客観的に広告を評価したかった
MarkeZine編集部(以下、MZ):簡単にお2人の自己紹介からお願いします。
肥田:ライフネット生命の営業本部にてマーケティング部長をしている肥田です。2018年10月に現在のポジションに就任し、マス・デジタル含めた広告やサイト運用、広報・PRなどマーケティング全般を担当しています。
里:DATUM STUDIOで取締役CAO(Chief Analytics Officer)をしている里です。弊社は2014年8月に設立して以降、一貫してデータのビジネス活用支援を行ってきました。今回のような広告効果分析に関するプロジェクトも数多く動かしてきました。
MZ:これまでライフネット生命では、マス広告とデジタル広告を統合した効果測定はしていたのでしょうか?
肥田:マスからデジタルまで、全体を俯瞰した効果測定から予算配分の最適化まで一気通貫で行ったほうが良いことは重々理解していたのですが、なかなか手が回らなかったのが実状です。
また、2014年頃は、ちょうどユーザーのメインデバイスがPCからスマホに移行する時期でした。そのためオンラインで生命保険を販売しているライフネット生命にも大きな変化があり、先読みが難しかった。また、いくら広告予算をかけたら、どれだけの売上が見込めるのかをデータとして社内に提示できない状況にもどかしさを感じていました。
その状況の中で、DATUM STUDIOさんに出会いました。同社は分析力も高く、広告代理店ではなかったため、一緒に取り組みをすることになりました。
MZ:なぜ同社をパートナーに選んだのでしょうか。
肥田:広告をお手伝いしてもらっている広告代理店に分析を依頼した場合、「彼らにとって都合の良い数字を出したくならないかな?」と思ったからです。広告に関して利害関係のない、完全な第三者であれば、客観的にデータを見ることができると考えました。
MZ:DATUM STUDIOさんでは、このようなニーズも増えているのですか。
里:そうですね、 テレビCMの効果が不透明であったり、広告効果を感覚で評価したりする状態を解消したいというニーズは非常に高まっています。そして、今回のライフネット生命さんとは、一緒に効果測定用のシミュレーターを作っていく形を取らせていただきました。
「データは生物」仕様変更ありきで開発
MZ:シミュレーターはどのように開発していったのでしょうか。
里:まず、過去の広告配信データを取り込んで、ライフネット生命様独自の分析モデルを構築しました。これにより現状の可視化を進めました。その上で、予算をいくら、どこに投下すれば、どれだけ売上が上がるのかをシミュレーションできるようしました。
また、シミュレーションのパターンに関しても2つ用意しました。1つは、最初に予算を設定してデジタル、マスに振り分け、そこからさらに各広告媒体にどう配分するとどれだけ売上につながるかシミュレーションするパターン。
もう1つは最初に目標件数を設定して、目標達成するためにはどれだけの予算が必要なのかを逆算するパターンです。
MZ:開発自体はスムーズに進行したのでしょうか。
肥田:正直、作っていくうちに様々な変更点が生じるので、後出しのリクエストはかなりあったと思います。先程もお話ししたとおり、PCからスマホに移行する時期だったのもあり、途中でPCとスマホの売上への寄与率を変更するといった、仕様変更は多かったと思います。
里:仕様変更については、発生して然るべきだと思っています。私たちはお客様ごとにカスタマイズしたソリューションを提供しています。データは生物ですから、最初の要件から変化があるのは当たり前。そのため、変更することを見越して、仕様を固めすぎないようにしていました。