「1日に同じ内容が複数チャネルで届く」嫌悪感を払拭
チャネルごとに運用がバラバラだったことも課題だった。オイシックス・ラ・大地 CX室 CX企画セクション 高橋勇樹氏は、「以前はチャネルを統合して運用していなかったため、一人の方に同じ内容の通知が何通も届くことがあり、それが原因でお客様がOisixに嫌悪感を抱くことも多々ありました」と説明する。
こうした背景もあり、大地を守る会などとの経営統合をきっかけにプラットフォーム刷新を決意。同社で設計したカスタマージャーニーに沿ってプラットフォームを選定したところ、「柔軟性やチャネル対応の多さなどから、セールスフォースのソリューションが最適」となり、2017年10月にMarketing Cloud、Salesforce Service Cloud(以下、Service Cloud)の導入を決め、同年11月から導入作業を開始した。
導入に際しては、あらかじめ運用体制を構想しながら進めていった。「週に何十本もシナリオが走ることを考えると、一人ですべての業務を進めることは難しい」という観点から、コミュニケーションの企画と具体的なシナリオ設定はEC事業部、チャネルごとのコンテンツ制作や配信設定は業務部、無事メッセージが配信されたか確認する役目はシステム部、そして成果分析はEC事業部と役割を定め、カスタマージャーニーに沿って適切なタイミングで必要なコミュニケーションを行う体制を構築したという。これと合わせ、Marketing CloudとService Cloudの連携も進めていった。
食に関わるカスタマージャーニーを再設計し、コミュニケーション戦略を立案
そんなOisixのカスタマージャーニーとはどのようなものか。Oisixは、ユーザーが調理に関する手間を省きながらも、豊かな食生活を送れることを「プレミアム時短」という価値と捉え、20分以内に2品作れるレシピ付き献立ミールキットである「KitOisix」を中心とした1週間分の食材を定期宅配している。
最大の特徴は、定期便でありながら、好みに合わせて内容物や量を自由に変更できる柔軟性にある。この理由について、高橋氏は「定期便は、Oisixが自信をもってお勧めする旬の食材を組み合わせて提案しています。ですがお客様にとってみると、届いた食材に不要なものがあれば、それがネガティブ体験になってしまいます。サービスを継続してもらうには、こうしたネガティブ体験につながる要因を取り除き、良い体験を提案するコミュニケーションが必要です」と説明する。そこでユーザー一人ひとりの「食」に関わる行動=カスタマージャーニーを理解し、その行動に沿った適切なコミュニケーションを進めることが重要だという。
食に関わる行動とは、たとえば「今日の献立は何がいいだろう」と考えることや、食材を購入する行為、そして調理し、食べるという行為がある。
Oisixのサービス開始当初、同社は購買フェーズを重視し、販促中心のコミュニケーションを取っていた。企業目線で“売りたい商品”を押すメッセージは、必ずしもユーザーのメリットにつながらないだけでなく、先述したようなネガティブ体験を招く可能性もある。そこで同社は、提案する食材に合わせたメニューの提案や具体的なレシピなどを適切なタイミングとチャネルでプッシュ配信するほか、Oisix体験を向上させるため「注文未変更」をできるだけ減らすコミュニケーションに取り組んだ。