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突撃、足立流マーケティングメソッドを探る

細かい指標の追求は縮小均衡を招く 足立流・KPIの設計術

市場拡大と創造がなければマーケティングではない

MZ:改善を要求されることの多いマーケターには、グサッとくるご意見です。

足立:もちろん、様々な立場や事情があるのはわかります。それに、改善も大事です。ゲームアプリなどのデジタルビジネスや通販事業、あるいは毎日顧客の注文を大量に取り扱って届ける物流のようなオペレーションがメインの事業だと、顧客の声や挙動をもとに改善していくのは必須ですし、それが競争の要になると思います。

 ただ、全ての業種に当てはまる話ではありません。メーカーなどの場合、マーケティング全体の中のデジタル施策におけるCPAやCPIだけを改善しても、得られるビジネスインパクトはわずかです。新規顧客の獲得か、既存顧客に違うものを買ってもらうアイデアが求められるんです。だからこそ市場の拡大、創造について考えてほしいなと思うんです。

MZ:足立さんは改善をしつつも、市場の拡大、創造に努めてきたわけですね。

足立:そうですね。全体の一部であるソーシャルメディアに関しては、Twitter社と一緒に改善してメディア効率を上げていましたが、同時に根本的な売上拡大や新規顧客の獲得につながる商品やコミュニケーションの企画も常に走らせていました。そうしなければ、マーケティングにならないと思うんです。

 厳しい言い方ですが、ソーシャルメディア上のKPIを改善しているだけではマーケターとは言えないし、それだけのエージェンシーは今すぐマーケティングエージェンシーと名乗るのを止めてほしいです。

利益を得て初めて「商売の成功」と言える

MZ:では、足立さんのおっしゃる本来のマーケターなら、何を指標として追うべきでしょうか?

足立:利益ですね。ちなみに、利益をきちんと見ているマーケターは意外と少ないと思っています。KPIまたは売上だけを見ている場合が多いのではないでしょうか。僕は、マーケティングの和訳は「商売」だと思っているので、売上が上がっても投資も多くて利益が出ていないならそれは「商売の成功」ではないですよね。だから、それはマーケティングではない。

 どのような顧客に価値を提供して、どれだけの売上と利益を上げるのか。そこまで計算し実行できて、初めて「商売の成功」と言えると思いますし、それはつまり、経営です。そんな、利益を追い求める仕事をマーケターの皆さんにはしていただきたいです。

MZ:『マクドナルド、P&G、ヘンケルで学んだ 圧倒的な成果を生み出す 「劇薬」の仕事術』(ダイヤモンド社)の中でも、「マーケティングは“経営ごと”だ」というお話や、「ROIやPL(損益計算書)を見られるマーケターに」というメッセージがありました。

 そう、利益に関係ないことは全て無駄なんです。利益と、その大きな源泉となる売上の2つを上げるのに必要な指標をKPIとして分解していくことが基本です。

 もちろん、そんなに簡単に効果の因果関係が把握できないことは、百も承知です。特にマス広告が絡むと、より複雑になってきます。だから、トライ&エラーを重ねて知見を貯める必要があるんです。

MZ:利益と売上を上げるためのトライ&エラーが重要ということですね。ちなみに、その際に意識していることはありますか?

足立:再現性の高いアイデアを考えることですね。アイデアの出し方は理論でも直感でも良いと思いますが、実際に実行できるものでなければ画に描いた餅にすぎません。私の場合は、「こんな商品なら、こうやったら売れるのでは」というアイデアをたくさん出すことで、イメージを具体化します。

 そのイメージを理論で捉え直すことで、戦略から実際のアクションまでを一貫させています。やり方は人それぞれだと思いますが、100%実行できるアイデアを考えてほしいですね。

MZ:利益と売上に効果的で再現性の高いアイデアをトライ&エラーしていけるようにしたいですね、ありがとうございます。第3回は、社内外をまたいだチーム編成の考え方と、キャリアプランについてうかがいます。お見逃しなく!

足立光(あだち・ひかる)

 1968年、米国テキサス州生まれ。一橋大学商学部卒業。P&Gジャパンマーケティング部に入社し、日本人初の韓国赴任を経験。ブーズ・アレン・ハミルトン、およびローランドベルガーを経て、ドイツのヘンケルグループに属するシュワルツコフヘンケルに転身。2005年には同社社長に就任。赤字続きだった業績を急速に回復した実績が評価され、2007年よりヘンケルジャパン取締役シュワルツコフプロフェッショナル事業本部長を兼務し、2011年からはヘンケルのコスメティック事業の北東・東南アジア全体を統括。ワールド執行役員国際本部長を経て、2015年より日本マクドナルド上席執行役員マーケティング本部長。2018年9月28日よりナイアンティック アジアパシフィック プロダクト・マーケティング シニアディレクターを務めるほか、ローランド・ベルガーのエグゼクティブ アドバイザー、スマートニュースのマーケティング戦略に関するアドバイザーも兼任している。オンラインサロン「無双塾」も主催。

 著書に『マクドナルド、P&G、ヘンケルで学んだ 圧倒的な成果を生み出す「劇薬」の仕事術』(ダイヤモンド社)、『「300億円赤字」だったマックを六本木バーの店長がV字回復させた秘密』(WAVE出版)。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

道上 飛翔(編集部)(ミチカミ ツバサ)

1991年生まれ。法政大学社会学部を2014年に卒業後、インターネット専業広告代理店へ入社し営業業務を行う。アドテクノロジーへの知的好奇心から読んでいたMarkeZineをきっかけに、2015年4月に翔泳社へ入社。7月よりMarkeZine編集部にジョインし、下っ端編集者として日々修業した結果、2020年4月より副...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/02/15 09:00 https://markezine.jp/article/detail/30314

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