テナントサポートもアナログからデジタルへ
原嶋:デジタル活用によって、接客にはどのような変化がありましたか?
林:ショップブログのスタート後、TwitterやInstagramなどソーシャルメディアの活用も増えました。ショップからの発信を軸に、お客様とのコミュニケーションが生まれ、ロイヤリティが高まる話を聞いています。
たとえば、広島PARCOのとあるテナントでは、お店や商品情報だけでなく、スタッフの日常やプライベートの出来事まで、積極的にInstagramから発信していました。するとフォロワーが増え、そのスタッフ目当てで、県外からお客様が来店することもあったそうです。

原嶋:ショップブログがあるわけですから、情報発信を集約したいというお気持ちは?
林:どんなツールを使うかの制限はかけていません。Webからお客様とつながり、来店や購買に結びつくことはもはや日常的ですので、あらゆるタッチポイントを活用していく考えです。
これまでパルコは、「リアル店舗=ショッピングセンター」というプラットフォームに適した接客支援を行ってきました。今でもFace to Faceの接客研修はありますが、テナントスタッフ向けのポータルサイトで、短時間で学ぶ接客ノウハウの動画を公開しています。また、テナントの公式アカウントの発信を、パルコのアカウントからシェアすることも私たちの仕事です。
良い事例は、取材にうかがって動画を作成し、スタッフ向けポータル等で紹介する他、定期的に開催するオーナー会や店舗ごとの店長会などでも共有しています。
アプリによるゲーミフィケーション施策で買い回りショップ数を向上
原嶋:パルコは、売り場へのデジタル投資も積極的ですよね。
林:パルコの買上率(来館数に対する購買者数)は、全国平均で50%です。プラットフォームである私たちの仕事は、この数値を上げていくこと。テナントスタッフの接客力向上や商品の魅力とともに、テクノロジーによる施策も大事です。たとえば2016年には、「POCKET PARCO」内の記事レコメンドを、AIで最適化し、お客様がより来店したいと思う情報提供につなげています。
原嶋:「POCKET PARCO」の「PARCO WALKING COIN」も、その一環ですか?

林:「PARCO WALKING COIN」は、PARCOへ来店時に「POCKET PARCO」を起動し歩数計測を開始、店舗内を500歩歩くとコイン(一定数貯めるとパルコで使えるご優待券に引き換え可能)が獲得できるサービスです。「PARCO WALKING COIN」によって、お客様がアプリを意識しながら店舗内を回遊される状態が作れています。実際に、買い回り率も上がっているんです。
原嶋:買い回り率はハウスカードの〈PARCOカード〉で計測できますが、アプリでさらにデータ化しやすくなっているんですね。
林:半年間の買い回り率を比較すると、「PARCO WALKING COIN」を利用されているお客様は、チェックインのみのお客様に比べ、買い回りの店舗数が2倍になっています。これは、全国のどのPARCOでも同じ傾向です。さらに、お買い上げの一客単価が20%から30%ほどアップしており、「PARCO WALKING COIN」の導入でLTVが上がっています。
将来的には、お客様ごとの行動を把握し、関心のある情報を、店舗内にいる最適なタイミングで配信することも考えています。