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MarkeZine Day 2018 Autumn(AD)

正しい効果測定が正しい判断を導く ブランディング領域の可視化と改善のリアル

 マーケターなら、誰もが「預かる予算を大きくしたい」と思っているだろう。国内シェアNo.1を誇るマーケティングプラットフォーム「アドエビス」を運営するロックオンのマーケティング部長、デ・スーザ氏は、説明しづらいブランディング領域の効果の可視化とPDCAサイクルの運用を解説し、「正しい判断は正しい計測からしか生まれない」と力説する。9月20日(木)、21日(金)におこなわれたMarkeZine Day 2018 Autumnでは、その具体的な方法が余すところなく語られた。

Web広告費を増やしている企業の3つの特徴

株式会社ロックオン マーケティング部 部長 デ・スーザ氏
株式会社ロックオン マーケティング部 部長 デ・スーザ氏

 ロックオンは、マーケティングプラットフォームの「アドエビス」およびECオープンプラットフォームの「EC-CUBE」の2つがそれぞれの領域でシェアNo.1を獲得するなど、マーケティング支援において高い実績を有している。

 同社マーケティング部長を務めるデ・スーザ氏は、様々な企業で16年にわたってWebプロモーションに携わり、“中の人”つまり事業者内部のプロモーション実務責任者としての経験が厚い人物だ。

 昨年、同社は約1,500人近くのデジタルマーケティング実務者に対し、Web広告費に関する調査を実施。そこに表れた赤裸々な実態を元に、Web広告費を増やせている企業は「視点が長期的/一人あたりの最終的な獲得コストを見通せている」といった特徴があることを突き止め、講演にて紹介した(参考記事)。

 今回はその結果からわかることを踏まえて、具体的にコンテンツマーケティングをどう改善できるか、具体的なPDCAとともに詳しく解説された。

 まず昨今のプロモーション事情の変化について、デ・スーザ氏はその背景に「ユーザー動線の複雑化」を挙げる。かつては検索を機にサイトへ誘導できていたが、今はユーザーが検索エンジン以外にSNSやオウンドメディアなど多様なメディアに接触しているため、それにともなってプロモーションの注力点もSEMを中心とした顕在層の獲得から、SNSマーケティングやコンテンツマーケティングなどブランディング施策による潜在層の発掘へと移っている。

講演資料より抜粋、以下同
講演資料より抜粋、以下同

Webプロモーション成否のカギは施策の連動性

 潜在層へのアプローチは対顕在層よりもずっと難しく、苦戦している企業が多いのが現状だ。「その大きな理由は、数字で説明するのが困難なこと」とデ・スーザ氏は指摘する。だが、このブランディング領域でも、各施策を細かく評価することで、ロジカルにPDCAを回して改善し効果を高めることができる。

 前提としてその調査結果を共有すると、Web広告費が増えない企業はプロモーションの設計が短期思考で、直接の獲得効果がある媒体をCPAやCPCで評価する傾向があった。いくら使って何件獲得、という入り口と出口はわかっているものの、施策を一連のつながりとして詳細に分析できていなかった。

 「逆に広告費を増やせている企業は、メルマガ登録や特定ページの閲覧などにCVポイントを設定し、見込み顧客の確保に注力していました。獲得直前しか見ないのと違って、長期的なプロモーション設計の下に、潜在顧客の発掘・育成から始めているといえます」。

 さらに広告費を増やせている企業には、次の3つの特徴があった。まず、リーチの新規率やサイト来訪歴を取得できていること。次に、アトリビューション分析によって間接効果を把握できていること。最後に、ユーザーごとに接触頻度を制限している/フリークエンシーコントロールを行っていること。

 端的にいうと、Webプロモーションで成果を収め、上層部から評価を得てその予算を増やせている企業は「施策がすべて連動していて、一人を獲得する際の費用対効果や経路を把握できている」(デ・スーザ氏)ということだ。

アドエビスを使ってアドエビスブログを改善

 では、獲得だけでなくブランディング領域も含めて、実際どのように施策全体を連動させればよいのだろうか? デ・スーザ氏は、代表的なブランディング施策のひとつであるコンテツマーケティングをテーマに、まさに自身が担当したアドエビスのブログ「EBIS MARKETING COLLEGE」の改善を事例として紹介した。

 「コンテンツマーケティング“あるある”として、頑張って始めたものの効果を実感できない、あるいは肌感覚では手応えがあっても上層部に説明できず、予算カットの候補に挙がってしまいがちです。当社のブログも1年ほどかけてコンテンツを充実させたのですが、まさにそんな状況に陥り、SEMなど獲得系の施策にばかり注力するようになっていました」と、デ・スーザ氏は以前の課題を話す。

 コンテンツマーケティングの効果を明らかにし、課題を根本的に解決するために行ったのが、意外にも「認知系フィード広告の出稿」だ。そもそも見込み顧客にリーチするためのブログなのに、そのリードを確保するために費用をかけて広告を出すというのは「代理店さんにも『え、本当にやるんですか?』といわれた」という。

 直接的な獲得には寄与しない可能性が高いブログの集客に費用をかけた理由を、デ・スーザ氏は3つ挙げる。

 「まず、当社が他メディアに記事広告を出稿した際、メディアはフィード広告で集客しています。ブログ記事も目的は同じ“見込み顧客の確保”なので、自信がある記事なら出稿の余地はあると考えました。2つ目は、そもそも効果検証して改善に活かすためには、まとまった数字がないと意味がないから。記事広告とオウンドメディアの記事との差を確認したいと思ったんです。そして3つ目は、これらを数字で可視化する手段を僕らは持っていたこと。これがいちばん大きかったです」

 自社の「アドエビス」を使えばリーチの新規率やその後のサイト来訪率を取得して、アトリビューション分析ができる。だから比較検討ができるし、結果としてフリークエンシーコントロールによる費用の最適化も可能、と踏んだわけだ。

成約につながりやすい記事の傾向がわかった

 具体的な分析としては、まず次の2項目に着目し、可視化した。ひとつは、リーチしたユーザーが「アドエビスのサイト来訪歴がない新規顧客かどうか」。もうひとつは、リーチ後にその人が「サイトに来たか」。これはクリックでも、フィード広告は見た(ビュー)だけで後から検索して来訪するというアクションも含め、すべての行動を検出して「アクション喚起率」として把握した。

 フィード広告でブログ記事への流入を図り、リーチした新規UU率やその後のアクションを数値化して他の記事広告と比べたところ、記事広告はそもそも同社と親和性の高いメディアに出しているため、想定通り新規UU率は低いがアクション喚起率は高かった。

 一方、フィード広告のインプレッションでは新規UU率は96.96%と非常に高かったが、アクション喚起率は0.08%と極めて低く、「一瞬絶望しかけた」とデ・スーザ氏は振り返る。

 「ですが、ビューだけで後から検索してサイト来訪した人が0.08%いたわけで、数にすると元々のリーチ数が記事広告より桁違いに大きいため、実質的な効果は高かったとわかりました。つまり、フィード広告を出稿するだけで新規顧客にしっかりリーチできていると確認できました。ちなみにクリック型課金なので、ビューだけなら無償なのも利点でした」

 フィード広告の出稿でブログの効果が確かめられ、同時に以前と比べてブログへの自然検索流入は2倍となり、成約増加につながった。さらに人気の記事の傾向、成約に結びつきやすい記事の傾向もつかめたので、ブログを訪れるユーザーの満足度を高めながら売上に寄与する内容へと注力できるようになった。

ブランディングから獲得まで一連のPDCAを回す

 さらにこの取り組みは、ブランディングから獲得にまで関わるメンバー全員の意思統一にも役立ったという。潜在層へのリーチから獲得までが一貫していることが数値で可視化され、ブログの効果を皆が把握できたことで、ブランディングと獲得の両輪による効果の最大化が可能になった。

 デ・スーザ氏は改めて、この取り組みを全体像から解説する。まずCVまでを大きく「認知/興味喚起/比較・検討して決定」の3段階に分け、認知なら新規UU率、などそれぞれに適した効果指標を挙げる。これを踏まえて、フィード系やリスティング(一般/社名)、記事広告、リターゲティングなどの広告施策を3段階のどこに有効なものなのか、プロットする。

 「たとえばフィード系や一般ワードのリスティング、動画広告などは認知を図って新規リードを確保する施策なので、新規UU率や初回接触で評価すべきですね。ここは総じて直接のCVにつながる確率は低く、受動的な広告が多いですが、Webプロモーションにおける認知と興味喚起は自社サイトの外でしか起きないため、ここでの反応はとても重要です。クリックして期待と違ったら離脱してしまうので、反応を踏まえてきっちり次の行動へとつなげることが成果を左右します」とデ・スーザ氏。

 どの段階に効かせたい施策なのかによって、指標の重要度も異なる。興味喚起のためのリターゲティングならアクション喚起率が重要になり、新規率が低いのは当然、といった形だ。こうして施策と重視すべき指標を整理し、そこに自社の数値をあてはめて目標を立てたら、あとは数値を基準にPDCAを回していくことができる。

アドエビスで全体設計と効果測定・改善を実現

 さらにアトリビューション分析では、施策改善に有効な中間CVを導き出すこともできる。たとえばあるEC事業者で「カゴに商品を入れたら30%の人が最終的に購買している」なら、「カゴに入れる」というアクションを中間CVに、それより手前の経路と、接触した各広告を評価することが可能だ。

 そして、カゴに1商品を入れるのにかかったコストを正しく算出して、投資を最適化できる。直前に接触した広告のみ評価するCPA評価では見誤る実態が見えてきそうだ。

 同時に、中間CVまで、最終CVまでの期間も把握できるので、認知やリターゲティングの広告を何日打てばいいのかも見通せる。「なので、間接効果の可視化はとても重要なんです」とデ・スーザ氏は強調する。

 「同時にここまでの分析がすべてできると、上司に媒体ごとではなく全体を踏まえた『一人あたりの獲得単価』を伝えられるので、投資の判断がしやすくなり、結果的に成果も上がり予算も増えるというわけです」

 最後に、以前から課題のクロスデバイス・クロスブラウザの状況について。直近のアドエビスの分析によると、既にスマホユーザーとPCユーザーはかなり分かれており、クロスCVはWebと各種アプリを横断するクロスブラウザにほぼ集約されていたという。そのため、クロスブラウザでの間接効果の可視化などが今後より重要になる。

 「このように、ブランディングから獲得までの全体を設計し、各所を正しく計測することで、一連を継続的に改善することができます。これを機にぜひ『設計』と『計測』に注目いただけたら」とデ・スーザ氏。アドエビスの活用で正しい効果測定を実現し、正しい判断をすることこそ、マーケティング成果の向上につながるだろう。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/24 10:00 https://markezine.jp/article/detail/29479