オフライン×オンラインの総合プランニングで各部の知見を最大化
――では、どのような取り組みをされたのかお聞かせください。
内海:大きくは3つです。1つ目は、学生の心理態度ファネルを作成すること。2つ目はファネルに対応するメディアの設計。そして3つ目に、施策の実行と振り返りです。まずファネルは、企業認知・行動・活動認知・就職意向・応募と分けました。そして、企業認知はテレビCM、行動後の活動認知以降は自社ホームページを軸に、あらゆるメディアや広告を交え、総合的なプランニングを作っていきました(図表2)。
――デジタルマーケティング施策だけではなく、テレビCMも活用したのですね。
関口:やはり認知で大事なことは、キャズムです。それでも「村田製作所」の名前を知っているだけでは、就職対象やエントリーにはつながりません。広報では毎年、エントリーした学生を対象に、当社の認知経路をヒアリングしています。すると、「村田製作所がいいんじゃないか」という保護者からの薦めや、大学・先生からの影響が強い傾向があるんです。当社を広告やWebで知っていても、最後の一押しが必要。ですから、人事の大学訪問やセミナーは大切ですし、年末年始に出稿するテレビCMも、保護者層への認知という狙いがあります。
内海:BtoBマーケティングがオンラインのみで完結しないように、人の行動や関心はオンラインとオフラインを行き来します。ターゲット学生はWebで情報を集めながら、説明会やセミナー、OB・OG訪問を行います。オフラインもしっかり取り組まないと、効果が出ないのではと考えたのです。オフラインによる採用活動は人事に知見がありますから、広報のプロモーション活動と連動させ、総合的なプランニングを行いました。
5つの施策でエントリー数・ES提出数が増加
――施策立案にあたっては、どのような点を重視しましたか。
市来:採用プロセスを分析して見えてきた仮説は、そもそもターゲット学生のエントリー数が少なく、さらにエントリー後もエントリーシート(ES)を提出していないのではないかということ。そこで、学生の新卒サイト流入増とエントリー数・ES提出数増加をゴールとした5つの施策を考えました。
関口:まず、集客のための施策として、動画広告とディスプレイ広告の2施策。そして3つ目に、Webサイトのデザインリニューアルとコンテンツを拡充する施策を立てました。また、4つ目の施策として、採用ページに事務系と技術系職種の選択肢を提示し、ページの出し分けを行いました。ES提出期間には、トップページに「ESを提出する」と掲載するほか、5つ目の施策にESの提出促進メール配信を行っています。総合結果としては、2015年度に比べ、エントリー数は約10%増、ES提出数は約60%増。ES提出率も前年より4.3%改善と大きく上回る結果になりました。
内海:細かく施策を振り返っていきますと、動画広告はYouTubeとFacebook、Twitterを、それぞれPC版で約1ヵ月実施しました。18歳から24歳をターゲティングし、3本のクリエイティブを配信しています。リーチボリュームはやはりテレビが圧倒的ですが、約75%がWebと重複しています。また、テレビCMでリーチできない層にも届いており、調査でも、テレビCMと動画広告の両方を実施するのが効果的という結果が出ています。ディスプレイ広告も、考えていた以上の集客につながり、目標へ一定量の貢献をしています。
