAとして最も避けたいのは、まさにご指摘のように広告が“嫌われ者”になってしまうことです。前述のWFAでも、この5月に「グローバルメディア憲章」を発表し、アドフラウドの撲滅やブランドセーフティーの確保と並んで、カスタマーエクスペリエンスをもっと真剣に考えるべきだと提唱しました。言い換えれば、生活者が望まない形で広告を出して嫌われないように、警鐘を鳴らしたわけです。

 アドブロックも米国ではかなり浸透してきています。広告として、どんな人にどのような情報をオファーすべきか、不快でない広告を、適切なターゲットとタイミングを計り、投入する必要があると思います。

 もうひとつ懸念しているのは、メディアの信頼性の低下です。メディアの信頼性は、間違いなく広告の信頼性ともつながっています。新聞広告やテレビCMはメディア側による出稿企業の選別や広告の考査があります。その一方でネットメディアがこれだけ増え、アドネットワークのような広告配信が一般的になってきています。そのため、我々はもっとメディアの信頼性に対する意識も高めるべきだと感じています。

業界3団体の協力でデジタル広告健全化へ

――では、それらの懸念を払拭するために、どういった取り組みをされているのでしょうか?

 前述のデジタルメディア委員会で勉強と啓発を続ける一方で、より動きを大きくするために、昨年9月に当会と日本広告業協会(JAAA)および日本インタラクティブ広告協会(JIAA)の業界3団体による協議会を組織しました。現在、毎月ミーティングを設けて情報共有と各種対応策の検討を進め、3団体の連名による宣言なども出し始めています。

 たとえば先の6月には、海賊版サイトへの対応策を強化する旨の文書を発表しました。こうした違法サイトに広告が配信されると、違法業者の資金源になってしまうので、広告主にはそれを断つことが求められます。

 例の漫画村の問題を受けた、内閣府知的財産戦略本部のタスクフォースの議論の中で、「広告が資金源になっているのであれば広告自体を規制しては?」との懸念が投げかけられました。この指摘に対しては、つい先日、タスクフォースの会議に参考人として出席し、今後の取り組みについて業界団体が自主的に取り組んでいること、広告規制にはおよばない旨、プレゼンをしてきました。今年2月にコンテンツ海外流通促進機構(CODA)から悪質な著作権侵害サイト等のリストが提供されるようになったことを受け、団体間で協力して不正なビジネスを根絶するよう努める考えです。

 JAAとして関心が高いテーマは、やはりブランドが大きな資産でありビジネスの源泉ですので、ブランドセーフティーを担保して生活者との関係を構築することです。そして、アドフラウドです。大切な広告費を詐欺に投じている現実は許せません。ただ、これらの問題も我々だけでは解決できません。業界3団体の会員以外の企業など、皆で協力し、デジタル広告の健全化とそのための仕組みを構築してゆかねばと思っています。まだ模索中ですが、第三者機関の設置や業界共通のガイドライン策定なども視野に入れています。

メディアの信頼性と広告の信頼性は両輪

――ネットメディアを主軸にしているMarkeZineとしても、ネットに不正なメディアが増え、メディア全体の信頼性が損なわれたりするのは本意ではありません。正しいメディアに健全な広告が出稿されることで、好循環が生まれるといいですよね。

 その通りですね。この数年でフェイクニュースの問題も噴出しましたが、その影響もあり、海外では新聞を母体とするネットニュースメディアが様々な取り組みに挑戦しているようです。コンテンツの質を高め、メディアの信頼性を増して、良質な広告を獲得するとともに、ユーザーの購読料を上げることまでやっています。ネットメディアは長らく広告モデルがスタンダードでしたが、これだけ生活の中に広がったことで、定期購読モデルも受け入れられるようになってきているようです。そういったチャレンジに、注目しています。

 先ほど若年層にも触れましたが、我々の世代では常識と思いますが、「新聞には信頼性の高い広告が載っている」といったことは彼らにはもはや通用しないのではないでしょうか。間違いなく、新聞よりネットメディアのほうが彼らにとって存在が大きいので、やはり我々はこの先広告をどう届けていくべきかをもっと考えるべきだと痛感します。

――この先という点でいうと、SNSで情報が拡散し双方向のコミュニケーションも当たり前になっている時代ですので、広告自体もマス広告の一方向的な情報提供ではなく、双方向的な要素を加味して設計することが理想になっていくように感じます。広告主は、今後どういった姿勢で生活者とコミュニケーションを取ることが望ましいのでしょうか?

 おっしゃるように、もはやブランドメッセージをマス広告中心に直球で発信し、そのまま受け止めてもらえる時代は終わったのでしょう。例えば米国のペプシは、「ブランドから何かを発信するやり方よりも、文化の中に溶け込んだ存在になりたい」という考えのもと、ネットワークでつながったユーザーに向けてキャンペーンを実行しました。ペプシはフレーバーのサンプルを6万本配布して10万人のユーザーに直接触れ、延べ1,150万回以上のインプレッションを得たそうです。結果的にユーザーから共感を得たという事例がありました。

 ただ、SNSの双方向性を加味したメッセージングは、一歩間違うと炎上も起こりかねません。ブランドの多くは、発信だけでなくSNSのモニタリングも重視しています。コントロールできないだけに、ユーザーを巻き込みながらメッセージを伝えてエンゲージメントを築くのは、なかなか難しいことだと思います。

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コントロールできないから挑戦しがいのある時代に

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/09/25 13:00 https://markezine.jp/article/detail/29246

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