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定期誌『MarkeZine』特集

勝てるインサイドセールス組織の作り方 先進2社が語る「ハードル」と「成功」の間

営業活動におけるインサイドセールスの効果

――具体的な効果はいかがですか?

水谷:昨年の10月、体制を変えたことで、よりいいサイクルが生まれています。具体的には、営業部隊の目標とインサイドセールスのKGI(KeyGoalIndicator:重要目標達成指標)を合わせ、これを達成するために営業とインサイドセールスのフォーメーションを1対1にしました。人数が違うので完全な1対1ではないのですが、これが逆に功を奏し、「インサイドセールスが付いた営業の成績は良い」という実績が生まれました。そのため営業側から逆に「自分にもインサイドセールスを付けてほしい」とリクエストが来るくらい、インサイドセールススタッフの価値が上がったのです。

 インサイドセールス側も受注までがKGIになるので、逆に営業側から製品について詳しいレクチャーを受けるようになっています。

小林:営業とインサイドセールスは、ともすると「商談化する営業が偉い」という上下関係ができやすいと言われていますが、HDEさんはしっかりとした協力体制が出来上がっているわけですね。

 当社においても、立ち上げ時はやはり上下関係の傾向がありました。その風向きが変わってきたのは、立ち上げから1年ほど経った頃でした。「商談の確度を上げるには、CRMにデータをきちんと入力して振り返りができるようになっていることが大切だ」という実績が生まれ、私が社内で表彰されたのです。そこで改めてデータの重要性が認識され、CRMとして使っているSalesforceに営業担当が商談の流れを入力するようになりました。もし入力漏れがあったら、インサイドセールスから「この商談は追えていますか」とフォローするようになっています。

営業、インサイドセールスの目標をどう設定するか

――フィードフォースさんでは、目標設定はどう行っているのでしょうか?

小林:営業とインサイドセールスではそれぞれ目標設定が異なるので、HDEさんのような一蓮托生ではありません。インサイドセールスで掲げている目標は、シンプルに商談作成数にしています。もちろん、単にリードを大量に送ればいいというわけではないので、Salesforceで商談の進み具合を追って、「送った直後に案件ロストになっていないか?」を健全性指標としてサブ目標に据えています。

――HDEさんは、受注件数以外にどのような数値を目標に置いていますか。

水谷:これも昨年10月から、KGIとKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)の2つを置くようにしました。

 インサイドセールスの場合、半年で達成するKGIとして、受注件数のほか、商談件数、アポ件数、それに金額の4つの数値があり、それを管理するためにデイリーでKPIを定めています。具体的には「コールが20件、アポもしくは案件化のいずれかが1件」というKPIです。こうすることで、たとえば「アポが1件取れれば、残りは次の日のための準備をする」「なかなかアポが取れないから、コールの数や質を変える」といったように、それぞれが効率的なやり方を追求するようになります。

小林:中間のKPIは大切ですよね。先週の成績が悪ければ、悪かった理由を分析して解決策を考えますし、良ければ良いで、「あれが良かったんだな」とわかりますから。だから私は、振り返りができることが大事だと思っています。うちも商談前にシートを作成するようにしているのですが、これをやり始めてからやはり動きが非常に良くなりました。

新たな体制作り、何から着手すべきか?

――インサイドセールスを立ち上げる場合、どこから取り掛かるべきでしょうか。

小林:まずは基準を設けることです。これは自分の経験から言えるのですが、どこからが案件で、どこから商談になるかは、個々人の感覚に左右されます。でも感覚だと振り返りも仮説検証もできないので、そこで基準が必要になります。

 たとえば「何ヵ月以内に具体的な契約の話になりそうで、かつ当社のソリューションに合う案件」といったように、インサイドセールスと営業で共有する基準を設けます。この基準で情報を整理することで振り返りができるし、そこからインサイドセールスの良さを実感できるようになると思います。

水谷:加えて、インサイドセールスのミッションを明確化することも必要ですね。インサイドセールスというのは、日本企業にとって新しい概念なので、ミッションや制度をきちんと決めないと、役割が不明確になってしまいます。極端な話、アポ取りに特化した結果、アルバイトだけになってしまうパターンも珍しくありません。

 インサイドセールスは売上を上げる中枢を担うため、生半可な部隊では通用しません。だから経営層やマーケティング部門長、営業部門長の間で足並みを揃え、ミッションを明確化して運用する必要があるのです。

――よく、インサイドセールスはマーケティング側に置くべきか、営業側に置くべきかという議論もありますが、これについてはいかがですか。

小林:私の場合はマーケティングの下でスタートしました。マーケティングやインサイドセールスは、リードを温めて育てるという農耕型タイプの仕事です。私も営業だったので実感としてわかるのですが、営業はハンター型です。月の後半は商談に集中したいので客先に足を運びますが、一方で継続してフォローするということは苦手です。その苦手部分をインサイドセールスが補いながら一緒に頑張る形が一番いい。

 ただ、完全にマーケティングの下だと、自分が作ったリードが商談まで流れていくのがイメージできない可能性もあります。なのでベストな形は、マーケティングと営業の間に立つ「中央」でしょうね。

水谷:インサイドセールスに一番情報が集まりますからね。うちの場合は、経営層がインサイドセールスの重要性を理解したうえで、セールスとマーケティングのマネージャーがインサイドセールスを見ている形になっています。インサイドセールスはアポ取りだけでなく、営業に対してもデジタルネイティブな営業活動を実現するため教育するという重要な役割があるので、そのためにも2つの部門がそれぞれ関わる体制をとっています。これを「営業3.0」と呼んで全社で共有し、そのカルチャーを作り上げましたが、ここに来るまでに3年かかりました。だから「とりあえず流行っているからやってみる」という状態では、かえって混乱を招くだけなので、立ち止まって考え直したほうがいいと思います。

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インサイドセールス設立当初にぶつかった壁と乗り越え方

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2018/09/25 13:45 https://markezine.jp/article/detail/29251

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